書評

『須賀敦子が選んだ日本の名作: 60年代ミラノにて』(河出書房新社)

  • 2025/01/26
須賀敦子が選んだ日本の名作: 60年代ミラノにて / 須賀 敦子
須賀敦子が選んだ日本の名作: 60年代ミラノにて
  • 著者:須賀 敦子
  • 出版社:河出書房新社
  • 装丁:文庫(489ページ)
  • 発売日:2020-12-08
  • ISBN-10:4309417868
  • ISBN-13:978-4309417868
内容紹介:
夫ペッピーノや友人たちを思いつつ伊訳した日本の名作の数々。それはNarratori giapponesi moderni『日本現代文学選』として今も読み継がれている。その中から日本語原典13編を須賀の解説と共… もっと読む
夫ペッピーノや友人たちを思いつつ伊訳した日本の名作の数々。それはNarratori giapponesi moderni『日本現代文学選』として今も読み継がれている。その中から日本語原典13編を須賀の解説と共に収録。

高瀬舟(森鷗外);十三夜(樋口一葉);刺青(谷崎潤一郎);春は馬車に乗って(横光利一);ほくろの手紙(川端康成);お化けの世界(坪田譲治);ヴィヨンの妻(太宰治);下町(林芙美子);志賀寺上人の恋(三島由紀夫);東北の神武たち(深沢七郎);紫苑物語(石川淳);道(庄野潤三);名人伝(中島敦)
アントニオ・タブッキやナタリア・ギンズブルグの翻訳でも知られる須賀敦子は、イタリア文学を日本語に移して紹介する前に、アツコ・リッカ・スガの名で、日本現代文学の名篇を自ら編集し、イタリア語に訳して簡潔な解題を付すという大きな仕事をなしとげていた。

全二十五篇を収めるその『日本現代文学選』がボンピアーニ書店から刊行されたのは一九六五年、訳者三十六歳のときである。日本文学といえば、まだ英語からの重訳が多かった当時、この翻訳選集の訳文の香気は、イタリア語を母語とする読者にも高く評価された。

本書には原本のうち十三篇がまとめられている。一冊のアンソロジーとして楽しめると同時に、作家になる前の須賀敦子がどのような作品を受容、消化していたのかを考えるうえで、重要な指標になりうるものだろう。今回精選されたなかでは、川端康成「ほくろの手紙」、坪田譲治「お化けの世界」、林芙美子「下町」、深沢七郎「東北の神武(ずんむ)たち」、庄野潤三「道」といった作品との向き合い方が気になる。

原本にあった残り十二篇も、続刊として待ちたい。
須賀敦子が選んだ日本の名作: 60年代ミラノにて / 須賀 敦子
須賀敦子が選んだ日本の名作: 60年代ミラノにて
  • 著者:須賀 敦子
  • 出版社:河出書房新社
  • 装丁:文庫(489ページ)
  • 発売日:2020-12-08
  • ISBN-10:4309417868
  • ISBN-13:978-4309417868
内容紹介:
夫ペッピーノや友人たちを思いつつ伊訳した日本の名作の数々。それはNarratori giapponesi moderni『日本現代文学選』として今も読み継がれている。その中から日本語原典13編を須賀の解説と共… もっと読む
夫ペッピーノや友人たちを思いつつ伊訳した日本の名作の数々。それはNarratori giapponesi moderni『日本現代文学選』として今も読み継がれている。その中から日本語原典13編を須賀の解説と共に収録。

高瀬舟(森鷗外);十三夜(樋口一葉);刺青(谷崎潤一郎);春は馬車に乗って(横光利一);ほくろの手紙(川端康成);お化けの世界(坪田譲治);ヴィヨンの妻(太宰治);下町(林芙美子);志賀寺上人の恋(三島由紀夫);東北の神武たち(深沢七郎);紫苑物語(石川淳);道(庄野潤三);名人伝(中島敦)

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2021年3月27日

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