書評

『生きるための読書』(新潮社)

  • 2025/02/28
生きるための読書 / 津野 海太郎
生きるための読書
  • 著者:津野 海太郎
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(224ページ)
  • 発売日:2024-12-18
  • ISBN-10:410318535X
  • ISBN-13:978-4103185352
内容紹介:
80代半ば、老人でいることにも飽きてきた。ひとつ、「最後の勉強」でもしてみるか。
「老化につれて狭くなった私の世界の外で、新しく魅力的な知的世界が着実に築かれつつあるらしい」――伊藤亜紗、斎藤幸平、森田真生、小川さやか、千葉雅也、藤原辰史……40歳以上若い世代の知性にふれ、読むよろこび、学ぶよろこびを生き生きと綴る読書エッセイ。
著者には「お祭り読書」と名づける読書術がある。新しい問題にぶつかるたびに、それと関連する本を大量に読みまくるというものだ。

齢を重ね、自身を「もうじき死ぬ人」と定義する著者が、「最後のお祭り読書」に選んだのは、これまで敬遠してきた若い研究者の本だった。きっかけは伊藤亜紗『目の見えない人は世界をどう見ているのか』。以降、斎藤幸平『人新世の「資本論」』、森田真生『数学する身体』、小川さやか『チョンキンマンションのボスは知っている』、千葉雅也『現代思想入門』、藤原辰史『歴史の屑拾い』などを読んでいく。いずれも書き手は30代から40代なかばまでの人たちである。

そして著者は気づく。彼らにはかつて大学知識人たちがまとっていたエリート臭が薄いという共通点があること。そのかわり、「街を行き交う人たち」と対話する柔軟な力を身につけていること。

こうした「お祭り読書」の果てに著者が再発見したのはアナキズム、というところが感動的。権力ぬきの助け合いの社会を目指す、かつて鶴見俊輔が夢見たもの。何歳になっても、読書は未来へとつながる。
生きるための読書 / 津野 海太郎
生きるための読書
  • 著者:津野 海太郎
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(224ページ)
  • 発売日:2024-12-18
  • ISBN-10:410318535X
  • ISBN-13:978-4103185352
内容紹介:
80代半ば、老人でいることにも飽きてきた。ひとつ、「最後の勉強」でもしてみるか。
「老化につれて狭くなった私の世界の外で、新しく魅力的な知的世界が着実に築かれつつあるらしい」――伊藤亜紗、斎藤幸平、森田真生、小川さやか、千葉雅也、藤原辰史……40歳以上若い世代の知性にふれ、読むよろこび、学ぶよろこびを生き生きと綴る読書エッセイ。

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2025年2月1日

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