後書き

『イコノクリティック―審美渉猟』(北宋社)

  • 2018/01/24
イコノクリティック―審美渉猟 / 谷川 渥
イコノクリティック―審美渉猟
  • 著者:谷川 渥
  • 出版社:北宋社
  • 装丁:単行本(297ページ)
  • ISBN-10:489463032X
  • ISBN-13:978-4894630321
内容紹介:
美学と批評を架橋すること―絵画、彫刻、写真、映画、詩、小説など、多様な“美的表象”を渉猟する美学者の、アクチュアルな批評論集。美と知の地平を博捜するリヴレスク・バロック第二弾。フランス文学者・鹿島茂との“書痴”対談収録。

あとがき

はじめてのエッセー集『バロックの本箱』を出したのが一九九一年。それから十年近い時間が経過して、同じ書肆からその第二弾ともいうべき書物を上梓することになった。感慨もひとしおである。

さまざまな折に、さまざまなメディアに書いた文章を集めたものだが、「美的表象」の批判的検討、美の地平の探索という点では一貫しているつもりである。表象的なもの、図像的なものを「イコン」という語で、それらを切り取って対象化し、言語に乗せ、多少とも理論的に考察することを「クリティック」という語で受けて、本書全体を「イコノクリティック」という造語で括ってみた。「審美渉猟」は、ボードレールの美術論集の邦訳題名として用いられたことがあるが、この卓抜な表現をサブタイトルとして採用させてもらった。

本書は、郡司先生のお仕事に関してひとつのセクションを割くことができたことからも、忘れがたいものになった。個人的な思い出の大きさに対しては、あまりにも小さなメモランダムのようなものだけれども。

思い出といえば、最終セクションを構成する鹿島茂氏との第一対談の司会を務めた笠井雅洋氏も、二度と帰らぬ人となった。矢代梓のペンネームをもつ彼のまぎれもない「書痴」ぶりが、少しでも記録にとどめられているとすれば嬉しい。

「書痴」ぶりというなら、正真正銘、時代の遙か先頭を疾駆する鹿島茂氏に、二つの対談の収録を快諾していただいたことに、心から御礼申し上げたい。大学時代からの知友として、対談は自由奔放、いささかくだけたものになっているが、氏の比類のないリヴレスクなパワーゆえに、「書物の快楽」を十分に感じさせるセクションたりえているのではないかと思う。

本書の刊行が、北宋社の渡辺誠氏の熱意に支えられて実現したことはいうまでもない。考えてみれば、『バロックの本箱』で開かれた九〇年代が、本書で円環を閉じ、二〇〇〇年紀を開くことになるのも、奇しき縁ではある。そして今回もまた、土田由佳氏には実際の編集の作業でなにからなにまでお世話になった。御尽力に感謝の言葉もないほどである。

それから、この場を借りて、執筆の機会を与えて下さった各メディアの編集者、美術館の学芸員の方々にお礼を申し述べたい。

本書がまた華麗な衣裳を身にまとうことができたのは、高麗隆彦氏のお蔭である。幸せな本である。どうも有難う。

二〇〇〇年二月 著者識

バロックの本箱 / 谷川 渥
バロックの本箱
  • 著者:谷川 渥
  • 出版社:北宋社
  • 装丁:単行本(265ページ)
  • 発売日:1991-12-01
  • ISBN-10:4938620243
  • ISBN-13:978-4938620240

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イコノクリティック―審美渉猟 / 谷川 渥
イコノクリティック―審美渉猟
  • 著者:谷川 渥
  • 出版社:北宋社
  • 装丁:単行本(297ページ)
  • ISBN-10:489463032X
  • ISBN-13:978-4894630321
内容紹介:
美学と批評を架橋すること―絵画、彫刻、写真、映画、詩、小説など、多様な“美的表象”を渉猟する美学者の、アクチュアルな批評論集。美と知の地平を博捜するリヴレスク・バロック第二弾。フランス文学者・鹿島茂との“書痴”対談収録。

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