書評
『迷宮課事件簿』(早川書房)
スコットランド・ヤードに迷宮課なる部署が存在する。他の捜査課が迷宮入りとして見放した証拠品やファイルを保存しておき、情報の偶然性に頼って事件を解決する部署である――という設定のこのシリーズは、警察小説ではない。オースティン・フリーマンの正系に連なる倒叙探偵小説である。周到な犯罪がこってりと描かれるのが特色で、レイスン警部以下の捜査側の動きはあっさりと書かれているだけ。が、第一作の『ゴムのラッパ』に顕著なように、この犯罪者のドラマがいかにもイギリス的なおもしろさにあふれているのである。松本清張がファンだったというのもうなずける。『百万に一つの偶然』『老女の深情け』等も同じシリーズ。
  
【この書評が収録されている書籍】
 
 もし諸君が迷宮課物語をまだ一篇も読んでいないならば、私は初めてこれを読まれる諸君をむしろ羨ましく思うものである――エラリー・クイーン
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