帯の裏表紙側にたくさんの人名が並んでいる。井上毅、井上靖、大岡昇平、小笠原長生、小田実、折口信夫……まだまだ続く。これらの人々が書いたことや言ったことや考えたこと、行ったことなどを、大きな鍋に入れてかき回し、じっくり煮込んだような長編小説。
巻末に「参考文献について」という著者による文章がある。<本作では多数の参考文献を使用している。(中略)その資料の扱い方は、著者の以前の作品、『日本文学盛衰史』を踏襲している。すなわち、それらの資料は、そのまま引用されることも、一部を変更して引用されることも、大部分を変更して引用されることもある。(中略)すべての資料は、DJがレコード音源を自由にリミックスするように使われていることを明記しておく>と書かれている。
昭和という時代に何が起きたのか、それが文学や文学者とどのような関わりを持っていたのかが、DJタカハシによるプレイで浮かび上がってくる。ヒロヒトの時代は戦争の時代だった。彼がそれを望んだかどうかはともかくとして。たくさんの人が死んだ。殺した人。殺された人。本作は慟哭(どうこく)と追悼の音楽だ。