書評

『そうだったのか手塚治虫―天才が見抜いていた日本人の本質』(祥伝社)

  • 2024/06/25
そうだったのか手塚治虫―天才が見抜いていた日本人の本質 / 中野 晴行
そうだったのか手塚治虫―天才が見抜いていた日本人の本質
  • 著者:中野 晴行
  • 出版社:祥伝社
  • 装丁:新書(252ページ)
  • 発売日:2005-04-01
  • ISBN-10:439611009X
  • ISBN-13:978-4396110093
内容紹介:
手塚治虫のデビューは昭和二十一年一月。それは敗戦によってリセットされたこの国がゼロから再スタートを切った直後のことだった。以来四十余年、戦後日本の変化・発展と寄り添うように十万枚… もっと読む
手塚治虫のデビューは昭和二十一年一月。それは敗戦によってリセットされたこの国がゼロから再スタートを切った直後のことだった。以来四十余年、戦後日本の変化・発展と寄り添うように十万枚ものマンガを描きあげて逝った巨星。著者はその作品群を「アイデンティティの喪失」と「自分探し」という視点からあらためて分析する。そこには「作家」=「主人公」=「世相・社会」の相関関係が鮮やかに浮かびあがってきた。(この本の目的は「マンガ学」的に手塚マンガの研究をすることではない。あくまでも、手塚マンガをテキストとしながら、手塚を含めた戦後の日本人を考えることにある)。第一級の研究家による画期的論考の完成。
著者は前作『マンガ産業論』で、世界的にも稀(まれ)な日本マンガの成功の秘密を、社会経済史的にじつにすっきりと解明してみせた。本書でも、その持ち味である明快さは保たれている。

鉄腕アトムは天馬博士に発明された。博士は死んだ息子・トビオが忘れられず、息子そっくりのロボット・アトムを創ったのだ。だが、背が伸びないアトムは、ついに博士から「お前はトビオではない」と宣告され、サーカスに売り飛ばされる。

アトムのこのアイデンティティーの喪失を、著者は敗戦日本人の自己崩壊と重ねあわせる。そして、手塚マンガを、戦後日本の物質的・精神的変化の反映として丹念に読み解いていく。

一見単純な視点だが、平明な論述を追ううちに、なるほど手塚マンガは日本人の鏡だったのだなという重い感慨が湧(わ)き、手塚の遺作『グリンゴ』を論じる最終章では、「じゃ…日本人てのは一体なんなのだーッ」という主人公の叫びが我々の心に突き刺さるのである。
そうだったのか手塚治虫―天才が見抜いていた日本人の本質 / 中野 晴行
そうだったのか手塚治虫―天才が見抜いていた日本人の本質
  • 著者:中野 晴行
  • 出版社:祥伝社
  • 装丁:新書(252ページ)
  • 発売日:2005-04-01
  • ISBN-10:439611009X
  • ISBN-13:978-4396110093
内容紹介:
手塚治虫のデビューは昭和二十一年一月。それは敗戦によってリセットされたこの国がゼロから再スタートを切った直後のことだった。以来四十余年、戦後日本の変化・発展と寄り添うように十万枚… もっと読む
手塚治虫のデビューは昭和二十一年一月。それは敗戦によってリセットされたこの国がゼロから再スタートを切った直後のことだった。以来四十余年、戦後日本の変化・発展と寄り添うように十万枚ものマンガを描きあげて逝った巨星。著者はその作品群を「アイデンティティの喪失」と「自分探し」という視点からあらためて分析する。そこには「作家」=「主人公」=「世相・社会」の相関関係が鮮やかに浮かびあがってきた。(この本の目的は「マンガ学」的に手塚マンガの研究をすることではない。あくまでも、手塚マンガをテキストとしながら、手塚を含めた戦後の日本人を考えることにある)。第一級の研究家による画期的論考の完成。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2005年7月17日

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