書評
『ガールフレンド』(スペースシャワーネットワーク)
オリーブ少女の居場所
しまおまほ。マンガ家、イラストレーター、エッセイスト。父方の祖父は作家の島尾敏雄、祖母も作家の島尾ミホ。父は写真家の島尾伸三で、母も写真家の潮田登久子。しまおまほはメジャーな作家ではないかもしれない。しかし、カルト的な人気がある。「女子高生ゴリコ」でデビュー、話題となった。少女雑誌「オリーブ」の晩年には彼女のエッセイが連載されて、とても人気があった。
彼女のマンガもエッセイも、すごく面白いというわけではない。腹を抱えて笑うとか、感動のあまり号泣するというものではない……だけどいい、すごくいい。普通の人が普通の生活の中で感じる、小さな喜びや悲しみについて書く。
『ガールフレンド』はそんな彼女の最新エッセイ集である。
表題の章がいい。著者はトロントで中国人の元留学生に再会する。著者にとってお兄さんのような存在だった彼も、もう中年である。著者が思うのは、彼の元恋人、ウィニーのことだ。あんなに素敵なカップルだったのに、別れてしまった二人。彼は別の女性と結婚して、今は幸せに暮らしている。ウィニーにまた会いたいと著者は思っているが、彼には言い出せない。すると、彼が言う。ウィニーは6年前に癌で亡くなった、と。著者は泣いてしまう。
そのとき著者の母は言うのである、彼の奥さんは「これで安心したでしょうね!」と。
母からとっさに出た感想はあまりにも正直なもので、思わずみんなで笑った。/笑ってから、大きくため息をついた。
見逃してしまいそうなこと、忘れてしまいそうなことを、しまおまほはちゃんと覚えていて、飾らない文章にする。オリーブ少女って、こういう人たちだったんだな、と私は納得する。それと同時に、いま現在、かつてのしまおまほのような少女の居場所は少なくなってしまったのではないかと感じる。多感なサブカル少女が安心していられる場所である「オリーブ」に復刊してほしいと、切実に思った。
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