1961年生まれ。ライター、ブックレビュアー。「週刊新潮」「中日新聞」「DIME」などで書評を連載。著書は『そんなに読んで、どうするの?』『どれだけ読めば、気がすむの?』(以上アスペクト)、『文学賞メッタ斬り』『百年の誤読』(以上、共著、ちくま文庫)、『勝てる読書』(河出書房新書)、『読まずに小説書けます…もっと読む
- 『僕はマゼランと旅した』(白水社)豊崎 由美
いろんな声の持ち主がいる。一心に耳をすまさないと聞こえないくらい小さな声。陽気で明るいはっきりした声。耳障りなのに、どこか心惹かれるだみ声…
書評 - 『時評書評: 忖度なしのブックガイド』(教育評論社)豊崎 由美
紙の媒体に書評を寄稿するだけだったわたしが、ウェブニュースメディアの「QJ Web(クイック・ジャパンウェブ)」で月1回の連載を持ったのは2020年…
後書き - 『琥珀捕り』(東京創元社)豊崎 由美
凄い本読んじゃった。キアラン・カーソンの『琥珀捕り』。A~Zまでを頭文字にとったタイトルからなる全二十六章で構成されていて、その中身はといえ…
書評 - 『その名にちなんで』(新潮社)豊崎 由美
「やあ、ゴーゴリ」と小さく呼びかけながら、いばりくさった顔で産着にくるまれている息子をのぞき込む。「ゴーゴリ」と、もう一度口にする。いい感…
書評 - 『シェル・コレクター』(新潮社)豊崎 由美
ここには、盲目の老貝類学者がいる。死にゆくものの魂が最後に思い浮かべる光景を感受できる女性がいる。フライ・フィッシングを通じて成長する十四…
書評 - 『すべて真夜中の恋人たち』(講談社)豊崎 由美
帯には〈孤独な魂がふれあったとき、切なさが生まれた。その哀しみはやがて、かけがえのない光となる。〉とあるけれど、そんな美しい文言で言い尽く…
書評 - 『直筆商の哀しみ』(新潮社)豊崎 由美
わたしは哀しい。まさに、“売文商”の哀しみ。というのも、新人のものとは思えぬ傑作として、本国イギリスのみならず国際的にも高い評価を受けたゼイ…
書評 - 『風味絶佳』(文藝春秋)豊崎 由美
『ベッドタイムアイズ』で、いろんな意味衝撃的なデビューを果たしたのが一九八五年。作品の内容とはなんの関係もない、黒人と同棲してるだの、ホス…
書評 - 『エリザベス・コステロ』(早川書房)豊崎 由美
デイヴィッド・ロッジ『小説の技巧』(白水社)、イタロ・カルヴィーノ『カルヴィーノの文学講義』(朝日新聞社)、バルガス=リョサ『若い小説家に宛…
書評 - 『イッツ・オンリー・トーク』(文藝春秋)豊崎 由美
語り手は新聞社で働いていたものの精神に失調をきたし、今は売れない絵を描いて貯金を切り崩す生活を送っている三〇代の〈私〉。物語は早朝の蒲田駅…
書評 - 『一億三千万人のための小説教室』(岩波書店)豊崎 由美
昔は新書といえば、硬めの内容の本が多かったものだけど、“新書ブーム”の今、その事情がちょっと変わってきています(ALL REVIEWS事務局注:本書評執…
書評 - 『バディ・ボールデンを覚えているか』(新潮社)豊崎 由美
マイケル・オンダーチェを知っているか――。四十三年スリランカ生まれ。五十三年のイギリス移住を経て、五十九年にカナダへ。それらの作品の全てを母…
書評 - 『犯罪』(東京創元社)豊崎 由美
女を見る目がなかっただけじゃないか。フェーナー氏のことを、そう単純に片づけてしまえる人は幸せだ。フェーナー氏は二十四歳の若き医師。二度しか…
書評 - 『ギンイロノウタ』(新潮社)豊崎 由美
絲山秋子をして「紙くず」とまで言わしめるような小説を書いてしまった作家。それが村田沙耶香なんであります。あれは「群像」における合評の席のこ…
書評 - 『透明な対象』(国書刊行会)豊崎 由美
ある仕事を通じて、二十世紀の名作を読み直しているのだけれど、先入観を持たずに接すれば、文豪の作品もまた非常に近しいものとして気軽に楽しめる…
書評 - 『巡礼』(新潮社)豊崎 由美
橋本治の頭の中を覗いてみたい。四六時中何か考えていて、少しでも「?」ときたら、そのことについて何らかの「!」を導き出すまでは考えるのを止め…
書評 - 『真夜中に海がやってきた』(筑摩書房)豊崎 由美
優れたシリアス・ノベルの書き手は予言者を兼ねることがある。彼らは今ここにある危機ではなく、半歩先にある陥穽(かんせい)を予言し、読者に覚醒…
書評 - 『夏化粧』(KADOKAWA)豊崎 由美
「時速一六五kmの剛速球をバックネットにのめり込ませたい」去年インタビューした際に、三十一歳だった池上永一さんが口にした言葉である(ALL REVIE…
書評 - 『子ども諸君』(白水社)豊崎 由美
口の中がねばねばして息が臭い。頭が重くて目を開けるのにもひと苦労。身体はどんより重たくて、気分はもう最悪――。大人の肉体ってのは、実に不愉快…
書評 - 『すべての美しい馬』(早川書房)豊崎 由美
焚き火、ハモニカの音色、夜風にのって届くコヨーテの遠吠え、コーヒーの入った錫(すず)のカップを片手に寡黙な男たち、そしてかたわらの木立には…
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