1981年にシカゴで生まれた著者の自伝。母は沖縄の嘉手納に生まれ育ち、ベトナム帰還兵の父と結婚してアメリカに渡った。
母は何年暮らしてもアメリカの言葉や生活習慣になじめない。幼いころの著者はそれが不満で、母という存在を恥じてもいた。著者は外見がアジア人であるがゆえに差別やいじめにあったが、それも母を疎んじる理由だった。
しかし著者は34歳のとき(つまり、わりと最近になって)、母の歴史、沖縄/琉球の歴史について学び、考えるようになる。沖縄戦のこと、占領と日本への返還、駐留する米兵が起こした犯罪について。日本に組み入れられる前の歴史について。
そして気づく、母がどんな思いで父と結婚して沖縄を出たのか。祖父母やおじ・おばたちはどんな思いで送り出したのか。母を愛し、寛容である父と母のあいだにある偏った力関係について。その不均衡は日本とアメリカ、沖縄と日本の関係でもあることを。
巻末近くの、笑顔で抱き合う著者と母の写真に胸を打たれる。