書評

『レコードと暮らし』(夏葉社)

  • 2018/09/08
レコードと暮らし / 田口史人
レコードと暮らし
  • 著者:田口史人
  • 出版社:夏葉社
  • 装丁:単行本(182ページ)
  • 発売日:2015-09-18
  • ISBN:4904816161
内容紹介:
レコード、ソノシート、フォノカード、ラッカー盤。235枚の音盤に耳を傾けることで見えてくる、戦後の人々の気持ちと暮らし。レコードを作るとはどういうことなのか。レコードを聞くとはどういう体験なのか。人々に愛された「物」としてレコードを眺めることで、失われた何かがよみがえる。面白くてガツンとくる、痛快無比のレコード庶民烈伝。

手間と時間をかけて肉薄する楽しさを知る

何か、凄(すご)い本を読んだな、というのが第一印象だ。著者の言う「レコード」というのは、音楽を録音したLPレコードを指すのではない。もちろんそうしたアナログ盤もたくさん聴いているのだろうが、この本で語ってあるのは、ポータブル・レコード・プレーヤーにのっけるような、ぺらぺらのビニール盤のことが多い(死語になりかかっているのを承知で言えば、「ソノシート」などだ)。

著者のビニール盤の集め方が興味深い。とにかく、全国を回る。古道具屋さんで気になるビニール盤を手に入れる。たとえば、夕張観光協会が制作した「黒ダイヤばやし」という音頭。あるいは、奄美大島在住の盲目の少女が、沖縄のアメリカ人宣教師の勧めで賛美歌を歌い始めたら、ひょんなことから、アメリカのキリスト教系放送局からリリースされたレコードとか。

私たちが抱くのは、よくまあこんなに集めたなあ、という感想じゃない。ネット時代になった今では、ピンポイントで自分の関心にあった「物」を探し当てる。一方で、著者は、手間と時間をかけて「物」に肉薄していく。そのプロセスが情報を集めるという行為そのものだったことを、思い出させてくれるのだ。だから気持ちが揺さぶられる。

著者の田口史人は東京・高円寺で「円盤」という店をやっている。私も幾度か足を踏み入れたことのある場所だが、レコード、ソノシート、フォノカード、ラッカー盤など、いろんな音源がある。レコードが音楽を聴くためのツールだと思っている人!あるいはもう過去のメディアだと思っている人!一度、足を運ぶか、この本を読んでみてほしい。自分の考えが偏狭すぎて厭(いや)になるくらい。

声高にではないが、現今の音楽を取り巻く環境にも鋭い指摘が。とにかく、手間暇(ひま)かけてちゃんと向き合うこと。これに尽きる。
レコードと暮らし / 田口史人
レコードと暮らし
  • 著者:田口史人
  • 出版社:夏葉社
  • 装丁:単行本(182ページ)
  • 発売日:2015-09-18
  • ISBN:4904816161
内容紹介:
レコード、ソノシート、フォノカード、ラッカー盤。235枚の音盤に耳を傾けることで見えてくる、戦後の人々の気持ちと暮らし。レコードを作るとはどういうことなのか。レコードを聞くとはどういう体験なのか。人々に愛された「物」としてレコードを眺めることで、失われた何かがよみがえる。面白くてガツンとくる、痛快無比のレコード庶民烈伝。

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初出メディア

サンデー毎日

サンデー毎日 2015年10月20日

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