書評

『フレッド・アステア自伝 Steps in Time』(青土社)

  • 2022/08/01
フレッド・アステア自伝 Steps in Time / フレッド アステア
フレッド・アステア自伝 Steps in Time
  • 著者:フレッド アステア
  • 翻訳:篠儀 直子
  • 出版社:青土社
  • 装丁:単行本(446ページ)
  • 発売日:2006-10-01
  • ISBN-10:4791762983
  • ISBN-13:978-4791762989
内容紹介:
ダンサー、映画スターとしてブロードウェイとハリウッドの数多くのショウを彩ってきた優雅さの向こうに見える、ひとりの男性、芸術家の真実の姿とは。20世紀前半のエンタテインメントの世界を、情熱的に、パートナーへの感謝と親しみを込めて、本人自らの言葉で踊るように華麗に語り尽くす。

偉大なダンサーの品よい告白 

アステアは人類の歴史が生んだ最も偉大なダンサーの一人だ。バレエ好きにとってニジンスキーがそうであるように、映画ファンにとってはアステアが「最高」なのだ。とはいえ、ニジンスキーはもはや見た者がいない伝説だが、アステアは誰でも見られる現実だ。「トップ・ハット」を、「バンド・ワゴン」を、「絹の靴下」を見よう。みんなアステアが最高だと認めるだろう。

そのアステアが書いた自伝が日本語になった。読まずに死ねるか。むろん面白い挿話に事欠かない。彼のトレードマークであるあのオールバックの薄い髪がカツラだったというような話がさらりと語られる。

稀代の名コンビ、ジンジャー・ロジャーズとの「艦隊を追って」で、彼女はひどく重いビーズのドレスを着て踊った。ジンジャーの素早いターンで、数ポンドもの重さの袖がアステアの顎を直撃し、彼はグロッギーになりながら踊り続けた。画面を見ても、その痕跡もとどめないのだが。

ユーモアたっぷりに、淡々とした上品な語り口で、アメリカのショウビジネスを生き抜いた一人の男の人生が描かれる。その天然自然のエレガンスこそ、アステアのダンスの魅力の源泉でもあった。
フレッド・アステア自伝 Steps in Time / フレッド アステア
フレッド・アステア自伝 Steps in Time
  • 著者:フレッド アステア
  • 翻訳:篠儀 直子
  • 出版社:青土社
  • 装丁:単行本(446ページ)
  • 発売日:2006-10-01
  • ISBN-10:4791762983
  • ISBN-13:978-4791762989
内容紹介:
ダンサー、映画スターとしてブロードウェイとハリウッドの数多くのショウを彩ってきた優雅さの向こうに見える、ひとりの男性、芸術家の真実の姿とは。20世紀前半のエンタテインメントの世界を、情熱的に、パートナーへの感謝と親しみを込めて、本人自らの言葉で踊るように華麗に語り尽くす。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2006年11月19日

朝日新聞デジタルは朝日新聞のニュースサイトです。政治、経済、社会、国際、スポーツ、カルチャー、サイエンスなどの速報ニュースに加え、教育、医療、環境、ファッション、車などの話題や写真も。2012年にアサヒ・コムからブランド名を変更しました。

  • 週に1度お届けする書評ダイジェスト!
  • 「新しい書評のあり方」を探すALL REVIEWSのファンクラブ
関連記事
中条 省平の書評/解説/選評
ページトップへ