「編集工学」のパイオニア松岡正剛氏が日本文化に斬り込む。≪日本文化はハイコンテキストで、一見、わかりにくいと見える文脈や表現にこそ真骨頂がある≫、とまず宣言。キーワードは「ジャパン・フィルター」だ。客神フィルター、神仏習合フィルター、かぶきフィルターなどユニークな切り口が並ぶ。これらが外来のもの、普遍的なものを独自に変形していくのだという。
松岡氏は博識で、日本のことなら何でも知っている。しかもそれを、やたら西欧の普遍言語に置き直してしまうと台無しだとわかっている。そこで氏は、西行や親鸞や世阿弥や……の懐に入り込む、背負い投げのような論法をとる。簡単に結論は出さない。日本ローカルの言語でしか語れないディテールが大事なのだ。
こうして本書には、日本文化の重要なトピックが十六講、ぎっしり詰まっている。ぎっしり過ぎて、漫然と読むと頭の中がおもちゃ箱ひっくり返し状態になるかもしれない。
それでも本書は読むべきだ。グローバル化を前に戸惑う日本だが、いまに始まったことではない。歴史のなかに、現状の問題点と未来を開く鍵が隠れている。