書評
『ワンルームワンダーランド ひとり暮らし100人の生活』(小鳥書房)
通りすがりに誰かの家の玄関が開き、家の中がチラッと見えると、さらに奥の部屋を想像してしまう。それぞれの暮らしがある。その暮らしはそう簡単には見えない。見えないのがいい。街に吐き出された個々に、戻る家がある。
そこだけが落ち着ける場所かもしれないし、決して心地よい場所ではないかもしれない。どんなに散らかっていようが片付いていようが、20年住んでいようが一昨日引っ越してきたばかりだろうが、その空間は自分という存在の蓄積である。
『ワンルームワンダーランド ひとり暮らし100人の生活』(落合加依子、佐藤友理編・小鳥書房・2200円)は、タイトル通り、ひとり暮らしをしている100人の部屋の写真とエッセーが並ぶ。
いわゆるステキな暮らしのコレクションではない。今日も明日も続く、そこにある暮らしが収められている。初めてその部屋に入ったプロが取材した文や写真ではないからこそ、生活の匂いが残る。「離れて暮らすひとたちが、それぞれどんなふうに部屋と、そして自分と向き合っているんだろう」という「ささいな好奇心からはじまった」この本、綴(つづ)られる思いはさまざま。
「何もいいところがないように思う」と部屋について語る人は、酔うとカップ焼きそばを爆買いする癖がある。「暮らしを調えることの全てが常に誰かのためであった日常から遠ざかって久しい」と漏らす人がいる。その人の過去と現在だけではなく、未来まで想像したくなる。
ひとり暮らしの部屋って、常に揺れ動いているように見える。今、この瞬間だけのものなのかもしれないはかなさがある。でも、その感じ取り方自体、ひとり暮らしをだいぶ前にやめてしまった自分の大ざっぱな理解なのだろうか。
ペラペラめくっていると、断片的な記憶がひとつのまとまりとなり、よみがえりそうになる。これ、あんまり思い出さないほうがいいやつかもしれないと、次のページに急いでしまう。誰が読んでも、そこに、いつかの自分が映るはず。
そこだけが落ち着ける場所かもしれないし、決して心地よい場所ではないかもしれない。どんなに散らかっていようが片付いていようが、20年住んでいようが一昨日引っ越してきたばかりだろうが、その空間は自分という存在の蓄積である。
『ワンルームワンダーランド ひとり暮らし100人の生活』(落合加依子、佐藤友理編・小鳥書房・2200円)は、タイトル通り、ひとり暮らしをしている100人の部屋の写真とエッセーが並ぶ。
いわゆるステキな暮らしのコレクションではない。今日も明日も続く、そこにある暮らしが収められている。初めてその部屋に入ったプロが取材した文や写真ではないからこそ、生活の匂いが残る。「離れて暮らすひとたちが、それぞれどんなふうに部屋と、そして自分と向き合っているんだろう」という「ささいな好奇心からはじまった」この本、綴(つづ)られる思いはさまざま。
「何もいいところがないように思う」と部屋について語る人は、酔うとカップ焼きそばを爆買いする癖がある。「暮らしを調えることの全てが常に誰かのためであった日常から遠ざかって久しい」と漏らす人がいる。その人の過去と現在だけではなく、未来まで想像したくなる。
ひとり暮らしの部屋って、常に揺れ動いているように見える。今、この瞬間だけのものなのかもしれないはかなさがある。でも、その感じ取り方自体、ひとり暮らしをだいぶ前にやめてしまった自分の大ざっぱな理解なのだろうか。
ペラペラめくっていると、断片的な記憶がひとつのまとまりとなり、よみがえりそうになる。これ、あんまり思い出さないほうがいいやつかもしれないと、次のページに急いでしまう。誰が読んでも、そこに、いつかの自分が映るはず。
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