1945年和歌山県生まれ。1990年「村の名前」で芥川龍之介賞、1999年『翔べ麒麟』で読売文学賞、2000年『遊動亭円木』で谷崎潤一郎賞、2005年『枯葉の中の青い炎』で川端康成文学賞、2011年『闇の奥』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。地の作品に『許されざる者』、『韃靼の馬』、『冬の旅』、『寂しい丘で狩りをする』など。もっと読む
- 『新装版 青い壺』(文藝春秋)辻原 登
新式の『女の一生」現に生きている人たちを、「小説の中に」呼び入れて、そのまま「小説の中で」生活させる。たまにはそんな工夫の小説を読んでみた…
書評 - 『片意地へんくつ一本気: 下田うなぎ屋風流噺』(文藝春秋)辻原 登
片意地へんくつ一本気客の顔を見てからうなぎを裂きはじめるという、いまどき珍しくいこじな仕事をしているうなぎ屋が主人公。題して『片意地へんく…
書評 - 『スポーツマン一刀斎』(講談社)辻原 登
バットをめぐる達人小説ミスターが声をふりしぼっていったようには巨人軍が不滅かどうか知らないが、いまのところは生き残っている。昭和三十年とい…
書評 - 『死神とのインタヴュー: 短篇集』(岩波書店)辻原 登
世界を語りつくせ三月十日、といわれても、ピンとこない東京っ子が大半になった。一九四五年三月十日、米軍の大空襲で東京の下町は壊滅した。五月に…
書評 - 『タイタニックは沈められた』(集英社)辻原 登
タイタニック伝説一九一二年四月、イギリスの豪華客船が処女航海でアメリカに向かう途中、氷山に衝突した。乗っていた二千二百人の三分の二、千五百…
書評 - 『おまんが紅,接木の台,雪女』(講談社)辻原 登
素直に読ませるという技巧てっきり女性と思い込んでいた作家がふたりいる。ひとりは近松秋江(しゅうこう)。これを僕は近松秋江(あきえ)と読んで…
書評 - 『彩雲: 青春戦記』(文藝春秋)辻原 登
四十五年という年月今回は、忘れられかけようとしている、僕らの国が戦った戦争のおさらい。五十二年前の昭和十九年から二十年にかけては、総力戦の…
書評 - 『桧原村紀聞: その風土と人間』(平凡社)辻原 登
遠き村、近き村数馬、川乗はまあ読めるとして、笛吹、人里というのはどうだろうか。いずれも東京都西多摩郡檜原村にある地名で、ウズシキ、ヘンボリ…
書評 - 『帰っていいのよ、今夜も: 新・愛人時代』(朝日新聞出版)辻原 登
右往左往する男たち読んでいてやたらうなずいたりほくそ笑んだりしてしまう本がある。そのての本が、というより読書が、よい読書か悪い読書かはさて…
書評 - 『樹の上の草魚』(講談社)辻原 登
タブー菌と恋愛小説恋は障害を食って拡大再生産される。読者はいつも恋愛小説に飢えているのに、それがなかなか供給されない。供給側(小説家)にも…
書評 - 『瑠璃菊の女: 旗本絵師描留め帳』(ベネッセコーポレーション)辻原 登
元祿捕物帳久しぶりに捕物帳を読んだ。それも最新の捕物帳だ。女流、小笠原京の『瑠璃菊(るりぎく)の女』。これは『旗本絵師描留(えがきと)め帳…
書評 - 『ヴィヴィアン・リー』(文藝春秋)辻原 登
たぐいまれな美女の灰『風と共に去りぬ』は、映画も原作もずっと縁がなかった。あれは七十ミリ版が封切りされたころだったか、原題は、風に散った、…
書評 - 『ときにはハリウッドの陽を浴びて: 作家たちのハリウッドでの日々』(研究社)辻原 登
ときには映画の光を浴びて映画はとにかく光なのだ。電気の強烈な光源から発せられた光(と影)を放射線のように浴びて、頭のいかれてしまった少年少…
書評 - 『真説・鉄仮面』(講談社)辻原 登
歴史のおぞましさ久生十蘭の『真説・鉄仮面』がこんなにいい小説だとは知らなかった。いまのいままで読んでいなかったことを後悔しているくらいだ。…
書評 - 『白昼堂々』(講談社)辻原 登
違法行為をしゃれのめす昭和三十四年、というといまから三十七年前、北九州からはるばる上京した炭鉱出身の万引団が日本橋三越で犯行中に一斉検挙さ…
書評 - 『深沢七郎集〈第2巻〉』(筑摩書房)辻原 登
しようがねえよ、その通りなんだからひさしぶりに深沢七郎を読む。長篇小説『千秋楽』。妙に感心した記憶が残っているだけで、筋も何も覚えていなか…
書評 - 『アメリア・イヤハート最後の飛行: 世界一周に隠されたスパイ計画』(新潮社)辻原 登
空に消える最高の死に方とはどんな死に方だろうか。意外なのは、こういうことを真剣に考えたのは、子供の頃とか、生命力旺盛な思春期、青年期だった…
書評 - 『阿片茶』(集英社)辻原 登
ワインと阿片茶最近、中国でまた阿片が復活してすごいみたいだ。事実、僕の知っている中国人青年も、やってるよ、とこともなげに答えた。僕は吸った…
書評 - 『一局の将棋一回の人生』(新潮社)辻原 登
マジック・ミラーを通してみる棋界羽生(はぶ)は初挑戦であっさり名人になる、と十年前にはっきり書いた人がいる。羽生善治(よしはる)が十四歳で…
書評 - 『人魚を見た人―気まぐれ美術館』(新潮社)辻原 登
昭和という時代の描いた風紋急ぎの捜しものをしているときに、ふだんは忘れていた本をふと目にしてつい読みふけってしまう。べつにそういう時と限る…
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