書評
『くそじじいとくそばばあの日本史』(ポプラ社)
また間違えて買ってしまった。『くそじじいとくそばばあのための日本史』だと早とちり。これはオレのために書かれた本だと思った。ところがよく見ると『くそじじいとくそばばあの日本史』(大塚ひかり著・ポプラ新書・946円)。日本史に登場するパワフルな老人たちのエピソードを紹介するエッセイである。でも、読んでよかった。
「くそじじいとくそばばあ」(以下「くじば」と略す)はほめ言葉。「くそ」は強調語だ。「グレート」みたいな感じか。そういえば大学で教えていた数年前、女子学生が「それって、くそかっこいいじゃないですか」と言ったのに驚いたのを思い出した。
いろんな「くじば」が出てくる。一条天皇に入内(じゅだい)して後一条・後朱雀両天皇を産んで国母となり、87歳で死ぬまで現役の政治家として君臨した藤原彰子(ふじわらのしょうし)(988~1074年)とか、81歳で政界デビューして108歳で死ぬまで幕府に絶大な影響力を及ぼした天海和尚(1536~1643年)とか。バイデンさんもびっくり! 頓知で人気の一休宗純(1394~1481年)は、77歳のとき約50歳も若い女性との愛欲に溺れ、そのさまを露骨なまでに書き記した、なんて話も。
興味深いのは、「くじば」が歴史の語り部としての役割を果たしてきたという指摘だ。平安後期の『大鏡』は古老の語りという様式を採用し、のちの『今鏡』『水鏡』『増鏡』も踏襲。戦国時代の柴田勝家は自分の最期を老女に目撃させ、後世に伝えさせた。
もっとも、権力欲を暴走させると悪い「くじば」になるから要注意だ。その代表が豊臣秀吉(1537~1598年)。晩年は妄想の果てに朝鮮を侵略し、大変な迷惑をかけた。
これから社会の高齢化は加速度的に進む。年寄りは若者に嫌われないようおとなしく、なんて言っていては生き残れない。特高顔(Ⓒ辺見庸)の首相に温情ある政治など望めやしないのだから。これからは私たちも「くじば」になろう!
枯れてなんていられないぜ。
「くそじじいとくそばばあ」(以下「くじば」と略す)はほめ言葉。「くそ」は強調語だ。「グレート」みたいな感じか。そういえば大学で教えていた数年前、女子学生が「それって、くそかっこいいじゃないですか」と言ったのに驚いたのを思い出した。
いろんな「くじば」が出てくる。一条天皇に入内(じゅだい)して後一条・後朱雀両天皇を産んで国母となり、87歳で死ぬまで現役の政治家として君臨した藤原彰子(ふじわらのしょうし)(988~1074年)とか、81歳で政界デビューして108歳で死ぬまで幕府に絶大な影響力を及ぼした天海和尚(1536~1643年)とか。バイデンさんもびっくり! 頓知で人気の一休宗純(1394~1481年)は、77歳のとき約50歳も若い女性との愛欲に溺れ、そのさまを露骨なまでに書き記した、なんて話も。
興味深いのは、「くじば」が歴史の語り部としての役割を果たしてきたという指摘だ。平安後期の『大鏡』は古老の語りという様式を採用し、のちの『今鏡』『水鏡』『増鏡』も踏襲。戦国時代の柴田勝家は自分の最期を老女に目撃させ、後世に伝えさせた。
もっとも、権力欲を暴走させると悪い「くじば」になるから要注意だ。その代表が豊臣秀吉(1537~1598年)。晩年は妄想の果てに朝鮮を侵略し、大変な迷惑をかけた。
これから社会の高齢化は加速度的に進む。年寄りは若者に嫌われないようおとなしく、なんて言っていては生き残れない。特高顔(Ⓒ辺見庸)の首相に温情ある政治など望めやしないのだから。これからは私たちも「くじば」になろう!
枯れてなんていられないぜ。
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