書評

『生首に聞いてみろ』(角川書店)

  • 2017/09/15
生首に聞いてみろ / 法月 綸太郎
生首に聞いてみろ
  • 著者:法月 綸太郎
  • 出版社:角川書店
  • 装丁:文庫(551ページ)
  • 発売日:2007-10-01
  • ISBN-10:4043803028
  • ISBN-13:978-4043803026
内容紹介:
首を切り取られた石膏像が、殺人を予告する―著名な彫刻家・川島伊作が病死した。彼が倒れる直前に完成させた、娘の江知佳をモデルにした石膏像の首が切り取られ、持ち去られてしまう。悪質ないたずらなのか、それとも江知佳への殺人予告か。三転四転する謎に迫る名探偵・法月綸太郎の推理の行方は―!?幾重にも絡んだ悲劇の幕が、いま、開く。
トヨザキ的評価軸:
「金の斧(親を質に入れても買って読め)」
◎「銀の斧(図書館で借りられたら読めば―)」
「鉄の斧(ブックオフで100円で売っていても読むべからず)」

褒めるにしてもせめて「労作」くらいで止めておきなさいよ

あらま、やだっ! 奥様、ご覧あそばしまして、「このミステリーがすごい!」(宝島社)。たしかにすごいんですの、順位が。すごいっていうかひどいんですの、順位が。だって奥様、法月論太郎の『生首に聞いてみろ』が一位になってんですもの。

というわけで、どこのどいつだよ、この作品に高い点数をつけたのは、とチェックしてみたところ、それは福井健太と川出正樹。ま、福井くんは新本格シンパだもんね。御大十二年ぶりの新作とくりゃ、高い点数もつけたくなりましょう。でも、せめて「労作」ぐらいに止めておきなさいよ、褒めるにしても。今後の批評家人生に差し障りがありますから。

新本格派であるにもかかわらず、物語の舞台を孤島や館といった非日常空間にはおかず、リアルな現代社会におけるリアルな犯罪を、本格ミステリーならではのロジックで解明するという茨の道を突き進んでいるその姿勢には、トヨザキだって感服つかまつり候。伏線の張り方が精緻で、回収の仕方がフェアだという評にも、まあまあ賛同いたします。けど、「ロス・マクドナルドを思わせる家族の悲劇を描いて深みがある」系の評はどうよっ。ロスマクって、こんな薄っぺらだっけ? わたしには、この作品に出てくるほとんどの人物が、紙製の着せ替え人形程度のリアリティしか獲得してないと思えるんですけどー。

特に女子がひどいっ。法月さん、全体的に女子を駒みたいに動かしすぎ。都合よく殺したり自殺させたりしすぎ。女子をバカに描きすぎ。おまけに女子の生理を知らなさすぎ。ネタバレになるので、未読の方は以降読まないでほしいんですけど、完全犯罪を成就させるため、犯人が過去においてある人物を妊娠させなきゃならなくて、だから強姦したって布石が明らかにされるとこがあるんですけどね。……バカこいてんじゃねーよ。たった一回のレイプで、都合よく妊娠するかよ、なめんじゃねーよ、女体の神秘を。

もっと一位にふさわしい小説、他にありましょうに。でも、そんなオデにも一カ所だけ好きなとこがあるよっ。とある人物が電動ウォーカーに乗りながら、主人公の質問に答えるシーン。〈息子夫婦は(スッスッ、ハッハッ)、あの男にひどい仕打ちを受けたことがありますの。まだ二人が一緒になる前ですが(スッスッ、ハッハッ)、〉

柳美里『8月の果て』(新潮文庫)のパロディ?

と、地雷を踏んだオデに、しかし「今は綾辻さんの『暗黒館の殺人』批判したほうがお手柄度は高いよ」と囁きかける『文学賞メッタ斬り!』相方の大森望。あんた腹ん中ドス黒すぎ。

【この書評が収録されている書籍】
正直書評。 / 豊崎 由美
正直書評。
  • 著者:豊崎 由美
  • 出版社:学習研究社
  • 装丁:単行本(228ページ)
  • 発売日:2008-10-00
  • ISBN-10:4054038727
  • ISBN-13:978-4054038721
内容紹介:
親を質に入れても買って読め!図書館で借りられたら読めばー?ブックオフで100円で売っていても読むべからず?!ベストセラーや名作、人気作家の話題作に、金、銀、鉄、3本の斧が振り下ろされる。

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生首に聞いてみろ / 法月 綸太郎
生首に聞いてみろ
  • 著者:法月 綸太郎
  • 出版社:角川書店
  • 装丁:文庫(551ページ)
  • 発売日:2007-10-01
  • ISBN-10:4043803028
  • ISBN-13:978-4043803026
内容紹介:
首を切り取られた石膏像が、殺人を予告する―著名な彫刻家・川島伊作が病死した。彼が倒れる直前に完成させた、娘の江知佳をモデルにした石膏像の首が切り取られ、持ち去られてしまう。悪質ないたずらなのか、それとも江知佳への殺人予告か。三転四転する謎に迫る名探偵・法月綸太郎の推理の行方は―!?幾重にも絡んだ悲劇の幕が、いま、開く。

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初出メディア

TV Bros.

TV Bros. 2005年1月8日

多彩な連載陣のコラムが人気のポップカルチャーTV情報誌。豊﨑由美氏の書評コーナー「帝王切開金の斧」が好評連載中。

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