自由と安全。どちらも大切なのに、自由を捨てて安全を選ぶときがある。たとえばコロナ禍がそうだった。ぼくたちは行政が行動制限を命じることを望み、進んで「自粛警察」や「マスク警察」になった。感染症だけじゃない。ミサイルが飛んだ、軍事的緊張が高まったと聞くと、プライバシーさえ簡単に手放してしまう。
しかし、いま一度立ち止まって、自由と安全についてじっくり考えたい。本書は格好のガイドブックだ。政治学者が先人たちの本をひもときながら考える。取り上げるのはミルの『自由論』やホッブズの『リヴァイアサン』、ルソーの『社会契約論』など、タイトルぐらいはよく知られている古典から、フーコーの『社会は防衛しなければならない』なんてちょっとマイナーな本まで。
著者と編集者の対話がベースになっているのでわかりやすく読みやすい。それぞれの章末に記された日付は、今現在との関わりを意識させる。そう、古典は生きている。
選挙は答え合わせではないし、当選者への全権委任でもない、少数派の意見も大切にしようという著者の言葉がグッとくる。こんな時代だから自由にものを考えたい。