解説

『トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す』(新潮社)

  • 2018/02/21
トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す  / トーマス マン
トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す
  • 著者:トーマス マン
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:文庫(259ページ)
  • 発売日:1967-09-27
  • ISBN:4102022015
内容紹介:
精神と肉体、芸術と生活の相対立する二つの力の間を彷徨しつつ、そのどちらにも完全に屈服することなく創作活動を続けていた初期のマンの代表作2編。憂鬱で思索型の一面と、優美で感性的な一面をもつ青年を主人公に、孤立ゆえの苦悩とそれに耐えつつ芸術性をたよりに生をささえてゆく姿を描いた『トニオ・クレーゲル』、死に魅惑されて没落する初老の芸術家の悲劇『ヴェニスに死す』。

日本の中の北ドイツ 旧制高校文化とトーマス・マン

「私にとってトーマス・マンは青春のすべてを象徴する作家だった」

と書いた辻邦生は、戦中から戦後にかけて、「鋼青色(スチールブルー)の山脈にかこまれた、影の濃い、ひっそりした」旧制松本高校の学生で、北杜夫とは同級の友だった。

「山からじかに流れてくる霧の匂いのする空気、冷んやりした草地、灰色のしんとした校舎、深々と枝を垂らすヒマラヤ杉」「いかにも北ドイツ出身の瞑想的な作家を読むのにふさわしい雰囲気」がそこにはあった。

辻邦生は1950年代末、パリで再びマンの作品に出会い、今度はフランス語で熟読して決定的な影響を受けた。北杜夫は1969年夏、辻邦生とチューリヒ近郊のマンの墓を詣(もう)で、このかつての旧制高校生は墓前で突如鳴咽した。

内容解説

晦渋(かいじゅう)で憂鬱で思索型の一面と、明晰で優美で感性的な一面とをあわせもつ青年、トニオ・クレーゲルを主人公として物語られる短編。この青年は、人間存在の二大支柱間の対立関係をあらわし、神性と獣性とがまったく対等の関係にあると見られ始めた近代という時代の、人間意識の分裂に苦しんだ。その、いったん分裂したものをもとの状態に帰そうとする苦闘がテーマとなっている。

【この解説が収録されている書籍】
新潮文庫20世紀の100冊  / 関川 夏央
新潮文庫20世紀の100冊
  • 著者:関川 夏央
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:新書(213ページ)
  • ISBN:4106103095
内容紹介:
文学作品は、時代から独立して存在しているわけではない。その作品が書かれ、受け入れられ、生き残ってきたことには理由がある。与謝野晶子、夏目漱石、森鴎外などの古典から、谷崎潤一郎、三島由紀夫などの昭和の文豪、現代の村上春樹、宮部みゆきまで、1年1冊、合計100冊の「20世紀の名著」を厳選。希代の本読み、関川夏央による最強のブックガイド。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す  / トーマス マン
トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す
  • 著者:トーマス マン
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:文庫(259ページ)
  • 発売日:1967-09-27
  • ISBN:4102022015
内容紹介:
精神と肉体、芸術と生活の相対立する二つの力の間を彷徨しつつ、そのどちらにも完全に屈服することなく創作活動を続けていた初期のマンの代表作2編。憂鬱で思索型の一面と、優美で感性的な一面をもつ青年を主人公に、孤立ゆえの苦悩とそれに耐えつつ芸術性をたよりに生をささえてゆく姿を描いた『トニオ・クレーゲル』、死に魅惑されて没落する初老の芸術家の悲劇『ヴェニスに死す』。

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