1924年、東京・月島生まれ。詩人、文芸批評家、思想家。東京工業大学工学部電気化学科卒業後、工場に勤務しながら詩作や評論活動をつづける。日本の戦後思想に大きな影響を与え「戦後思想界の巨人」と呼ばれる。2012年3月16日逝去。著書に『共同幻想論』『言語にとって美とはなにか』『ハイ・イメージ論』『カール・マルク…もっと読む
- 『オランダ構造人類学』(せりか書房)吉本 隆明
『オランダ構造人類学』というこの本の名前には、ふたつの意味がこめられているとおもう。ひとつは収められた論文の舞台野(フィールド)が、旧オラ…
書評 - 『ニワトリの歯―進化論の新地平〈上〉』(早川書房)吉本 隆明
この本の標題になっている「ニワトリの歯」のところから著者が生物の遺伝と進化にもっている理念の特徴を説明してみる。とりもなおさずそれはこの本…
書評 - 『うわさ―もっとも古いメディア』(法政大学出版局)吉本 隆明
この本に記されている「うわさ」の定義をいくつか並べてみたい。もちろん書評子が噛みくだいたうえのことでだ。するとこの本がどこまで手が届き、ど…
書評 - 『トロツキー自伝〈1〉』(筑摩書房)吉本 隆明
トロツキーの自伝は、ユングのそれとならんで、わたしが読んだ自伝では、ずばぬけていいものだ。自伝が文学作品として自己主張できるとして、このふ…
書評 - 『ニューロン人間』(みすず書房)吉本 隆明
この本の標題になっている『ニューロン人間』というのは、中身にそいながらいえば、人間は、身体を動かす行動も、感覚やこころの動きも、大脳皮質の…
書評 - 『意識のスペクトル 1 意識の進化』(春秋社)吉本 隆明
この本にはふたつの特徴があるとおもう。ひとつは嵌め込み法ともいうべき方法が使われて、およそ人の心をもとに世界を見る唯心的な考え方のすべてを…
書評 - 『チャーチルの昼寝―人間の体内時計の探求』(青土社)吉本 隆明
哲学はまず何よりも、ベルグソンのように人間の意識とその直接の与件である内的な時間とのかかわる場所だとみなせば、この本は反哲学の場所をひろげ…
書評 - 『空間の経験―身体から都市へ』(筑摩書房)吉本 隆明
この本のいちばん根っこにある着想は、空間(スペース)と場所(プレイス)との違いということだ。著書の名前からして東洋風だから、そんな言い方を…
書評 - 『邪な人々の昔の道』(法政大学出版局)吉本 隆明
やかましいことにいっさい触れないでいえば、旧約聖書のいちばんのかなめは、ヨブ記と詩篇にあるといえよう。そしてもっと勝手なことを言ってみれば…
書評 - 『変容の象徴―精神分裂病の前駆症状〈上〉』(筑摩書房)吉本 隆明
この本は、ユングの学説が、フロイトの心理学の胎内で育ちながら、これから分娩による分割を受けて独自の存在の姿を現わそうとしている胎動を示す、…
書評 - 『精神医学は対人関係論である』(みすず書房)吉本 隆明
この本を読んで確実にどんな読者も得をすることがある。それはいままで分裂病についてもっていた読者の概念に確実に何かを加えられるからだ。加えら…
書評 - 『アメリカン・マインドの終焉――文化と教育の危機 【新装版】』(みすず書房)吉本 隆明
この本をいったいなんと呼んだらいいか、日本の分類でいえば教育関係論とか教育思想の本ということになるとおもう。旧い正統的な教養をもち、またそ…
書評 - 『人格との関係からみたパラノイア性精神病』(朝日出版社)吉本 隆明
いま比喩的にいってみると、フロイトのパラノイアの概念は映像的だ。クレッチマーのパラノイアの概念は言語的だ。ラカンのパラノイア概念はどうだろ…
書評 - 『ジェンダー 女と男の世界』(岩波書店)吉本 隆明
この本を解くキイ・ワードは、題名にもなっている〈ジェンダー〉という言葉だ。イリイチはこの言葉に、過剰な概念やら微妙な思い入れやら、思想的な…
書評 - 『混沌からの秩序』(みすず書房)吉本 隆明
まず著者たちの問題の立て方の中心になっている考え方をつかまえておきたい。眼にみえる物体(たとえば金貨)、そういう物体の質をきめている物質(…
書評 - 『近代の哲学的ディスクルス I』(岩波書店)吉本 隆明
〈近代〉とよばれている時代がはじめて人びとの眼のまえにあらわれたとき、哲学者たちが、どんなふうに驚き、到来した時代をどうつかまえようともが…
書評 - 『ある神経病者の回想録』(講談社)吉本 隆明
訳されて本になったこの高名な文献を、何の先入見もなく読んでみて、どんな印象をもつか。これがいちばんのモチーフだ。すると著者は特定の事物や事…
書評 - 『精神の生態学』(新思索社)吉本 隆明
射撃場があって、向うには同心円を描いたマトがあり、真ん中にあたれば五点、いちばん外側にあたれば一点になっている。こちらから狙ってできるかぎ…
書評 - 『見えるものと見えないもの――付・研究ノート 【新装版】』(みすず書房)吉本 隆明
この本はメルロ=ポンティの最後の著作のひとつになるはずの草稿をまとめたものだ。『知覚の現象学』からはじまったかれの知覚論が、とうとうここまで…
書評 - 『意識の起源史』(紀伊國屋書店)吉本 隆明
この本はユングの心理学を深層に向け、どこまでも忠実に掘りさげていって、それを神話の解釈の側からと、個人の乳胎児からの発達心理の側からと、強…
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