1964年、東京生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞社主催「小さな童話」大賞を受賞。89年「409ラドクリフ」でフェミナ賞。『こうばしい日々』で91年産経児童出版文化賞、92年坪田譲治文学賞。同年『きらきらひかる』で紫式部文学賞。99年『ぼくの小鳥ちゃん』で路傍の石文学賞、02年『泳ぐのに、安全でも適切でもありま…もっと読む
- 『時の旅人』(岩波書店)江國 香織
二十世紀前半のロンドンに住む少女ペネロピーが、十六世紀のダービシャーに何度も滑り込んでしまうこの物語の、ためいきがでるようなおもしろさと繊…
書評 - 『死んでから俺にはいろんなことがあった』(書肆侃侃房)江國 香織
主人公と五里霧中を進む新鮮体験とてもいきのいい小説だった。つかまえたばかりの魚みたいで、読み終っても胸の内でつぴつぴ跳ねる。語り手の「俺」…
書評 - 『悪なき殺人』(新潮社)江國 香織
他人の孤独を目撃し、深い余韻フランスの山がちな地方都市(空気はすばらしく澄んでいそうだが、かなり淋しく荒々しそうな土地)で、一人の女性が行…
書評 - 『デクリネゾン』(ホーム社)江國 香織
感情ではなく感覚を伝える凄まじさ古いものを持ちだして奇妙だと思われるかもしれないが、カポーティの『ティファニーで朝食を』とか、有島武郎の『…
書評 - 『ハムレット! ハムレット!!』(小学館)江國 香織
昭和の大作家たちの熱愛ぶり昭和のある時期の文学や演劇の関係者(あるいはその愛好者)にとって、ハムレットが悩める青年の代名詞だったらしいこと…
書評 - 『デンマークに死す』(ハーパーコリンズ・ジャパン)江國 香織
国際色豊かな経験が裏打ちひさしぶりに魅力溢(あふ)れる男性探偵主人公に出会った。かつて、探偵小説といえばハードボイルドな男性探偵が主人公だ…
書評 - 『時のかさなり』(新潮社)江國 香織
個人の歴史の結果としての家族優れた小説においてなら、子供というのはつねにおもしろい素材だ。なぜなら子供は、たとえどんなに大人びた子供であっ…
書評 - 『役にたたない日々』(朝日新聞出版)江國 香織
強烈なもの、唯一無二のものタイトルに「日々」とあるとおり、これは日記のかたちで書かれたエッセイ集で、二〇〇三年の秋から二〇〇八年の冬までの…
書評 - 『夜はやさし』(作品社)江國 香織
とどめおけないものを、とどめた小説厚ぼったい本である。やさしく繊細な小説であり、きわめて美しい小説でもある。完成されていると私は思う。美し…
書評 - 『昔のミセス』(幻戯書房)江國 香織
官能的なまでに五感の記憶を揺さぶるなんていいタイトルだろう。小さい声で、含み笑いしながら、こっそり発音したい心愉(たの)しいタイトル。 こ…
書評 - 『青い城』(角川グループパブリッシング)江國 香織
絶望的でロマンティックな独身女性の決意読みやすい文章で書かれ、わかりやすい出来事が幸不幸とりまぜて次々起こり、でも最後はきっとハッピーエン…
書評 - 『雉猫心中』(新潮社)江國 香織
隠された毒、つねに蠢いている何か男の名前は晩鳥陸朗といい、女の名前は大貫知子という。男には妻と娘が、女には夫がいる。東京のはずれの、畑やら…
書評 - 『最終目的地』(新潮社)江國 香織
それぞれの過去とふいに現れる未来大学院生であり、教員でもある一人のアメリカ人青年が、三人の人物に宛(あ)てて書いた一通の手紙から、この小説…
書評 - 『ヴァレンタインズ』(白水社)江國 香織
何かが決定的にそこなわれる瞬間ひっそりして端正な、非常に現代的な短編集だ。抑制のきいた文章は清潔で、小ぶりできれいな、つめたいナイフを思わ…
書評 - 『ティンカーズ』(白水社)江國 香織
世界そのものと混ざり合う、男たちの生と死「死ぬ八日まえから、ジョージ・ワシントン・クロスビーは幻覚を起こすようになった」というのがこの小説…
書評 - 『東京自叙伝』(集英社)江國 香織
集団的無意識の「私」が語る東京なんというか、もう、こてんぱんにやられました。ここで最初に言いたいことは、ともかくおもしろい!ということ。脳…
書評 - 『沈黙を破る者』(河出書房新社)江國 香織
厚みある人物描写と緊密なミステリーある男性医師が父親の遺品のなかに、知らない人間の身分証明書を見つける。女性の肖像写真も。そこから、この上…
書評 - 『アメリカの鳥』(河出書房新社)江國 香織
事象のかけらをちりばめた輝かしい物語これは、教養というものがごくあたり前に必要で大切だった、時と場所と人々について書かれた、おもしろい、あ…
書評 - 『聖家族』(新潮社)江國 香織
圧倒的に強い、個を越えたものたちまず、冒頭。物語が立ちあがる。この上もなくシンプルに。なにしろ最初の章(というか、1、と数字で区切られた空…
書評 - 『ザ・ドロップ』(早川書房)江國 香織
人々の生、見せつけこの小説は、ある冬の夜の、一軒の酒場から始まる。閉店間際で、客は二組しかいない。老人ホームを抜けだして飲みに来ている老女…
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