退屈な読書
- 著者:高橋 源一郎
- 出版社:朝日新聞社
- 装丁:単行本(253ページ)
- 発売日:1999-03-00
- ISBN-13:978-4022573759
- 内容紹介:
- 死んでもいい、本のためなら…。すべての本好きに贈る世界でいちばん過激な読書録。
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この五月十日に僕は染井にある二葉亭の墓をたずねました。ふだんは彼の命日をとくに気にかけたことはないのですが、この日の墓詣りは、今年のはじめから心がけていました。
彼が命をおえた四十六歳という齢に、今年僕もなったからで、この記念すべき命日に彼の墓に行こうという独合点の欲求のためです。……むかしは伯父さんぐらいのつもりでいた彼が、いつのまにか自分より若死にした人になってしまったという事実は、一面において彼と別れるときがきたのを意味します。……その代わりに今ならば、ことによると彼の生涯を鳥瞰できるかも知れません。……鴎外はシュニッツラーだかを訳しながら、自分の方が年上だからね、といったそうですが、僕は彼より年上になったのが、まだ利点であり得るあいだに、二葉亭にたいする長い間の負い目を果たそうと思います。