
1964年、岐阜県生まれ。作家、仏文学者。現在、早稲田大学文学学術院教授。主な著書として、『郊外へ』『おぱらばん』『熊の敷石』『雪沼とその周辺』『未見坂』『河岸忘日抄』『めぐらし屋』『なずな』『燃焼のための習作』『その姿の消し方』、書評・批評集として、『書かれる手』『本の音』『彼女のいる背表紙』『余り…もっと読む
- 『帰る家もなく』(ボーダーインク)堀江 敏幸
出会いのなかに帰る家がしんみりしたあとは、ほがらかに。明るく振る舞ったあとは少し真面目に。まっすぐいきすぎたあとは、ユーモアと笑いをまじえ…
書評 - 『作家の手紙をのぞき読む』(講談社)堀江 敏幸
わき道にひろがる自伝芸談とは、通常、芸能および芸道の秘訣や苦労話を意味するのだろうが、芸をなす人間にとどまらず、もう少し広い範囲を視野に入…
書評 - 『イタリア・トスカーナに暮らして』(白水社)堀江 敏幸
シルヴァーナの料理と生活イタリアはトスカーナ地方の人々と食材に惚れ込み、ついには夫とふたりで田舎家の住人となってしまった英国人エリザベス・…
書評 - 『ユリシーズの涙』(みすず書房)堀江 敏幸
犬の悲しみに同化する断章群ロジェ・グルニエは、猫派の人々に対抗するそぶりも見せずに、淡々と犬の悲しみを顕揚する。この小さな一書に盛られた文…
書評 - 『I was born―ソウル・パリ・東京』(松柏社)堀江 敏幸
小さな差異差異は小さければ小さいほどわかりにくい。明確に説明することはできないけれど確固としてある、かすかな皮膚の痛みにも似た感覚。しかし…
書評 - 『モロッコ流謫』(筑摩書房)堀江 敏幸
街から邑へ一九八七年春から翌年の春までの一年間、ニューヨークに滞在していた四方田犬彦がもっとも愛した場所のひとつに、聖マルクス書店がある。…
書評 - 『わたしたちが孤児だったころ』(早川書房)堀江 敏幸
孤独な探偵が見出した「いま」カズオ・イシグロの語り手は、人生を変えるかもしれない重要な岐路で、未来よりも過去を選択する。それがかならずしも…
書評 - 『書斎のトリコロール―世紀末フランス小説を読む』(自由國民社)堀江 敏幸
躍動する読書、強固な批評一九八二年から一九九三年まで書き継がれた芳川泰久による批評が、『書斎のトリコロール』と題されて重厚な一書にまとめら…
書評 - 『静寂から音楽が生まれる』(春秋社)堀江 敏幸
現在進行形の奇跡を生むものハンガリー出身のピアニスト、アンドラーシュ・シフの長大なインタビューとエッセイを二部構成で収める本書は、話し言葉…
書評 - 『投書狂グレアム・グリーン』(晶文社)堀江 敏幸
投書のなかの孤独物書きと呼ばれる人々は、日々の生活の資を、基本的に原稿料と印税でまかなっている。もっとも、印税で暮らしが成り立つのはほんの…
書評 - 『音沙汰 一の糸』(朝日新聞社)堀江 敏幸
言葉の宿り木それにしても『音沙汰』とは、なんと淡泊で心地よい書名だろう。前著『まだら文』(新潮社)とおなじく、ここには京都とパリを定点とす…
書評 - 『火炎樹』(国書刊行会)堀江 敏幸
蜂鳥式脱糞の美学おなじ世代の作家でおなじ名を持ちながら、寡黙きわまりない、ほとんど故意の言い落としの洗練に走ったモディアノとは対照的な世界…
書評 - 『フランス小説の扉』(白水社)堀江 敏幸
やわらかい紐翻訳を通じてフランス小説の魅力にとらわれ、その滋味を深々と身体に染み込ませてみずからもすぐれた研究者、翻訳家となったひとりの文…
書評 - 『「断腸亭」の経済学―荷風文学の収支決算』(日本放送出版協会)堀江 敏幸
愛欲のコストパフォーマンス大正六年九月、三十八歳の秋から昭和三十四年四月、八十歳で亡くなる春先まで、四十年以上のながきにわたって書きつづけ…
書評 - 『マロニエの花が言った』(新潮社)堀江 敏幸
パリに生きた青春群像十九世紀末の文化的雰囲気がまだ残されていた、いわゆるベル・エポックの時代から、第一次世界大戦を経て第二次世界大戦へとい…
書評 - 『若冲の目』(講談社)堀江 敏幸
恋の双幅図本書は、旧植民地と日本語の関係を中心として、境界線をまたぐ言語の行方に目を向けた犀利(さいり)な評論集『国境』(メタローグ)など…
書評 - 『恋愛の不可能性について』(筑摩書房)堀江 敏幸
論理の物狂おしさいきなり部屋に入ってきてただ「レーナ」とだけ名乗り、そのまま語り手の「ぼく」と暮らしはじめた女性との関係を描くセルゲイ・ド…
書評 - 『ほんとうの私』(集英社)堀江 敏幸
あたらしい更年期小説主人公は、法的に結びついてはいない熟年の男女である。女性には離婚歴があり、前夫とのあいだにもうけた男の子を五歳で亡くし…
書評 - 『愛の手紙』(図書新聞)堀江 敏幸
後ろめたい行為他人の恋愛にかかわる手紙を読むのは、日記を覗くのと同様、後ろめたい行為だ。特定の相手に向けて発せられた言葉を第三者が盗み読む…
書評 - 『消尽したもの』(白水社)堀江 敏幸
それぞれ固有の足音ベケットがテレビ用に書き下ろした作品に見られる特質を、ドゥルーズが分析する底深い闇のような書物。原題に採られた「エピュイ…
書評