書評

『アンゲラ・メルケル演説選集: 私の国とはつまり何なのか』(創元社)

  • 2024/06/13
アンゲラ・メルケル演説選集: 私の国とはつまり何なのか / アンゲラ・メルケル
アンゲラ・メルケル演説選集: 私の国とはつまり何なのか
  • 著者:アンゲラ・メルケル
  • 翻訳:藤田 香織
  • 出版社:創元社
  • 装丁:単行本(80ページ)
  • 発売日:2022-08-26
  • ISBN-10:4422320327
  • ISBN-13:978-4422320328
内容紹介:
演説を通じて見える、統一ドイツの在り方ドイツ初の女性首相として2005年から16年にわたり政権を握ったアンゲラ・メルケル。旧東独出身の物理学者らしく、派手なパフォーマンスはほとんどせ… もっと読む
演説を通じて見える、統一ドイツの在り方

ドイツ初の女性首相として2005年から16年にわたり政権を握ったアンゲラ・メルケル。旧東独出身の物理学者らしく、派手なパフォーマンスはほとんどせず、事実に即した淡々とした言動が特徴的だった。
本書は、彼女の幾多の演説の中から特に印象的な3編を、旧東独の老舗出版社編集長が厳選した選集である。
日本版には豊富な訳注と解説を追加し、演説を通じて、激動の世界情勢におけるメルケル政権、そして統一ドイツの在り方を振り返る。

***

アンゲラ・メルケル(Angela Dorothea Merkel)

ドイツ第8代連邦首相(2005~2021年)。1954年、旧西ドイツ・ハンブルクで福音主義教会牧師の父と英語教師の母との間に生まれ、生後間もなく旧東ドイツに移住し、ブランデンブルク州テンプリーンで育つ。ライプツィヒ大学で物理学を学んだ後、ベルリンの科学アカデミーに勤務。1986年、博士号を取得。1989年のベルリンの壁崩壊を受けて政治の世界に足を踏み入れ、ドイツ統一直後の1990年12月の連邦議会選挙でキリスト教民主同盟(CDU)から出馬し当選。コール政権で女性・青少年相、環境・自然保護・原発保全相を歴任した後、2000年にCDU代表に就任。2005年、女性としてはドイツ初の連邦首相就任を果たす。その後、ユーロ危機、難民受け入れ、COVID-19流行など数々の難局に対応しながら4期16年にわたる長期政権を維持し、2021年12月に退任、政界からも引退した。

***

〈おもな目次〉

1 私の国とはつまり何なのか
(ドイツ統一記念日 における演説、2021年10月3日、ハレ/ザーレ にて)

2 私たちはできる!
(夏季記者会見における冒頭演説からの抜粋、2015年8月31日、ベルリンにて)


3 私の国の国是
(イスラエル国会(クネセト)における演説、2008年3月18日、エルサレムにて)


原書編集後記


解説(木戸衛一・大阪大学大学院国際公共政策研究科教授)

訳者あとがき(藤田香織)
ロシアのウクライナ侵攻とその後の各国の動きを見て、ベルリンの壁崩壊の意味を考えている時に出会った。タイトルは、メルケルドイツ首相(当時)が2021年ドイツ統一記念日に行った演説のそれである。統一がもたらした平和と自由の重要性を指摘し、多様性はその表れだと言う。統一による共属意識から変化を受け入れる姿勢と連帯感が育ったのだと語り、彼女が東側出身であるが故に無価値の荷を背負っているとか見習い中の連邦共和国人とか言われることに疑問を呈する。実はドイツでは、今も要職の多くが西側だった人で占められているようだ。演説ではこの状況に疑問を示しつつ、皆で民主主義への敬意を示し続けようと力強く語る。15年の難民受け入れのための国境開放時の会見、08年のイスラエル建国60周年にドイツ首相として初めてエルサレムで行った演説の二つもある。どちらも難しさを抱えており、すべてよしとなってはいない。しかし、どの言葉も自身のものであり心動かされる。政治家が人道的な判断や行動をするのがあたりまえという社会になってほしいものだ。
アンゲラ・メルケル演説選集: 私の国とはつまり何なのか / アンゲラ・メルケル
アンゲラ・メルケル演説選集: 私の国とはつまり何なのか
  • 著者:アンゲラ・メルケル
  • 翻訳:藤田 香織
  • 出版社:創元社
  • 装丁:単行本(80ページ)
  • 発売日:2022-08-26
  • ISBN-10:4422320327
  • ISBN-13:978-4422320328
内容紹介:
演説を通じて見える、統一ドイツの在り方ドイツ初の女性首相として2005年から16年にわたり政権を握ったアンゲラ・メルケル。旧東独出身の物理学者らしく、派手なパフォーマンスはほとんどせ… もっと読む
演説を通じて見える、統一ドイツの在り方

ドイツ初の女性首相として2005年から16年にわたり政権を握ったアンゲラ・メルケル。旧東独出身の物理学者らしく、派手なパフォーマンスはほとんどせず、事実に即した淡々とした言動が特徴的だった。
本書は、彼女の幾多の演説の中から特に印象的な3編を、旧東独の老舗出版社編集長が厳選した選集である。
日本版には豊富な訳注と解説を追加し、演説を通じて、激動の世界情勢におけるメルケル政権、そして統一ドイツの在り方を振り返る。

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アンゲラ・メルケル(Angela Dorothea Merkel)

ドイツ第8代連邦首相(2005~2021年)。1954年、旧西ドイツ・ハンブルクで福音主義教会牧師の父と英語教師の母との間に生まれ、生後間もなく旧東ドイツに移住し、ブランデンブルク州テンプリーンで育つ。ライプツィヒ大学で物理学を学んだ後、ベルリンの科学アカデミーに勤務。1986年、博士号を取得。1989年のベルリンの壁崩壊を受けて政治の世界に足を踏み入れ、ドイツ統一直後の1990年12月の連邦議会選挙でキリスト教民主同盟(CDU)から出馬し当選。コール政権で女性・青少年相、環境・自然保護・原発保全相を歴任した後、2000年にCDU代表に就任。2005年、女性としてはドイツ初の連邦首相就任を果たす。その後、ユーロ危機、難民受け入れ、COVID-19流行など数々の難局に対応しながら4期16年にわたる長期政権を維持し、2021年12月に退任、政界からも引退した。

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〈おもな目次〉

1 私の国とはつまり何なのか
(ドイツ統一記念日 における演説、2021年10月3日、ハレ/ザーレ にて)

2 私たちはできる!
(夏季記者会見における冒頭演説からの抜粋、2015年8月31日、ベルリンにて)


3 私の国の国是
(イスラエル国会(クネセト)における演説、2008年3月18日、エルサレムにて)


原書編集後記


解説(木戸衛一・大阪大学大学院国際公共政策研究科教授)

訳者あとがき(藤田香織)

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2022年10月1日

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