書評
『あなたの人生を変える睡眠の法則』(自由国民社)
「ぐっすり」で、やる気向上
書名から不眠症の人向けにも見えるが、本書はやる気向上を目的とした一種の自己啓発書。一般に自己啓発書は効果が続かないのが常だ。でなければ、次から次にヒットするわけがない。だが本書は、そこらのカンフル剤とは一線を画すものだ。
著者は、事故や病気によって一時的に仕事や日常生活を離れた人を日常に戻すのを手伝う作業療法士。つまりリハビリテーションの手助けの仕事である。
日常を離れた人の中には、何もできなくなってしまう、やる気を失った人も多い。彼らのやる気を取り戻すためにやることとは、「睡眠の法則」を知ってもらうことなのだという。
人は徹夜をすると「頭頂葉の活動が低下し、前頭葉の活動が高まる」という。これは、目や耳からの情報を処理する頭頂葉の機能を、前頭葉が肩代わりしている状態だ。でも、前頭葉は「過去の経験に基づいて考える」ための部位。慣れないことをすれば失敗も増える。これがぼーっとする理由であり、やる気が起きなかったりするのも同じような脳の機能低下なのだ。
これを避けるためには、適切な睡眠が必要。でもどうせ規則正しい生活が大事って話なんでしょ?と思ってしまうが、それだけではないらしい。
大事なのは生体リズムを知ること。24時間で1周するリズムをきざむのは、眠気と関係するホルモンであるメラトニンの効果。よく朝に光を浴びろというのは、これを抑えるため。また人体のメカニズムとして、起床から8時間後と22時間後に眠気が起こる。6時間目に10分間目を閉じれば解消できる。睡眠のメカニズムを知り適切に対処すれば、ぼーっとすることもやる気が出ない日も減る。生活が不規則な人こそ知っておくべきだ。
そろそろ筆者の頭頂葉機能が低下する時間が近づいてきたのでこの辺りで失礼。
朝日新聞 2013年5月12日
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