1954年東京生まれ。東京大学卒、ハーバード大学スラヴ語学文学科に学ぶ。2020年7月現在、名古屋外国語大副学長。2002年、『徹夜の塊 亡命文学論』(作品社)でサントリー学芸賞、2004年、『ユートピア文学論』(作品社)で読売文学賞評論・伝記賞を受賞。著書に『屋根の上のバイリンガル』(白水社)、『ユートピアへの手…もっと読む
- 『ロシア文学の教室』(文藝春秋)沼野 充義
作品を「体験」して生きてゆく読書著者は最近活躍が目覚ましい新世代のロシア文学者。本書は斬新なロシア文学入門書であると同時に、さわやかな学園…
書評 - 『ヴァイゼル・ダヴィデク』(松籟社)沼野 充義
占領、戦争、破壊の記憶 3少年が見たのは一二歳前後の少年三人が過ごした、ある夏休みの物語。舞台はポーランド北部、バルト海に面した港町グダンス…
書評 - 『理不尽ゲーム』(集英社)沼野 充義
時代と文学の奇跡的な共振小説の舞台は、ベラルーシの首都ミンスク、時はこの国が旧ソ連から分離独立してから八年も経っていない一九九九年。著者は…
書評 - 『埃だらけのすももを売ればよい ロシア銀の時代の女性詩人たち』(書肆侃侃房)沼野 充義
ロシアでは、十九世紀末から二十世紀初頭を特に「銀の時代」と呼ぶ。優れた文学者や芸術家が続々と現れたからだ。この時期には、女性たちも、目覚ま…
書評 - 『ナターシャの踊り:ロシア文化史』(白水社)沼野 充義
千ページ 近代ロシアの一大文化絵巻二世紀半にわたる、近代ロシアの文化の歴史を魅力的に語った本である。厳密に時系列にそって重要な項目を網羅し…
書評 - 『レディ・ムラサキのティーパーティ らせん訳「源氏物語」』(講談社)沼野 充義
時空超え世界が響きかわす創作的翻訳書名の「レディ・ムラサキ」は紫式部のこと。つまり本書は『源氏物語』をめぐる本なのだが、あまたある源氏関係…
書評 - 『ステパンチコヴォ村とその住人たち』(光文社)沼野 充義
ユーモアの限度超えた陰惨さ、真骨頂ロシアの文豪ドストエフスキーといえば、『罪と罰』や『カラマーゾフの兄弟』といった後期の大長編が圧倒的に有…
書評 - 『戦争語彙集』(岩波書店)沼野 充義
言葉の意味をも変える異常事態二〇二二年二月にロシアによる侵略戦争が始まると、無数の人々がウクライナ各地から戦火を逃れ命からがら西部の街リヴ…
書評 - 『完全版 チェルノブイリの祈り――未来の物語』(岩波書店)沼野 充義
凄惨な愛と国家の論理一九八六年四月、ウクライナのチェルノブイリ原発で前代未聞の事故が起こった。本書はその大惨事を経験し、苦しんだ人たちへの…
書評 - 『シェフチェンコ詩集』(岩波書店)沼野 充義
ウクライナの国民詩人シェフチェンコ(一八一四―六一)の詩集である。シェフチェンコはウクライナで農奴の身分に生まれたが、その才能を認める人々の…
書評 - 『チェヴェングール』(作品社)沼野 充義
言語の可能性を酷使した最先端の実験現代ロシア小説の「大発見」と言えるものが、二つある。どちらもスターリン時代に書かれながら、生前は出版でき…
書評 - 『カティンの森のヤニナ: 独ソ戦の闇に消えた女性飛行士』(河出書房新社)沼野 充義
唯一処刑された女性、足跡追う壮大な旅「カティンの森」とは、ロシアの地方都市スモレンスク近郊の森だが、第二次世界大戦中、ここで前代未聞の大虐…
書評 - 『首相が撃たれた日に』(河出書房新社)沼野 充義
「良識の限界」新文学誕生の予感ウズィ・ヴァイルは一九六四年生まれのイスラエルの作家。ポストモダン世代の人気作家という。本書は短編や、コラム…
書評 - 『サバキスタン 1』(トゥーヴァージンズ)沼野 充義
ロシア人が発信、悪夢のパロディーロシア出身の若手二人組ビタリー・テルレツキー(レニングラード生まれ)とカティア(シベリア生まれ)による、架…
書評 - 『ハルムスの世界』(白水社)沼野 充義
理知のむこうを探求する試みソ連初期のダニイル・ハルムスという奇妙な作家の作品集である。二〇一〇年に刊行された本の増補改訂版。ハルムスはもと…
書評 - 『大泉黒石: わが故郷は世界文学』(岩波書店)沼野 充義
時代に早すぎた異能の人、本邦初評伝大泉黒石(こくせき)(1893-1957)といっても、いまではどれほどの読者が知っているだろうか。本書の著者が言…
書評 - 『言語学バーリ・トゥード: Round 1 AIは「絶対に押すなよ」を理解できるか』(東京大学出版会)沼野 充義
熱湯風呂もユーミンも、日常言語の謎川添愛の本はなぜ面白いのだろうか? 第一に、多くの人が(ここで「人は皆」などと過剰な一般化をしてはいけな…
書評 - 『ぼくがアメリカ人をやめたワケ』(集英社インターナショナル)沼野 充義
日本文化への深い愛アメリカに根をおろしたユダヤ系の両親のもとに生まれ、何一つ不自由なく育ち、抜群に頭がよく健康で、女の子にもさぞ持てたに違…
書評 - 『現代の英雄』(光文社)沼野 充義
よみがえったロシアの原石最近めざましいロシア文学の「古典新訳」の機運の中で、一人言わば取り残されたようになっていた文学者がいる。レールモン…
書評 - 『カフェ・シェヘラザード』(共和国)沼野 充義
虐殺を生き延びた運命が集うメルボルン郊外に「シェヘラザード」という名前のカフェがある。そこに集うユダヤ移民の古老たちが、いかに壮絶な経験を…
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