書評

『金色の獣、彼方に向かう』(双葉社)

  • 2018/02/20
金色の獣、彼方に向かう / 恒川 光太郎
金色の獣、彼方に向かう
  • 著者:恒川 光太郎
  • 出版社:双葉社
  • 装丁:単行本(272ページ)
  • 発売日:2011-11-16
  • ISBN-10:4575237469
  • ISBN-13:978-4575237467
内容紹介:
稀代の物語作家が紡ぐ、古より潜む"在らざるもの"たちの咆哮4編。傑作ダークファンタジー。

恐怖と憧憬、異界への入り口

本書の著者は、昨今では珍しいほど、作風に特徴のある作家、といってよい。

日本ホラー小説大賞の受賞者、というキャリアから想像されるほど、おどろおどろしくはない。かといって、ファンタジーと呼ぶには、手応えのありすぎる作風である。

収録4作品のうち、冒頭の「異神千夜」だけが、中世を舞台にした怪異譚(たん)で、あとは現代を背景にしている。「異神千夜」は、蒙古(もうこ)襲来に材をとった歴史もので、大陸生まれの美人巫術師(ふじゅつし)と、日本人の若者の愛憎を描く。「風天孔参り」「森の神、夢に還(かえ)る」と表題作は、いずれも異界への入り口にまつわる、恐怖と憧憬(しょうけい)をテーマにしている。

書かれた時期も違い、それぞれ独立した作品になっているが、〈鼬(いたち)〉や〈樹海〉といった共通の記号が出てくるので、連作とみなしてもいいだろう。

血なまぐさい話も出てくるが、著者の筆致は抑制がきいていて、いやみがない。独特のムードを持つ作品集だ。
金色の獣、彼方に向かう / 恒川 光太郎
金色の獣、彼方に向かう
  • 著者:恒川 光太郎
  • 出版社:双葉社
  • 装丁:単行本(272ページ)
  • 発売日:2011-11-16
  • ISBN-10:4575237469
  • ISBN-13:978-4575237467
内容紹介:
稀代の物語作家が紡ぐ、古より潜む"在らざるもの"たちの咆哮4編。傑作ダークファンタジー。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2012年1月8日

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