書評

『バグダードのフランケンシュタイン』(集英社)

  • 2024/06/05
バグダードのフランケンシュタイン / アフマド・サアダーウィー
バグダードのフランケンシュタイン
  • 著者:アフマド・サアダーウィー
  • 翻訳:柳谷 あゆみ
  • 出版社:集英社
  • 装丁:単行本(400ページ)
  • 発売日:2020-10-26
  • ISBN-10:4087735044
  • ISBN-13:978-4087735048
内容紹介:
<中東×ディストピア×SF小説>連日自爆テロの続く2005年のバグダード。古物商ハーディーは町で拾ってきた遺体のパーツを縫い繋ぎ、一人分の遺体を作り上げた。しかし翌朝遺体は忽然と消… もっと読む
<中東×ディストピア×SF小説>

連日自爆テロの続く2005年のバグダード。古物商ハーディーは町で拾ってきた遺体のパーツを縫い繋ぎ、一人分の遺体を作り上げた。しかし翌朝遺体は忽然と消え、代わりに奇怪な殺人事件が次々と起こるようになる。そして恐怖に慄くハーディーのもとへ、ある夜「彼」が現れた。自らの創造主を殺しに――
不安と諦念、裏切りと奸計、喜びと哀しみ、すべてが混沌と化した街で、いったい何を正義と呼べるだろう?
国家と社会を痛烈に皮肉る、衝撃のエンタテインメント群像劇。
カズオ・イシグロの『クララとお日さま』など、AIを取り入れ、ポストヒューマニズムとその意義を考える小説が続いて発表されている。それらのAIロボットが洗練を極めて人間を追い越そうとするなか、本書はある意味、時代に逆行する型破りな人造人間を登場させた傑作である。

昨年はブッカー国際賞候補作の半分がたが「語り直し」作品だったが、本作もイギリス古典の本歌取りだ。メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』(一八一八年)に端を発する人造人間だが、本作は約二百年後の二〇〇五年、多国籍軍の侵攻とその後のイラクを舞台にしている。

ある古物商が爆弾テロで吹き飛んだ遺骸のかけらを寄せ集めて一個の人体を造りあげる。この体に、一人の警備員が入りこんでしまい……。中東のセクト主義と地政学的なドタバタとバイオレンスとホラー風味の混交がすさまじい。作品の下絵として、ポーの分身小説『ウィリアム・ウィルソン』とワイルドの『ドリアン・グレイの肖像』も使われているのでは。英米の大古典をエイヤッと背負い投げる不条理ファンタジー。
バグダードのフランケンシュタイン / アフマド・サアダーウィー
バグダードのフランケンシュタイン
  • 著者:アフマド・サアダーウィー
  • 翻訳:柳谷 あゆみ
  • 出版社:集英社
  • 装丁:単行本(400ページ)
  • 発売日:2020-10-26
  • ISBN-10:4087735044
  • ISBN-13:978-4087735048
内容紹介:
<中東×ディストピア×SF小説>連日自爆テロの続く2005年のバグダード。古物商ハーディーは町で拾ってきた遺体のパーツを縫い繋ぎ、一人分の遺体を作り上げた。しかし翌朝遺体は忽然と消… もっと読む
<中東×ディストピア×SF小説>

連日自爆テロの続く2005年のバグダード。古物商ハーディーは町で拾ってきた遺体のパーツを縫い繋ぎ、一人分の遺体を作り上げた。しかし翌朝遺体は忽然と消え、代わりに奇怪な殺人事件が次々と起こるようになる。そして恐怖に慄くハーディーのもとへ、ある夜「彼」が現れた。自らの創造主を殺しに――
不安と諦念、裏切りと奸計、喜びと哀しみ、すべてが混沌と化した街で、いったい何を正義と呼べるだろう?
国家と社会を痛烈に皮肉る、衝撃のエンタテインメント群像劇。

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2021年4月24日

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