書評

『王のパティシエ─ストレールが語るお菓子の歴史』(白水社)

  • 2017/07/04
王のパティシエ─ストレールが語るお菓子の歴史 / ピエール リエナール,フランソワ デュトゥ,クレール オーゲル
王のパティシエ─ストレールが語るお菓子の歴史
  • 著者:ピエール リエナール,フランソワ デュトゥ,クレール オーゲル
  • 翻訳:塩谷 祐人
  • 出版社:白水社
  • 装丁:単行本(240ページ)
  • 発売日:2010-12-14
  • ISBN-10:4560081050
  • ISBN-13:978-4560081051
内容紹介:
パリ2区モントルグイユ通り51番地にある「ストレール」は創業1730年、パリでもっとも歴史のある菓子店。創業者のニコラ・ストレールは14歳のとき元ポーランド王スタニスワフ・レシチニスキ公の… もっと読む
パリ2区モントルグイユ通り51番地にある「ストレール」は創業1730年、パリでもっとも歴史のある菓子店。創業者のニコラ・ストレールは14歳のとき元ポーランド王スタニスワフ・レシチニスキ公の厨房で働き始め、ヴェルサイユ宮殿でルイ15世夫妻のパティシエを務めたのち、自分の店を開いた。本書はピエール・リエナール、フランソワ・デュトゥそしてクレール・オーゲルが、現在の「ストレール」に残る古い記録やレシピ、その他の史料をもとに"ニコラ翁が書き綴った日記"という形でまとめたものである。

古き時代を甦らせるレシピ本

18世紀前半、元ポーランド王の娘マリアの輿入(こしい)れに付いてきたニコラ・ストレールは、ルイ15世のパティシエとなり、やがてパリに菓子店を構える。これが老舗店「ストレール」の始まりだ。本書は実録ではない。店に残るレシピや記録、史料、文学的文献などを元に、丹念に作りあげられた精緻(せいち)なフィクションである。

革命前年、パリの街では怒りに駆られた人々が火を放ち、略奪や殺人が横行している。ストレール翁は曽孫に菓子作りの奥義と食の歴史を伝承するため、日記を書くことにした。美食の歴史がメソポタミアから繙(ひもと)かれる。マカロン好きだったラブレーの著書や『ドン・キホーテ』からの引用。パティシエとは元々、塩味のパテやタルトを作る職人を指したこと。ワッフル売りや牛乳売りの呼び声など、街のサウンドスケープが再現されるのも楽しい。本書は、小粋な風刺小説であり、過去から過去へ遡(さかのぼ)る二重の歴史書であり、古き時代を甦(よみがえ)らせるレシピ本である、という夢のような一冊だ。ストレールのお菓子の小箱のように愛らしく、そしてあらゆるものが詰まっている!
王のパティシエ─ストレールが語るお菓子の歴史 / ピエール リエナール,フランソワ デュトゥ,クレール オーゲル
王のパティシエ─ストレールが語るお菓子の歴史
  • 著者:ピエール リエナール,フランソワ デュトゥ,クレール オーゲル
  • 翻訳:塩谷 祐人
  • 出版社:白水社
  • 装丁:単行本(240ページ)
  • 発売日:2010-12-14
  • ISBN-10:4560081050
  • ISBN-13:978-4560081051
内容紹介:
パリ2区モントルグイユ通り51番地にある「ストレール」は創業1730年、パリでもっとも歴史のある菓子店。創業者のニコラ・ストレールは14歳のとき元ポーランド王スタニスワフ・レシチニスキ公の… もっと読む
パリ2区モントルグイユ通り51番地にある「ストレール」は創業1730年、パリでもっとも歴史のある菓子店。創業者のニコラ・ストレールは14歳のとき元ポーランド王スタニスワフ・レシチニスキ公の厨房で働き始め、ヴェルサイユ宮殿でルイ15世夫妻のパティシエを務めたのち、自分の店を開いた。本書はピエール・リエナール、フランソワ・デュトゥそしてクレール・オーゲルが、現在の「ストレール」に残る古い記録やレシピ、その他の史料をもとに"ニコラ翁が書き綴った日記"という形でまとめたものである。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2011年2月13日

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