書評

『戦後史開封』(産経新聞社)

  • 2018/07/09
戦後史開封 / 産経新聞「戦後史開封」取材班
戦後史開封
  • 著者:産経新聞「戦後史開封」取材班
  • 出版社:産経新聞社
  • 装丁:単行本(510ページ)
  • ISBN:4594016359
内容紹介:
焦土の敗戦国から世界有数の経済大国へと、未曾有の発展を達成した日本。戦後の50年間に何がおこったのか。事件、文化、社会、政治経済の4分野にわたり、その歴史を検証する。

本音語り始める生き証人たち

半世紀へのカウントダウンを続けている“戦後”。「多様な」とか「著しく変わった」とか「異色の」とか、それこそ戦後史を飾る月並みな形容句はすぐに口をついて出る。だがその実態に迫る鮮やかな切り口となると、これは見つけるのが本当に難しい。

戦後史に関してまずは“写真集”の類から出始めているのは、このことをまさに象徴している。百聞は一見にしかずとはよく言ったもの。ビジュアルなものによるインパクトは最も強烈だからだ。だが視覚による驚きから醒(さ)め、今少し戦後史をつっこんでみたいと思う時、人はたちまちにして足踏みを余儀なくされる。

その状態からの開封をねらって企画されたのが本書だ。戦後におきた大小の事象をアトランダムにとりあげながら、いかにも新聞社らしくすべて当時の生き証人の証言による再構成の形をとる。証言者の年齢を考えながら読み進めると、多くの当事者にとって自分の生き様とオーバーラップする“戦後”を、あるいは客観化し、あるいは許せるといった気分になってきつつあるのがわかる。もちろん未だに生涯語らずと口を閉ざす証言者もいないわけではない。しかしそういう人にしても、頑(かたくな)な感じよりは時の流れに身をまかせるという態度に変わってきているのではないか。

具体的には政治経済史から社会文化史まで、全部で三十五の事象を扱っている。今はやりのオタク族ではないが、個々の事象については自分の方が詳しいという人がかなりの程度いるであろう。しかし全部について本書を凌駕(りょうが)する知識をもつ人は稀(まれ)な筈(はず)だ。ここは謙虚に百聞は一見にまさる事象にあたってみよう。評者はと言えば、阿南家の日々・帝国ホテルにて・受験戦争といった社会事象、即席ラーメン・女性の性革命・ミニスカートといった文化事象、血のメーデー・勤評闘争といった政治事象の証言に興味を惹(ひ)かれた。今後とも取材班の努力が続けられることを祈ってやまない。

【この書評が収録されている書籍】
本に映る時代 / 御厨 貴
本に映る時代
  • 著者:御厨 貴
  • 出版社:読売新聞社
  • 装丁:単行本(305ページ)
  • ISBN:4643970472
内容紹介:
『吉田茂書翰』から『ゴーマニズム宣言』まで「日本」を知り、「自分自身」を知る140冊。気鋭の政治学者が放つ渾身の社会時評&読書ガイド。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

戦後史開封 / 産経新聞「戦後史開封」取材班
戦後史開封
  • 著者:産経新聞「戦後史開封」取材班
  • 出版社:産経新聞社
  • 装丁:単行本(510ページ)
  • ISBN:4594016359
内容紹介:
焦土の敗戦国から世界有数の経済大国へと、未曾有の発展を達成した日本。戦後の50年間に何がおこったのか。事件、文化、社会、政治経済の4分野にわたり、その歴史を検証する。

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初出メディア

読売新聞

読売新聞 1995年3月13日

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