1935(昭和10)年、東京生れ。早稲田大学文学部卒。国立国会図書館に勤務しながら執筆活動を続け、1978年『冷蔵庫より愛をこめて』でデビュー。1979年「来訪者」で日本推理作家協会賞、短編集『ナポレオン狂』で直木賞、1995(平成7)年『新トロイア物語』で吉川英治文学賞を受賞。他に『ギリシア神話を知っていますか』『…もっと読む
- 『とける、とろける』(新潮社)阿刀田 高
女性が女性の性を描いて、少し怖い 小説って何だろう。先人たちがよい言葉を残している。「読み終えて、ここに人生があると思う。それが小説だ」あ…
書評 - 『叙情と闘争 - 辻井喬+堤清二回顧録』(中央公論新社)阿刀田 高
登場人物華やかに、文人経営者の屈折辻井喬が文人として一家をなしていることは紛れもない事実である。そして堤清二が、剛腕の政治家・堤康次郎の息…
書評 - 『狼疾正伝--中島敦の文学と生涯』(河出書房新社)阿刀田 高
存在への執着と疑いに発する文学生誕100年、早世した中島敦についての入念な評伝である。作家研究として深い(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆時期…
書評 - 『ラストラン』(徳間書店)阿刀田 高
どの一編にも微妙な韜晦、多彩な趣向の短編集 短編小説集には独特な味わいがある。つれづれの読書にふさわしい。一つを読み終え、次は ――どんな趣向…
書評 - 『アテネ 最期の輝き』(岩波書店)阿刀田 高
アレクサンドロスの陰で花開く都市 古代ギリシャの知恵は現代に直結している。そこが他の古代文明とちがう。ギリシャ古典劇は今でもそのまま公演さ…
書評 - 『本棚のスフィンクス―掟破りのミステリ・エッセイ』(論創社)阿刀田 高
トリックを明かしてこそできる批評かつてユニークな『推理小説事典』を出版してみようかと夢想したことがある。20冊限定。定価30万円。官憲に問われ…
書評 - 『波打ち際の蛍』(KADOKAWA)阿刀田 高
心のあやを文章に乗せて丁寧に紛れもない恋愛小説である。冒頭で男女の出会いが綴られ200ページを費やして恋のくさぐさと、揺れ動くヒロインの心理…
書評 - 『劇作家サルトル』(作品社)阿刀田 高
「自由の選択」思想と芝居との関係は ひどく懐かしい。 かつてJ・P・サルトルはフランスの、そしてなぜか日本でも知性のシンボルであった。いつしか…
書評 - 『シャーロック・ホームズの科学捜査を読む』(河出書房新社)阿刀田 高
「発見したぞ!」は本当だったか犯罪捜査を担当する刑事と雑談を交わしたことがある。 「皆さん、推理小説なんか読むんですか。笑ってるんでしょう…
書評 - 『ゼルダ 最後のロマンティシスト』(中央公論新社)阿刀田 高
振幅大きな人生、心のひだを追い求めゼルダ(・セイヤー)と言って、どれほどの人が知っているのだろうか。現在のアメリカで、あるいはフランスでは…
書評 - 『ウェルギリウス『アエネーイス』―神話が語るヨーロッパ世界の原点』(岩波書店)阿刀田 高
現代的意味の理解みずみずしく本書の原典『アエネーイス』は、内容の多彩さ、文学史的意味の深さのわりには知名度が低い古典ではあるまいか。テーマ…
書評 - 『松本清張への召集令状』(文藝春秋)阿刀田 高
激しい怒りをよりどころに公憤へ 松本清張は私憤をよりどころにして公憤をさぐりあて、事実を精査して、それを巧みなフィクションに替えてつづる作…
書評 - 『神々の捏造 イエスの弟をめぐる「世紀の事件」』(東京書籍)阿刀田 高
「ヤコブの骨箱」があぶり出すものイエス・キリストの兄弟にヤコブがいて、イエスの死後、使徒たちの中にあって十分に有力な地位を占めていたらしい…
書評 - 『錦』(中央公論新社)阿刀田 高
人間像を生き生きと織りなして 小説の読み始めは舟に乗るときに似ている。大きな舟ではない。猪牙(ちょき)くらいの小舟。 「船頭さん、頼むよ」 …
書評 - 『語前語後』(朝日新聞出版)阿刀田 高
“自分ノート”、卓越した知性で面白く自分史を綴ることがはやっている。いや、本当はそんなに、はやっていないのかもしれない。挑戦してみたけれど、…
書評 - 『やさしいため息』(河出書房新社)阿刀田 高
ただそれだけのことが心地よい 小説家としてデビューして間もないころ親しい編集者から「本が3万部以上売れたら気をつけてくださいね。小説が甘くな…
書評 - 『またの名をグレイス』(岩波書店)阿刀田 高
「小説っておもしろいものだな」と痛感させられる大作だ。脳みその、かけがえのない喜び、と言ってもよい。マーガレット・アトウッドはカナダを代表…
書評 - 『帰省』(文藝春秋)阿刀田 高
人柄もこぼれる小品の確かな光 タイトルにそえて“未刊行エッセイ集”とあるのを見て――大丈夫かな――と不安を抱いた。小説家には長い駆け出しの時期が…
書評 - 『三月の招待状』(集英社)阿刀田 高
辛いこともあるが最後はノホホンと 一冊の中編小説と見ることもできるが、やはり連作短編集として読むほうが適切だろう。12話からなり、一つ一つが…
書評 - 『ガリレオの苦悩』(文藝春秋)阿刀田 高
科学技術用いた新しい密室トリック 若い頃からミステリーを愛読してきた。たとえば江戸川乱歩の探偵小説。犯人が巧妙なトリックを仕かけ、名探偵が…
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