1945年和歌山県生まれ。1990年「村の名前」で芥川龍之介賞、1999年『翔べ麒麟』で読売文学賞、2000年『遊動亭円木』で谷崎潤一郎賞、2005年『枯葉の中の青い炎』で川端康成文学賞、2011年『闇の奥』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。地の作品に『許されざる者』、『韃靼の馬』、『冬の旅』、『寂しい丘で狩りをする』など。もっと読む
- 『小泉八雲集』(新潮社)辻原 登
きっともう一度会えるラフカディオ・ハーンは一八五〇年ギリシャのサンタ・モウラ島に生まれ、一九〇四年東京都新宿区市ヶ谷富久町で小泉八雲として…
書評 - 『玄鳥』(文藝春秋)辻原 登
二度と帰らない「むかし」藤沢周平の短篇「玄鳥」を読む。路(みち)という若い武家の奥方がいる。兄が夭逝して、彼女が婿をとった。この婿が武士官…
書評 - 『舞姫』(新潮社)辻原 登
みんな少しずつ悲しい人間わざとは思えない跳躍で世界を驚かせながら、動乱の世に処することができずに狂死した天才バレエ・ダンサー、ニジンスキー…
書評 - 『オーソン・ウェルズ偽自伝』(文藝春秋)辻原 登
女優と暮らす夢一人の映画狂の少年がいて、生まれ育った地方都市にあった五つの映画館に昭和二十五年ごろから三十四年にかけて、掛かったすべての映…
書評 - 『犬―他一篇』(岩波書店)辻原 登
嫉妬と獣欲の物語一冊の本について、もしそれを正確に本の終わりからはじめへと要領よくたどるなら、これにまさる評はないのでは、と考えている。た…
書評 - 『雨の中の蜜蜂』(彩流社)辻原 登
本物の雨に濡れながらガンダラという土地をごぞんじ?仏教美術のメッカ、ガンダーラではなく、ポルトガル中部の大西洋寄りにひろがる一帯の荒地を指…
書評 - 『メグレ罠を張る』(早川書房)辻原 登
探偵の役割パリで六ヵ月の間に五人の女が一人の殺人鬼の餌食になった。奇妙なことは、パリに二十もある区のうちでたった一つの区、モンマルトル区の…
書評 - 『忘れられた帝国』(毎日新聞社)辻原 登
物の怪の語り一昨年の春、渋谷のジァン・ジァンで、奥泉光と島田雅彦の肝いりで小説朗読の会があった(ALLREVIEWS事務局注:本書評執筆年は1996年頃…
書評 - 『夕べの雲』(講談社)辻原 登
丘の上の家族誌大浦家は、東京から郊外の多摩丘陵のひとつである丘の上に家を建てて引っ越してきた。何しろ新しい家は丘の頂上にあるので、見晴らし…
書評 - 『中国の地の底で』(朝日新聞)辻原 登
投函されなかった手紙映画「古井戸」の原作者鄭義(ていぎ)の『中国の地の底で』は次のような妻への呼びかけではじまる。「愛しい明(ミン)、苦…
書評 - 『死者の書』(東京創元社)辻原 登
神と父親をめぐって早死にした父親を持つ息子の切ない夢に、いつか父親が生き返って、息子の困っているところを助けにやってくる、というのがある。…
書評 - 『光琳の櫛』(新潮社)辻原 登
黒髪のゆくすえ古美術品に魅入られた収集家を主人公にした小説は読みごたえがあるはずと思うのに、これという作品にめぐりあえない。運がないのか、…
書評 - 『モネが創った庭』(日経BPマーケティング(日本経済新聞出版)辻原 登
モネが創った庭イングリッシュ・ガーデンが大はやりらしい。この間まで盆栽や山野草がずらりと並んでいたデパートの屋上には、イギリスからの園芸用…
書評 - 『殺人全書』(光文社)辻原 登
山の中の殺人美濃の山奥で、炭焼きの男が貰い子の娘と実の男の子を斧で切り殺した。炭が売れず、その日も里へ米を都合しにおりたが甲斐なく、飢えき…
書評 - 『南の島に雪が降る』(筑摩書房)辻原 登
人はなぜ劇場を必要とするかごく最近、ある一冊の本にまつわる二つの出来事、というほど大げさなことでもないが、立て続けに出くわして、ちょっとい…
書評 - 『秋のホテル』(晶文社)辻原 登
兎と亀の恋物語「本を読むのは亀。兎には本なんか読んでる暇はないのよ。勝つのに忙しくて」ここでの本とは本一般ではなく、女性用のロマンスものの…
書評 - 『歩哨の眼について』(筑摩書房)辻原 登
幽霊の出る風景前にこの欄で、少年時代僕は川釣り海釣り絶好の環境に生まれ育ったにもかかわらず、一匹も魚を釣りあげたことのないさびしさについて…
書評 - 『夜の蝉』(東京創元社)辻原 登
チャーミングな女子大生小説の主人公には深い情熱と知性、要するに「性格」が必要だ。その最たるものは『赤と黒』のジュリアン・ソレルだろう。とこ…
書評 - 『イワナの夏』(筑摩書房)辻原 登
紀伊半島の南端近く、切目(きりめ)川が平野の北側を真西に流れ、海をつい目と鼻の先にして急にいやいやするみたいに直角にカーブを切ると、湾沿い…
書評 - 『薔薇色のゴリラ―名作シャンソン百花譜』(北沢図書出版)辻原 登
街にはシャンソンが流れていた御茶ノ水の学生街がいちばん輝いてみえたのは、東京オリンピックの喧騒が去った直後の昭和四十年代の前半だったような…
書評