書評

『「原子力ムラ」を超えて ポスト福島のエネルギー政策』(NHK出版)

  • 2017/08/21
「原子力ムラ」を超えて ポスト福島のエネルギー政策  / 飯田哲也,佐藤栄佐久,河野太郎
「原子力ムラ」を超えて ポスト福島のエネルギー政策
  • 著者:飯田哲也,佐藤栄佐久,河野太郎
  • 出版社:NHK出版
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(256ページ)
  • 発売日:2011-07-26
  • ISBN-10:4140911816
  • ISBN-13:978-4140911815
内容紹介:
福島第一原発事故で明るみに出た、もんじゅ事故以来続く、日本の原子力政策の杜撰さ。その背後に存在する政官学業からなる「原子力ムラ」の虚妄を暴く。エネルギーとしての原子力の無効性を、… もっと読む
福島第一原発事故で明るみに出た、もんじゅ事故以来続く、日本の原子力政策の杜撰さ。その背後に存在する政官学業からなる「原子力ムラ」の虚妄を暴く。エネルギーとしての原子力の無効性を、福島というトポス、3・11以降の政治、研究の最前線から原発と戦ってきた三人が解き明かす。いまだに原発を再開させようとする力が働くなか、自然エネルギーにまつわるウソ・デマ・誤解を解きほぐし、今後あるべきエネルギー政策の本質を明らかにする。原発がダメな本当の理由。

原発より危ない、動かしている連中

猛暑が続く。今年の夏は電力不足で大パニックになるだろうとか、熱中症で死人がたくさん出るだろうといわれたけれども、とりあえず本稿執筆時点(8月15日)では、大きな問題はない。原発を止めると産業が止まる、日本経済はダメになるぞ、といった脅迫も眉につばして聞くようにしたい。

原発なんて、なければないで済むもの。そして、誰も近くに住みたいとは思わないもの。それなのに人口減少と財政難に苦しむ地方を、札束で頬を張るようにして受け容れさせてきた。その挙げ句の果ての3・11なのに、九州電力&佐賀県知事による「やらせ」事件のようなことが起きる。原発利権って、よほどオイシイものなのだろう。

飯田哲也・佐藤栄佐久・河野太郎の『「原子力ムラ」を超えて』は、日本の原子力政策・原子力行政が、いかに歪んだ構造にあるのかを明かす。副題は「ポスト福島のエネルギー政策」。

飯田哲也は大学と大学院で核工学を専攻し、大手鉄鋼メーカーで原発にかかわった。現在は環境エネルギー政策研究所所長。佐藤栄佐久は前福島県知事。原発問題で政府と対立したため、でっち上げの汚職事件で逮捕された(と私は考えている)。そして河野太郎は自民党代議士。佐藤も河野も、自民党政治のなんたるかを肌身で知っている人である。

実際に原発を動かしているのは、電力会社と原発のハードを作る電機メーカーである。そこでは作って動かすことが最優先される。専門知識のない役人や政治家は追認するだけ。学者たちもそこにからめとられている。安全性その他をチェックする機関もない。原発は危ないものだけど、原発を動かしている連中はもっと危ない。

かつて石炭から石油へのエネルギー転換では、たくさんの人がひどい目にあった。石油から原子力へでは、後世にまで影響を及ぼすひどい事故を起こした。大事なことを政治家や役人や学者や企業にまかせるのはもうよそう。
「原子力ムラ」を超えて ポスト福島のエネルギー政策  / 飯田哲也,佐藤栄佐久,河野太郎
「原子力ムラ」を超えて ポスト福島のエネルギー政策
  • 著者:飯田哲也,佐藤栄佐久,河野太郎
  • 出版社:NHK出版
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(256ページ)
  • 発売日:2011-07-26
  • ISBN-10:4140911816
  • ISBN-13:978-4140911815
内容紹介:
福島第一原発事故で明るみに出た、もんじゅ事故以来続く、日本の原子力政策の杜撰さ。その背後に存在する政官学業からなる「原子力ムラ」の虚妄を暴く。エネルギーとしての原子力の無効性を、… もっと読む
福島第一原発事故で明るみに出た、もんじゅ事故以来続く、日本の原子力政策の杜撰さ。その背後に存在する政官学業からなる「原子力ムラ」の虚妄を暴く。エネルギーとしての原子力の無効性を、福島というトポス、3・11以降の政治、研究の最前線から原発と戦ってきた三人が解き明かす。いまだに原発を再開させようとする力が働くなか、自然エネルギーにまつわるウソ・デマ・誤解を解きほぐし、今後あるべきエネルギー政策の本質を明らかにする。原発がダメな本当の理由。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

初出メディア

週刊朝日

週刊朝日 2011年9月2日

  • 週に1度お届けする書評ダイジェスト!
  • 「新しい書評のあり方」を探すALL REVIEWSのファンクラブ
関連記事
永江 朗の書評/解説/選評
ページトップへ