書評
『河童の三平 上 貸本まんが復刻版』(KADOKAWA)
水木しげるさんの『河童(かっぱ)の三平』貸本版の復刻本が出た(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆時期は2006年)。
昭和三十六年から月刊ペースで発刊された兎月書房版の8冊分を上下巻にまとめる形の、今回は上巻分が出たわけだ。
平成五年にも完全復刻版が出ているが、こちらは限定700部で、一般の目にはあまり触れていないと思う。
私はこの貸本向け、兎月書房版の『河童の三平』が大好き。私の選ぶ日本漫画の最高傑作である。だから少しでも多くの人にこれを見てほしいと思う。
私は貸本店で、この本に巡りあって、漫画に対する見方がガラリと変わってしまった。こんなに真剣に漫画を読んだのはこの時が初めてだった。
出会ったのは、計算すると、中学の一~二年生である。記憶ではもっと年少だった気がするのだが、それはきっと、あまりにも深く、この本が私の心の基底にくいこんでしまったからだろうと思っている。
私は小学三年生で姉を、五年生で父を病気でなくしている。以後、成人してからも、深く自分の死についてあえて考えたことがなかった、と思っていたが、この『河童の三平』を読んでいた時、知らないうちに思索していたのだったなァ、と今回はじめて気がついた。
図版は、主人公三平が、お爺ちゃんを亡くして、一人ぼっちになったシーンである(ALL REVIEWS事務局注:図版はALL REVIEWSには掲載なし)。座敷にポツンと、横になっている三平は、当時、2~3年前に家族をなくした自分そのままだ。
後に確立された、稠密(ちゅうみつ)な背景に線描の登場人物の水木スタイルとはまた違う、味わいのあるすばらしい絵だと私は思う。
昭和三十六年から月刊ペースで発刊された兎月書房版の8冊分を上下巻にまとめる形の、今回は上巻分が出たわけだ。
平成五年にも完全復刻版が出ているが、こちらは限定700部で、一般の目にはあまり触れていないと思う。
私はこの貸本向け、兎月書房版の『河童の三平』が大好き。私の選ぶ日本漫画の最高傑作である。だから少しでも多くの人にこれを見てほしいと思う。
私は貸本店で、この本に巡りあって、漫画に対する見方がガラリと変わってしまった。こんなに真剣に漫画を読んだのはこの時が初めてだった。
出会ったのは、計算すると、中学の一~二年生である。記憶ではもっと年少だった気がするのだが、それはきっと、あまりにも深く、この本が私の心の基底にくいこんでしまったからだろうと思っている。
私は小学三年生で姉を、五年生で父を病気でなくしている。以後、成人してからも、深く自分の死についてあえて考えたことがなかった、と思っていたが、この『河童の三平』を読んでいた時、知らないうちに思索していたのだったなァ、と今回はじめて気がついた。
図版は、主人公三平が、お爺ちゃんを亡くして、一人ぼっちになったシーンである(ALL REVIEWS事務局注:図版はALL REVIEWSには掲載なし)。座敷にポツンと、横になっている三平は、当時、2~3年前に家族をなくした自分そのままだ。
後に確立された、稠密(ちゅうみつ)な背景に線描の登場人物の水木スタイルとはまた違う、味わいのあるすばらしい絵だと私は思う。
朝日新聞 2006年08月27日
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