1月17日の朝刊を開いて愕然。大学共通テストの数学がまったく分からない。設問の文章に出てくる太郎と花子の会話も、なにを言ってるんだかチンプンカンプン。この記号、どういう意味だったっけ? いま入試を受けたら、とうてい合格できませんね。
しょぼくれて書店を覗いたら、目にとまったのが『解きたくなる数学』(佐藤雅彦、大島遼、廣瀬隼也著・岩波書店・1980円)だった。はかりの上に大量のナットが載っている写真が表紙。まるで数学の本らしくない。手に持った感触は最高で、パラパラッとめくると、カラーのきれいな写真がたくさん出てくる。文字は少なめ。驚くことに、数式がほとんど出てこない。
本編の前に問題が三つ。第2問は、厚さがおなじ大中小、三つの正方形のチョコレートについて。大1個もらうのと、中と小をもらうのでは、どっちが得か? 「はかりやものさしを使わなくてもチョコレートをうまく配置するだけで答えが分かります」とのこと。
チョコレートの写真をにらみながら、うーん、どっかで見たような気がする……と考えるけど分からない。ページをめくると「ピタゴラスの定理を使います」とある。
分かった! チョコレートの辺で直角三角形を作るように配置すると、はかりやものさしなしで解けるのだ。
この本の特徴は、「ひと目で問題の意味が分かる」、そして「ひと目で問題を解きたくなる」こと。日常のどこにでもありそうな光景から問題を作っている。そして、その問題を解くには数学的な考え方をすればいい、ということが分かる。あらゆるところに数学が隠れている。
いわば数学入門の入門。考え方の入門みたいな本で、これを読めば大学共通テストがすぐ解けるようになるわけじゃない。でも、論理的に考えたり抽象的に考えたりするトレーニングになりそう。考えることは楽しいし、解けた瞬間は気持ちいい。
素人考えですが、数学の問題を作ったり解いたりすることは、俳句や短歌を詠むのと似てますね。