書評

『レベル7 福島原発事故、隠された真実』(幻冬舎)

  • 2024/05/11
レベル7 福島原発事故、隠された真実 / 東京新聞原発事故取材班
レベル7 福島原発事故、隠された真実
  • 著者:東京新聞原発事故取材班
  • 出版社:幻冬舎
  • 装丁:単行本(365ページ)
  • 発売日:2012-03-09
  • ISBN-10:4344021444
  • ISBN-13:978-4344021440
内容紹介:
高さ15メートルの津波、大量の放射性物質漏出、全電源喪失……。すべての危機は警告され、握り潰された。震災直後から、東京電力や政府におもねることなく原発事故の真実を報じ、国民の絶大… もっと読む
高さ15メートルの津波、大量の放射性物質漏出、全電源喪失……。
すべての危機は警告され、握り潰された。

震災直後から、東京電力や政府におもねることなく原発事故の真実を報じ、
国民の絶大な支持を得た東京新聞。
本書はその東京新聞の大反響連載「レベル7」を大幅に加筆して単行本化。
第一部「福島原発の一週間」では、福島第一原発、周辺自治体、東電本店、
首相官邸の緊迫の一週間を同時進行でリアルに再現。
第二部以降では、事故直前から日本に原発が導入された1950年代にまでさかのぼり、執念の独自取材によって明らかにする。
事故は決して「想定外」ではなく、起こるべくして起きた。
原発と日本人の関係を描き切った、歴史に刻まれるべきノンフィクション。

冷静にそして忠実に

「未曾有の」という形容が、その本義においてもっともふさわしいのが、こたびの東日本大震災であったろう。就中、あの福島第一原子力発電所の事故こそは未曾有にして絶後たるべき大悲劇であった。

しかし私どもは、なによりも「失敗に学ぶ」ということが肝要であって、特に今まで原子力安全神話というものを無条件に信じ込まされていた現実こそが、じつはもっとも克服さるべき悲惨事なのであった。

私自身の立場を明確にしておけば、原発は可及的速やかに全廃するのが人として正しい道だと信ずる。なぜならあの恐るべき死の灰、すなわち放射性廃棄物を始末する方法がないからだ。そこに目をつぶって原発は安価であると強弁してきたところに、もっとも根深い病巣があったものと考えられる。

さて、この本は、その福島の原発惨事が、どのようにして発生し、どのように悪化し、さらにその淵源をどこに求むべきかという歴史的考察にまで踏み込んで考察した労作である。もと東京新聞の連載に加筆したものだが、その取材や執筆の態度は極めて公正であり、思想的に偏向することもなく、ジャーナリストの良心に従って、まさに坦々と粛々と現実に向き合っている。

この冷静で公正な態度が、実は原発問題にとっては最も大切な要諦であって、だからこそ、私どもはこの本を信じることができる。そして、それは、いままで安全神話の尻馬にのって現実を直視してこなかったという、ジャーナリストとしての痛切な自省から発している。されば、すべての議論はここから始むべく、失敗に学ぼうとせぬ「政治的判断」は則ち亡国の策というべきである。
レベル7 福島原発事故、隠された真実 / 東京新聞原発事故取材班
レベル7 福島原発事故、隠された真実
  • 著者:東京新聞原発事故取材班
  • 出版社:幻冬舎
  • 装丁:単行本(365ページ)
  • 発売日:2012-03-09
  • ISBN-10:4344021444
  • ISBN-13:978-4344021440
内容紹介:
高さ15メートルの津波、大量の放射性物質漏出、全電源喪失……。すべての危機は警告され、握り潰された。震災直後から、東京電力や政府におもねることなく原発事故の真実を報じ、国民の絶大… もっと読む
高さ15メートルの津波、大量の放射性物質漏出、全電源喪失……。
すべての危機は警告され、握り潰された。

震災直後から、東京電力や政府におもねることなく原発事故の真実を報じ、
国民の絶大な支持を得た東京新聞。
本書はその東京新聞の大反響連載「レベル7」を大幅に加筆して単行本化。
第一部「福島原発の一週間」では、福島第一原発、周辺自治体、東電本店、
首相官邸の緊迫の一週間を同時進行でリアルに再現。
第二部以降では、事故直前から日本に原発が導入された1950年代にまでさかのぼり、執念の独自取材によって明らかにする。
事故は決して「想定外」ではなく、起こるべくして起きた。
原発と日本人の関係を描き切った、歴史に刻まれるべきノンフィクション。

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