書評

『イギリスの小さな教会』(書肆侃侃房)

  • 2024/04/22
イギリスの小さな教会 / 大澤 麻衣
イギリスの小さな教会
  • 著者:大澤 麻衣
  • 出版社:書肆侃侃房
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(192ページ)
  • 発売日:2012-12-17
  • ISBN-10:4863851014
  • ISBN-13:978-4863851016
内容紹介:
50の教会。そこに物語があった。石畳の古い街並み。なだらかな丘陵。切り立つ岩壁。果てしなく続く海岸線。そのどんな景色にも調和してしまう不思議な魅力があるイギリスの教会。様々な建築… もっと読む
50の教会。
そこに物語があった。

石畳の古い街並み。なだらかな丘陵。切り立つ岩壁。果てしなく続く海岸線。そのどんな景色にも調和してしまう不思議な魅力があるイギリスの教会。様々な建築様式、素朴だけど歴史を感じさせる壁画、それらすべてに魅せられた著者が歩いて見つけ、歴史やエピソードをふんだんに散りばめた50の物語。挿絵もすべて著者が描いた。
※50の教会の所在地、連絡先、行き方付き

新たな旅への誘い

日々書斎で文献と向き合ってばかりいると、無性に旅に出たくなる。日常をうんと離れて、できたら独りの旅を。いや、旅というよりは、じっと長い休日を過してみたい。

そういう日常のなかで、このほど、うんと「目の毒・気の毒」というような素敵な本が出た。

大澤麻衣さんという、イギリス在住の年若いアーティストが、自分の足でイギリスの田園を逍遥して、各地に残る小さな教会を取材し紹介するという本である。

実際、イギリスの田園を旅すると、到るところに古くて小さくて歴史的な魅力をたっぷりと湛えた教会がある。そういう教会に入ってみると、暗くてひんやりして、独特の凝(こご)ったような空気を感じる。

筆者もおそらくこういう歴史が凝縮しているような空気感に惹かれた一人なのであろう。筆者の足跡はイギリス全土に及び、北端はスコットランドのオークニー諸島にある「イタリアン・チャペル」という異国情緒横溢する教会、西南端はコーンウォール半島の突端近くガンウォローという村にある「聖ウィンウォロー」という教会である。

本書の記述態度は観光ガイドのそれとは明らかに違っていて、いわば歴史家の目と筆に他ならぬ。

しかし、筆者の本業は画家でありデザイナーである。そこで本書に収められた美しい写真も色彩豊かな装画も、みな筆者自身の手になる。そういう意味でもユニークで、ほんとうに手間ひまのかかった、良心的な好著であり、これを読んだら、なんとしても、ぜひこういう田舎巡り教会行脚の旅に出たくなること請け合いである。かくいう私も、ああ、そんな旅に出たくなった。
イギリスの小さな教会 / 大澤 麻衣
イギリスの小さな教会
  • 著者:大澤 麻衣
  • 出版社:書肆侃侃房
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(192ページ)
  • 発売日:2012-12-17
  • ISBN-10:4863851014
  • ISBN-13:978-4863851016
内容紹介:
50の教会。そこに物語があった。石畳の古い街並み。なだらかな丘陵。切り立つ岩壁。果てしなく続く海岸線。そのどんな景色にも調和してしまう不思議な魅力があるイギリスの教会。様々な建築… もっと読む
50の教会。
そこに物語があった。

石畳の古い街並み。なだらかな丘陵。切り立つ岩壁。果てしなく続く海岸線。そのどんな景色にも調和してしまう不思議な魅力があるイギリスの教会。様々な建築様式、素朴だけど歴史を感じさせる壁画、それらすべてに魅せられた著者が歩いて見つけ、歴史やエピソードをふんだんに散りばめた50の物語。挿絵もすべて著者が描いた。
※50の教会の所在地、連絡先、行き方付き

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

初出メディア

スミセイベストブック

スミセイベストブック 2013年5月号

  • 週に1度お届けする書評ダイジェスト!
  • 「新しい書評のあり方」を探すALL REVIEWSのファンクラブ
関連記事
林 望の書評/解説/選評
ページトップへ