書評

『九十八歳。戦いやまず日は暮れず』(小学館)

  • 2024/07/26
九十八歳。戦いやまず日は暮れず / 佐藤 愛子
九十八歳。戦いやまず日は暮れず
  • 著者:佐藤 愛子
  • 出版社:小学館
  • 装丁:単行本(200ページ)
  • 発売日:2021-08-06
  • ISBN-10:4093965528
  • ISBN-13:978-4093965521
内容紹介:
タイトルは、1969年に発売され直木賞受賞作となった佐藤さんの小説『戦いすんで日が暮れて』の本歌取り。夫が作った莫大な借金をひとり背負い込んで奮闘する妻(=佐藤さん)の姿を活写し、愛子セ… もっと読む
タイトルは、1969年に発売され直木賞受賞作となった佐藤さんの小説『戦いすんで日が暮れて』の本歌取り。夫が作った莫大な借金をひとり背負い込んで奮闘する妻(=佐藤さん)の姿を活写し、愛子センセイが世に出るきっかけになった代表作のひとつです。
それから52年、自身の最後となる本エッセイ集のタイトルに『九十八歳。戦いやまず日は暮れず』と付けたのは、借金は返済したけれど、人生の戦いはやまず、今も日も暮れていない――。愛子センセイが97年を生きて来た人生の実感です。愛子センセイがヘトヘトになりながら綴った、抱腹絶倒のエッセイ全21編をぜひご堪能ください。
妻の母(94歳)が救急搬送された。病院に向かう特急電車の中で開いたのは、佐藤愛子のエッセイ集『九十八歳。戦いやまず日は暮れず』(小学館・1320円)。

愛子さんは「ヘトヘトだ」と書いている。そりゃそうでしょう。以前だったら「本当は元気いっぱいなんでしょ」と思っただろう。でも、94歳の義母を見ているので、トシを取ると、ココロはどうあれ、カラダのほうはヘトヘトになると知っている。63歳のぼくもヘトぐらいになっている。

愛子さんは『九十歳。何がめでたい』がベストセラーになり、2017年の年間1位に輝いた。その騒動はさぞかし大変だったろう。ヘトヘトも当然だ。

ヘトヘトな愛子さんの身に、いろんな事件が起きる。心臓の検査ひとつするにも、その朝、桃を食べてしまったために直前で延期になったり、検査機の音声がよく聞き取れず「爆発寸前」になったり。

愛子さんのエッセイは、ちゃんとオチがあって面白い。書斎には大量の書き損じ原稿用紙が散乱しているそうだが、面白くするための努力がすさまじい。

カラダはヘトヘトだが、ココロは元気だ。その秘訣は、言いたいことを言い、書きたいことを書いているからに違いない。

愛子さんは、森喜朗の「女性が多いと会議の進行に時間がかかる」発言とその後の展開についても書いている。なぜ非難されるのか釈然としないと愛子さんは言う。森は思ったことを口にしただけじゃないかと。そして、真珠湾攻撃について「これって騙し討ちやないのん」と言った19歳の時を思い出す。思ったことを言う(書く)のが愛子さんの元気の秘訣なのだ。

本書で愛子さんは断筆宣言している。医者に「書くのをやめたら死にます」と言われたそうだ。死なないために無理やり書くのも情けない、死ぬのが怖いと思われるのはホコリが許さぬ。ホントに死ぬかどうか験してみようじゃないか、というのである。あっぱれ、佐藤愛子。
九十八歳。戦いやまず日は暮れず / 佐藤 愛子
九十八歳。戦いやまず日は暮れず
  • 著者:佐藤 愛子
  • 出版社:小学館
  • 装丁:単行本(200ページ)
  • 発売日:2021-08-06
  • ISBN-10:4093965528
  • ISBN-13:978-4093965521
内容紹介:
タイトルは、1969年に発売され直木賞受賞作となった佐藤さんの小説『戦いすんで日が暮れて』の本歌取り。夫が作った莫大な借金をひとり背負い込んで奮闘する妻(=佐藤さん)の姿を活写し、愛子セ… もっと読む
タイトルは、1969年に発売され直木賞受賞作となった佐藤さんの小説『戦いすんで日が暮れて』の本歌取り。夫が作った莫大な借金をひとり背負い込んで奮闘する妻(=佐藤さん)の姿を活写し、愛子センセイが世に出るきっかけになった代表作のひとつです。
それから52年、自身の最後となる本エッセイ集のタイトルに『九十八歳。戦いやまず日は暮れず』と付けたのは、借金は返済したけれど、人生の戦いはやまず、今も日も暮れていない――。愛子センセイが97年を生きて来た人生の実感です。愛子センセイがヘトヘトになりながら綴った、抱腹絶倒のエッセイ全21編をぜひご堪能ください。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2021年9月25日

毎日新聞のニュース・情報サイト。事件や話題、経済や政治のニュース、スポーツや芸能、映画などのエンターテインメントの最新ニュースを掲載しています。

  • 週に1度お届けする書評ダイジェスト!
  • 「新しい書評のあり方」を探すALL REVIEWSのファンクラブ
関連記事
永江 朗の書評/解説/選評
ページトップへ