書評
『科学vs.キリスト教 世界史の転換』(講談社)
真実追究に命賭けたロマン
既存の価値観を変える意識革命は一人の天才によってなし遂げられるものではない。本書は17世紀の「科学革命」から「博物学の世紀」(18世紀)に至るまで、多くの天才がいかにして「世界(宇宙を含む)」「人間」「時間」の観念を変革し、キリスト教的普遍史を打破していったか、その格闘の物語である。ガリレオも信じていた「閉じた宇宙」(コスモス)をデカルトが崩壊させ、「無限の宇宙」へと変えた。ビュフォンはニュートンの絶対的時間を人類史に持ち込み、「人類史6千年」を否定した。リンネは、長く神と自然の「中間の環(わ)」だった人間を、自然界の一員に「降格」させた。
18世紀末には、今の科学者からは異界の住民に見えるガッテラーとシュレーツァーが「普遍史」を「世界史」へと変換させた。聖書が与えた時間以上に生きたアダムも「科学革命」に「緩慢なる死」を看取(みと)られたのである。本書は真実追究に命を賭けた科学者のロマンが香り高く漂う。
朝日新聞 2014年02月16日
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