書評

『人口と日本経済 - 長寿、イノベーション、経済成長』(中央公論新社)

  • 2017/07/28
人口と日本経済 - 長寿、イノベーション、経済成長  / 吉川 洋
人口と日本経済 - 長寿、イノベーション、経済成長
  • 著者:吉川 洋
  • 出版社:中央公論新社
  • 装丁:新書(198ページ)
  • 発売日:2016-08-18
  • ISBN-10:4121023889
  • ISBN-13:978-4121023889
内容紹介:
人口減少が進み、働き手が減っていく日本。財政赤字は拡大の一途をたどり、地方は「消滅」の危機にある。もはや衰退は不可避ではないか―。そんな思い込みに対し、長く人口問題と格闘してきた経… もっと読む
人口減少が進み、働き手が減っていく日本。財政赤字は拡大の一途をたどり、地方は「消滅」の危機にある。もはや衰退は不可避ではないか―。そんな思い込みに対し、長く人口問題と格闘してきた経済学は「否」と答える。経済成長の鍵を握るのはイノベーションであり、日本が世界有数の長寿国であることこそチャンスなのだ。日本に蔓延する「人口減少ペシミズム(悲観論)」を排し、日本経済の本当の課題に迫る。

鍵はイノベーション

「人口減少」は今もっとも関心を集めるキーワードのひとつだ。景気が悪いのも、年金制度が崩壊しそうなのも、みんな人口減少のせい。

吉川洋『人口と日本経済』は、人口減少問題を経済学の観点で整理した本である。そう悲観的になりなさんな、というのが著者の主張だ。

まず著者は経済学が人口をどう考えてきたかを概観する。マルサスやらケインズやら、学者の考え方はそれぞれだ。次に、日本が直面する問題の整理。日本は人口減少と超高齢化が同時進行している。そのため社会保障関連にお金がかかる。人口減少がはげしい地方の市町村はインフラ維持も大変だ。

じゃあ、このまま日本国は滅びていくのか。そうではない、と著者はいう。経済成長すれば社会は維持できるし、経済が成長するかどうかを決めるのは人口ではなくイノベーションなのだから。労働力が減るから経済成長は不可能だというのは短絡的だ、イノベーションで生産性が上がれば無問題、というわけである。「経済成長しなくていい」なんて主張には騙されるな、といいたそうだ。

いっていることはわかるけど、しょせん「たら・れば」の話。逆に、イノベーションがなければ、この国は沈んでいくということだ。

誰だってイノベーションを起こしたいと思っている。でも起こそうと思って起こせるものでもないし、大企業や金持ちを優遇したからといって起きるものでもない。首都圏の鉄道会社は来春から通勤電車にも指定席の導入をするそうで、こういうのもイノベーションだと著者はいう。なんか、話がしょぼくないか。
人口と日本経済 - 長寿、イノベーション、経済成長  / 吉川 洋
人口と日本経済 - 長寿、イノベーション、経済成長
  • 著者:吉川 洋
  • 出版社:中央公論新社
  • 装丁:新書(198ページ)
  • 発売日:2016-08-18
  • ISBN-10:4121023889
  • ISBN-13:978-4121023889
内容紹介:
人口減少が進み、働き手が減っていく日本。財政赤字は拡大の一途をたどり、地方は「消滅」の危機にある。もはや衰退は不可避ではないか―。そんな思い込みに対し、長く人口問題と格闘してきた経… もっと読む
人口減少が進み、働き手が減っていく日本。財政赤字は拡大の一途をたどり、地方は「消滅」の危機にある。もはや衰退は不可避ではないか―。そんな思い込みに対し、長く人口問題と格闘してきた経済学は「否」と答える。経済成長の鍵を握るのはイノベーションであり、日本が世界有数の長寿国であることこそチャンスなのだ。日本に蔓延する「人口減少ペシミズム(悲観論)」を排し、日本経済の本当の課題に迫る。

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初出メディア

週刊朝日

週刊朝日 2016年10月11日

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