書評

『山水戀圖』(岩波書店)

  • 2020/07/30
山水戀圖 / 奥山 民枝
山水戀圖
  • 著者:奥山 民枝
  • 出版社:岩波書店
  • 装丁:単行本(72ページ)
  • 発売日:2005-09-07
  • ISBN-10:400023014X
  • ISBN-13:978-4000230148
内容紹介:
男女のエロスを超え、宇宙のすべてを1つに結ぶエロスとタナトスを情熱的な筆致で描く、究極の恋愛小説。魂の秘境にせまる壮大な絵本。
「自然にひそむ 濃厚なエロティシズムを、驚くべき想像力で描きだす 地球大の恋物語。魂の秘境にせまる 壮大な絵本だ」

と帯文で谷川俊太郎氏がほめている。賛成。これほど過不足なくこの本を表現できる人はいない。

なにしろ、一人称の俺は、北の山麓氷河を母にもつ河川系の、一支流である。

つまり主人公が「川」だ。で、物語は「川」のひとり語りで進行する。「川」が「山」に恋愛する!話なのだった。

まるで「俺が昔、夕焼けだった頃、妹は小焼けだった」みたいな話ではないか。

もちろん、そういう話ではない。ところがこれに、おどろくべきディテールを持った、まるで自然を前にするような説得力のある絵が展開すると、まさに、谷川氏のいう「魂の秘境」をかいま見る気がして、次々に頁(ページ)を繰ることになる。

文章を味わい、絵を味わうことで、さらにその体験は深まっていくようだ。自然がエロティックである。という言い方が単なるレトリックではないような気がしてくる。

自分の中に、表現したいイメージがあって、しかもそれを表現するテクニックを持っている、幸福な画家の仕事である、と私は思う。
山水戀圖 / 奥山 民枝
山水戀圖
  • 著者:奥山 民枝
  • 出版社:岩波書店
  • 装丁:単行本(72ページ)
  • 発売日:2005-09-07
  • ISBN-10:400023014X
  • ISBN-13:978-4000230148
内容紹介:
男女のエロスを超え、宇宙のすべてを1つに結ぶエロスとタナトスを情熱的な筆致で描く、究極の恋愛小説。魂の秘境にせまる壮大な絵本。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2005年09月18日

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