書評

『ワンルームワンダーランド ひとり暮らし100人の生活』(小鳥書房)

  • 2024/12/20
ワンルームワンダーランド ひとり暮らし100人の生活 / 落合 加依子,佐藤 友理
ワンルームワンダーランド ひとり暮らし100人の生活
  • 著者:落合 加依子,佐藤 友理
  • 出版社:小鳥書房
  • 装丁:単行本(240ページ)
  • 発売日:2024-07-17
  • ISBN-10:4908582122
  • ISBN-13:978-4908582127
内容紹介:
オールカラーで、部屋にまつわるエッセイと写真を100人分掲載。職業も住む場所もさまざまな100 人の、ひとり暮らしの記録集です。「部屋は、言葉を話すわけじゃない。でもありったけの息を… もっと読む
オールカラーで、部屋にまつわるエッセイと写真を100人分掲載。
職業も住む場所もさまざまな100 人の、ひとり暮らしの記録集です。

「部屋は、言葉を話すわけじゃない。でもありったけの息を吸って暮らすわたしたちを、静かに見守ったり叱ったりしているのかもしれない。
記憶も匂いもそこに残って、見慣れたはずの毎日の隙間に、あの恋やあの会話、さみしさ、まばゆさが染みついている。」
(「はじめに」より)

きっと部屋にはそのひとそのものが表れる。意図した部屋でも、無防備な部屋でも。ほかの誰かと暮らす部屋ではない、ひとり暮らしの部屋ならなおさら。
そんな思いから、市井で生きる人たち100人に声をかけ、ひとり暮らしの部屋にまつわるエッセイを書いていただきました。部屋全体が写る写真と、お気に入りのものを写した写真も載せています。

私たちは、それぞれの部屋に流れる時間を想像しながら、この本を編集していました。
ひとり暮らしを始めたばかりの部屋、停滞と安堵が漂う部屋、その人の歴史が詰まった部屋、誰かの気配が残る部屋、これから先の長い時間が見えるような部屋……
それぞれの部屋の中に誰とも違う生活がある、ただそれだけのことなのに、100人分の暮らしの営みがこうして綴じられていることが、どうしてか心強く感じられます。

エッセイを書いてくださった方の中には、引っ越しをした人もいるし、今はひとりで暮らしていない人もいます。ひとり暮らしは突然始まったり終わったりする。ひとり暮らしでもそうじゃなくても、生活は形を変えながら続いていく。
だからこれは、とある時期に偶然そこにあった生活の、記録集のようなものです。

「ワンルームワンダーランド」といいながら、1Rのみならずさまざまな間取りの部屋を載せています。
小さなひとつの部屋(ワンルーム)から、限りない未来が広がっていきますように。


■職業も住む場所もさまざまな100人の、ひとり暮らしの記録集

お笑い芸人/ 画家 / 大学生/ 喫茶店店主/ 会社員/ 学校職員/ 地方公務員/ D J/
デザイナー/ フリーター/ 編集者/ 研究員/ 詩人/ 本屋店主/ 事務職/ 書家/ 学芸員/
文化施設職員/ 花屋/ ライター/ イラストレーター/ 映画監督/ 着付師/ NPO職員/
ラジオパーソナリティ / 縫う人/ 英語教員/ 映像作家/ ITエンジニア/ ピアノ講師/
ジビエ解体/ 料理家/ 医師/ カウンセラー/ 美容師/ 犯罪学者 ほか
通りすがりに誰かの家の玄関が開き、家の中がチラッと見えると、さらに奥の部屋を想像してしまう。それぞれの暮らしがある。その暮らしはそう簡単には見えない。見えないのがいい。街に吐き出された個々に、戻る家がある。

そこだけが落ち着ける場所かもしれないし、決して心地よい場所ではないかもしれない。どんなに散らかっていようが片付いていようが、20年住んでいようが一昨日引っ越してきたばかりだろうが、その空間は自分という存在の蓄積である。

『ワンルームワンダーランド ひとり暮らし100人の生活』(落合加依子、佐藤友理編・小鳥書房・2200円)は、タイトル通り、ひとり暮らしをしている100人の部屋の写真とエッセーが並ぶ。

いわゆるステキな暮らしのコレクションではない。今日も明日も続く、そこにある暮らしが収められている。初めてその部屋に入ったプロが取材した文や写真ではないからこそ、生活の匂いが残る。「離れて暮らすひとたちが、それぞれどんなふうに部屋と、そして自分と向き合っているんだろう」という「ささいな好奇心からはじまった」この本、綴(つづ)られる思いはさまざま。

「何もいいところがないように思う」と部屋について語る人は、酔うとカップ焼きそばを爆買いする癖がある。「暮らしを調えることの全てが常に誰かのためであった日常から遠ざかって久しい」と漏らす人がいる。その人の過去と現在だけではなく、未来まで想像したくなる。

ひとり暮らしの部屋って、常に揺れ動いているように見える。今、この瞬間だけのものなのかもしれないはかなさがある。でも、その感じ取り方自体、ひとり暮らしをだいぶ前にやめてしまった自分の大ざっぱな理解なのだろうか。

ペラペラめくっていると、断片的な記憶がひとつのまとまりとなり、よみがえりそうになる。これ、あんまり思い出さないほうがいいやつかもしれないと、次のページに急いでしまう。誰が読んでも、そこに、いつかの自分が映るはず。
ワンルームワンダーランド ひとり暮らし100人の生活 / 落合 加依子,佐藤 友理
ワンルームワンダーランド ひとり暮らし100人の生活
  • 著者:落合 加依子,佐藤 友理
  • 出版社:小鳥書房
  • 装丁:単行本(240ページ)
  • 発売日:2024-07-17
  • ISBN-10:4908582122
  • ISBN-13:978-4908582127
内容紹介:
オールカラーで、部屋にまつわるエッセイと写真を100人分掲載。職業も住む場所もさまざまな100 人の、ひとり暮らしの記録集です。「部屋は、言葉を話すわけじゃない。でもありったけの息を… もっと読む
オールカラーで、部屋にまつわるエッセイと写真を100人分掲載。
職業も住む場所もさまざまな100 人の、ひとり暮らしの記録集です。

「部屋は、言葉を話すわけじゃない。でもありったけの息を吸って暮らすわたしたちを、静かに見守ったり叱ったりしているのかもしれない。
記憶も匂いもそこに残って、見慣れたはずの毎日の隙間に、あの恋やあの会話、さみしさ、まばゆさが染みついている。」
(「はじめに」より)

きっと部屋にはそのひとそのものが表れる。意図した部屋でも、無防備な部屋でも。ほかの誰かと暮らす部屋ではない、ひとり暮らしの部屋ならなおさら。
そんな思いから、市井で生きる人たち100人に声をかけ、ひとり暮らしの部屋にまつわるエッセイを書いていただきました。部屋全体が写る写真と、お気に入りのものを写した写真も載せています。

私たちは、それぞれの部屋に流れる時間を想像しながら、この本を編集していました。
ひとり暮らしを始めたばかりの部屋、停滞と安堵が漂う部屋、その人の歴史が詰まった部屋、誰かの気配が残る部屋、これから先の長い時間が見えるような部屋……
それぞれの部屋の中に誰とも違う生活がある、ただそれだけのことなのに、100人分の暮らしの営みがこうして綴じられていることが、どうしてか心強く感じられます。

エッセイを書いてくださった方の中には、引っ越しをした人もいるし、今はひとりで暮らしていない人もいます。ひとり暮らしは突然始まったり終わったりする。ひとり暮らしでもそうじゃなくても、生活は形を変えながら続いていく。
だからこれは、とある時期に偶然そこにあった生活の、記録集のようなものです。

「ワンルームワンダーランド」といいながら、1Rのみならずさまざまな間取りの部屋を載せています。
小さなひとつの部屋(ワンルーム)から、限りない未来が広がっていきますように。


■職業も住む場所もさまざまな100人の、ひとり暮らしの記録集

お笑い芸人/ 画家 / 大学生/ 喫茶店店主/ 会社員/ 学校職員/ 地方公務員/ D J/
デザイナー/ フリーター/ 編集者/ 研究員/ 詩人/ 本屋店主/ 事務職/ 書家/ 学芸員/
文化施設職員/ 花屋/ ライター/ イラストレーター/ 映画監督/ 着付師/ NPO職員/
ラジオパーソナリティ / 縫う人/ 英語教員/ 映像作家/ ITエンジニア/ ピアノ講師/
ジビエ解体/ 料理家/ 医師/ カウンセラー/ 美容師/ 犯罪学者 ほか

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2024年11月9日

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