書評

『ニュー・オーダーとジョイ・ディヴィジョン、 そしてぼく』(Pヴァイン)

  • 2018/08/21
ニュー・オーダーとジョイ・ディヴィジョン、 そしてぼく / バーナード・サムナー
ニュー・オーダーとジョイ・ディヴィジョン、 そしてぼく
  • 著者:バーナード・サムナー
  • 翻訳:萩原 麻理
  • 出版社:Pヴァイン
  • 装丁:単行本(384ページ)
  • 発売日:2015-09-18
  • ISBN-10:4907276400
  • ISBN-13:978-4907276409
内容紹介:
家族に起きた悲劇の心揺さぶる描写が、温かいユーモアをもって自己憐憫におちいることなく語られる……。ロックンロールによって救われ、形作られた人生が明かされるのと共に描かれるのは、成功… もっと読む
家族に起きた悲劇の心揺さぶる描写が、温かいユーモアをもって自己憐憫におちいることなく語られる……。
ロックンロールによって救われ、形作られた人生が明かされるのと共に描かれるのは、成功とスターダムを猛スピードで駆け抜けた人物の姿であり、
武器はストリートの知性と簡素なマンチェスターのウィットだけだった……。
ジョイ・ディヴィジョンとニュー・オーダーのファン、必読。
──アーヴィン・ウェルシュ, 『エスクァイア』誌より

ジョイ・ディヴィジョン創設メンバーのでありそのギタリスト、ニュー・オーダーのリード・シンガーであるバーナード・サムナー。
彼の寡黙さは何年にも渡って知られてきた……。彼は1970年代以降のマンチェスターの音楽シーンに不可欠な部分を担い、
これまでにもっとも影響力を持ったバンドを生んだ決定的瞬間に立ち会っている。
いま、初めて明かされるジョイ・ディヴィジョン/ニュー・オーダーの物語、マンチェスター、パンク、NYクラブ体験、“ブルー・マンデー"制作秘話、アシッド・ハウスとイビサ、
バンドの分裂……そしてイアン・カーティスへの思い……
バーナード・サムナーの自伝、ついに刊行!

もし今ストーリーを語らねば、もう語ることはないと思える地点に私も差し掛かった。
この後に続くページの中には、自分でも語るのがつらいこと、これまで公に言ったことがないこともあるが、
それは私という人間、私が関わってきたバンド、その創造に関わってきた音楽を十分に理解するのにはとても重要だ。
バンドや音楽以外のことについ て沈黙してきたことで、神話が作られ、真実ではないことが事実とされてきた。
だがこれを書くことで、いくつかの誤解を解き、できるだけ多くの神話を葬りたいと思っている。
何より、真実のほうがストーリーとしてずっと、ずっと面白いのだから。
──バーナード・サムナー/本書「序文」より 384ページ、上製本

時代に影響を与えたバンドの渦中にいた

昔、といっても1980年代。英国にジョイ・ディヴィジョンというバンドがあった。内省的で思弁的な歌詞と、曲を作りボーカルを担当していたイアン・カーティスのカリスマ的な存在感。けっして明るく元気になれる歌ではない。だが、風邪をひいて寝ているときにヘッドホンから流れてくるその音楽を聴いていると、このまま死んでもいいか、と思えるような、不思議な安息感があった。

バンドは成功し、明日からは念願のアメリカツアーという晩に、イアンは自殺した。バンドは中心を失って、迷走した。

だが、バンドは名前を「ニュー・オーダー」と変え、ダンスミュージックの担い手として再出発する。シングル「ブルー・マンデー」の大ヒット、そして分裂……。

バンドの中ではどちらかというと隠れた存在だったギタリストのバーナード・サムナーが、この稀有(けう)な経験をしたバンドの歴史を語ったのが本書。正直に言えば、このバンドを撮った映画(複数ある)や研究書、暴露本の類いにはやや食傷気味だ。そりゃたしかに崩壊と再生をこれだけ極端な形で経験したバンドは他にあまりないかもしれない。でも、もういいじゃん、昔のことだよ、というのがオレの感想だった。

一読して、それでもこの本は必要だと思った。とにかく正確に、それから過度な修飾を排して書いてあることは、翻訳からでもわかった。そして、このバンドの特徴は著者自身が書いているが、音楽のジャンルが多岐にわたっていることだ。ダンスのための音楽も、瞑想(めいそう)的で静かな曲も、コテコテのロックもある。ライブの客層はその場その時で大きく異なるそうだ。それほど長く彼らは音楽を作り続けている。この物語はそうした音楽を内側から説明している。バンドストーリーの決定版。
ニュー・オーダーとジョイ・ディヴィジョン、 そしてぼく / バーナード・サムナー
ニュー・オーダーとジョイ・ディヴィジョン、 そしてぼく
  • 著者:バーナード・サムナー
  • 翻訳:萩原 麻理
  • 出版社:Pヴァイン
  • 装丁:単行本(384ページ)
  • 発売日:2015-09-18
  • ISBN-10:4907276400
  • ISBN-13:978-4907276409
内容紹介:
家族に起きた悲劇の心揺さぶる描写が、温かいユーモアをもって自己憐憫におちいることなく語られる……。ロックンロールによって救われ、形作られた人生が明かされるのと共に描かれるのは、成功… もっと読む
家族に起きた悲劇の心揺さぶる描写が、温かいユーモアをもって自己憐憫におちいることなく語られる……。
ロックンロールによって救われ、形作られた人生が明かされるのと共に描かれるのは、成功とスターダムを猛スピードで駆け抜けた人物の姿であり、
武器はストリートの知性と簡素なマンチェスターのウィットだけだった……。
ジョイ・ディヴィジョンとニュー・オーダーのファン、必読。
──アーヴィン・ウェルシュ, 『エスクァイア』誌より

ジョイ・ディヴィジョン創設メンバーのでありそのギタリスト、ニュー・オーダーのリード・シンガーであるバーナード・サムナー。
彼の寡黙さは何年にも渡って知られてきた……。彼は1970年代以降のマンチェスターの音楽シーンに不可欠な部分を担い、
これまでにもっとも影響力を持ったバンドを生んだ決定的瞬間に立ち会っている。
いま、初めて明かされるジョイ・ディヴィジョン/ニュー・オーダーの物語、マンチェスター、パンク、NYクラブ体験、“ブルー・マンデー"制作秘話、アシッド・ハウスとイビサ、
バンドの分裂……そしてイアン・カーティスへの思い……
バーナード・サムナーの自伝、ついに刊行!

もし今ストーリーを語らねば、もう語ることはないと思える地点に私も差し掛かった。
この後に続くページの中には、自分でも語るのがつらいこと、これまで公に言ったことがないこともあるが、
それは私という人間、私が関わってきたバンド、その創造に関わってきた音楽を十分に理解するのにはとても重要だ。
バンドや音楽以外のことについ て沈黙してきたことで、神話が作られ、真実ではないことが事実とされてきた。
だがこれを書くことで、いくつかの誤解を解き、できるだけ多くの神話を葬りたいと思っている。
何より、真実のほうがストーリーとしてずっと、ずっと面白いのだから。
──バーナード・サムナー/本書「序文」より 384ページ、上製本

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

初出メディア

サンデー毎日

サンデー毎日 2015年11月29日

  • 週に1度お届けする書評ダイジェスト!
  • 「新しい書評のあり方」を探すALL REVIEWSのファンクラブ
関連記事
陣野 俊史の書評/解説/選評
ページトップへ