書評

『ボブ・ディラン』(新潮社)

  • 2024/01/19
ボブ・ディラン / 北中 正和
ボブ・ディラン
  • 著者:北中 正和
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:新書(192ページ)
  • 発売日:2023-02-17
  • ISBN-10:4106109867
  • ISBN-13:978-4106109867
内容紹介:
代表曲「風に吹かれて」から60年。ノーベル文学賞を受賞した唯一のミュージシャン、ボブ・ディランは、80歳を過ぎた今なおコン サートツアーと創作活動を続けている。底知れぬエネルギーと独創… もっと読む
代表曲「風に吹かれて」から60年。ノーベル文学賞を受賞した唯一のミュージシャン、ボブ・ディランは、80歳を過ぎた今なおコン サートツアーと創作活動を続けている。底知れぬエネルギーと独創性、ときに剽窃まがいと批判を受けても、なぜ彼の詞と音楽は時 代もジャンルも越えて高く評価されるのか――ポピュラー音楽評論の第一人者が、数々の名曲の歴史的背景を分析、「ロック界最重 要アーティスト」の本質に迫る。

(目次)
序章 デビューから60年を過ぎて
「百万メガトンの爆弾」/フォークのプリンス/ロックへの転身/ゴスペル三部作/ピュリッツァー賞、ノーベル賞……etc.

第1章「風に吹かれて」の衝撃
いきなりの大抜擢/公民権運動/難しい言葉は出てこないが/ポピュラー音楽初の「鋭い問いかけ」etc.

第2章 政治・社会に関わる2つの重要曲
「はげしい雨が降る」/「核」との関連は否定/軍産複合体に反対する「戦争の親玉」/エド・シーランもカヴァー etc.

第3章 一つの金字塔「ライク・ア・ローリング・ストーン」
ロック史上最重要曲の一つ/あふれる批判の中で/「どんな気持ちがする?」/1965年に何が起こったかetc.
第4章 ブルース・シンガーとしてのボブ・ディラン
「朝日のあたる家」/デヴュー・アルバムの過半が黒人音楽/ジミ・ヘンドリックスの言葉etc.

第5章 フォークの父ウディ・ガスリーとの出会い
オバマ就任記念式典/「凡庸な歌はひとつもなかった」/アメリカの・ルーツ・ミュージック/ビートルズへの影響もetc.

第6章 スタンダードの巨人フランク・シナトラとの接点
評価が逆転した『セルフ・ポートレイト』/ディランの歌唱力/往年の曲の素顔/しわだらけの農夫の声etc.
第7章 「ネヴァー・エンディング・ツアー」はいつまで続く
「もうわたしの時代は終わった」/「ブルーにこんがらがって」の変遷/芸能のあり方の枠を広げるetc.

第8章 ボブ・ディランは剽窃者なのか?
先行者に対する敬意/剽窃騒動への解答/「先立つものがあったんだ」/「上を向いて歩こう」のハミングetc.
「ボブ・ディランはすごい!」といわれても、いまひとつピンとこないという人は多いと思う。ぼくもそうだ。たしかに「風に吹かれて」は名曲だけど、ほかはよく知らない。美声とはほど遠いダミ声だし。ましてや、なんでノーベル文学賞?

そんな疑問に北中正和はやさしくていねいに答える。ディランの音楽をコンパクトに伝える新書だ。

デビューから60年余りのディランの軌跡は、誤解とレッテル貼りと非難、そして再評価の連続だった。たとえば、「フォークのプリンス」と持ち上げて、彼がエレキギターを弾くとブーイングを浴びせた。

象徴的なのは1970年発表のアルバム「セルフ・ポートレイト」。評論家は音楽誌で「このクソは何だ」とこき下ろした。ところが43年後、未発表音源も含めた「アナザー・セルフ・ポートレイト」が出ると、同じ評論家がこんどは大絶賛したというのだ。ディランの名声が高まって評論家が日和ったというわけはない。43年前は意図が分からなかったのだ、評論家も音楽ファンも。たしかにいま聴くと、いい。

ディランはいつだって、ぼくらの先にいる。
ボブ・ディラン / 北中 正和
ボブ・ディラン
  • 著者:北中 正和
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:新書(192ページ)
  • 発売日:2023-02-17
  • ISBN-10:4106109867
  • ISBN-13:978-4106109867
内容紹介:
代表曲「風に吹かれて」から60年。ノーベル文学賞を受賞した唯一のミュージシャン、ボブ・ディランは、80歳を過ぎた今なおコン サートツアーと創作活動を続けている。底知れぬエネルギーと独創… もっと読む
代表曲「風に吹かれて」から60年。ノーベル文学賞を受賞した唯一のミュージシャン、ボブ・ディランは、80歳を過ぎた今なおコン サートツアーと創作活動を続けている。底知れぬエネルギーと独創性、ときに剽窃まがいと批判を受けても、なぜ彼の詞と音楽は時 代もジャンルも越えて高く評価されるのか――ポピュラー音楽評論の第一人者が、数々の名曲の歴史的背景を分析、「ロック界最重 要アーティスト」の本質に迫る。

(目次)
序章 デビューから60年を過ぎて
「百万メガトンの爆弾」/フォークのプリンス/ロックへの転身/ゴスペル三部作/ピュリッツァー賞、ノーベル賞……etc.

第1章「風に吹かれて」の衝撃
いきなりの大抜擢/公民権運動/難しい言葉は出てこないが/ポピュラー音楽初の「鋭い問いかけ」etc.

第2章 政治・社会に関わる2つの重要曲
「はげしい雨が降る」/「核」との関連は否定/軍産複合体に反対する「戦争の親玉」/エド・シーランもカヴァー etc.

第3章 一つの金字塔「ライク・ア・ローリング・ストーン」
ロック史上最重要曲の一つ/あふれる批判の中で/「どんな気持ちがする?」/1965年に何が起こったかetc.
第4章 ブルース・シンガーとしてのボブ・ディラン
「朝日のあたる家」/デヴュー・アルバムの過半が黒人音楽/ジミ・ヘンドリックスの言葉etc.

第5章 フォークの父ウディ・ガスリーとの出会い
オバマ就任記念式典/「凡庸な歌はひとつもなかった」/アメリカの・ルーツ・ミュージック/ビートルズへの影響もetc.

第6章 スタンダードの巨人フランク・シナトラとの接点
評価が逆転した『セルフ・ポートレイト』/ディランの歌唱力/往年の曲の素顔/しわだらけの農夫の声etc.
第7章 「ネヴァー・エンディング・ツアー」はいつまで続く
「もうわたしの時代は終わった」/「ブルーにこんがらがって」の変遷/芸能のあり方の枠を広げるetc.

第8章 ボブ・ディランは剽窃者なのか?
先行者に対する敬意/剽窃騒動への解答/「先立つものがあったんだ」/「上を向いて歩こう」のハミングetc.

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2023年3月25日

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