
1952年京都市生れ。京都大学名誉教授。『乱視読者の帰還』で本格ミステリ大賞、『乱視読者の英米短篇講義』で読売文学賞を受賞。主な訳書にナボコフ『透明な対象』、『ディフェンス』、『ナボコフ短篇全集』(共訳)、リチャード・パワーズ『ガラテイア2.2』など。もっと読む
『帰れない探偵』(講談社)
若島 正「忘れることはなくなること」への対抗「今から十年くらいあとの話」柴崎友香の新作『帰れない探偵』は、七つのセクションでできている。そのセク…
書評
『曇りなく常に良く』(中央公論新社)
若島 正5人の高校2年生、心の声に耳傾けて井戸川射子の新作長篇『曇りなく常に良く』は、長篇としての前作『無形』に続いて、ある集団の人間たちを描いた群…
書評
『田中小実昌哲学小説集成 Ⅰ』(中央公論新社)
若島 正ふらふらと進む「コミマサ節」<田中小実昌哲学小説集成>が全三巻で出版されるはこびになった。評者は、一九七〇年代の終わりに泰流社から出た、短…
書評
『真田啓介ミステリ論集 古典探偵小説の愉しみI フェアプレイの文学』(荒蝦夷)
若島 正愛好家による緻密で誠実な批評評者が初めて「真田啓介(まだけいすけ)」という名前を目にしたのは、一九九四年に国書刊行会で刊行が開始された<世…
書評
『エッシャー完全解読――なぜ不可能が可能に見えるのか』(みすず書房)
若島 正不可能が可能に見える手品を解剖美術にとりたてて関心がなく、エッシャーという名前に聞き憶えがなくても、彼の作品をどこかで目にしたことがある人…
書評
『1つの定理を証明する99の方法』(森北出版)
若島 正「文体」が主役の数学的証明この本を読んでいて、真っ先に思い出したのは、中学のときに幾何を教わった先生のことだ。その先生は変わった人で、持っ…
書評
『いかさま師ノリス』(白水社)
若島 正懸命な「悪人」弱さに共感かつて中野好夫は、「悪人礼賛」というエッセイで、こう書いた。「オセロとともに天国にあるのは、その退屈さ加減を想像し…
書評
『アラバスターの手: マンビー古書怪談集』(国書刊行会)
若島 正「好古家」という言葉をご存知だろうか。骨董品や稀覯(きこう)本を蒐集したり、史跡や碑文を調べたりする趣味の持ち主を指す。わたしはこの言葉を…
書評
『過ぎにし夏、マーズ・ヒルで エリザベス・ハンド傑作選』(東京創元社)
若島 正魔法で輝きだす、おもちゃの劇場エリザベス・ハンドの作品集『過ぎにし夏、マーズ・ヒルで』の帯には、「珠玉の抒情SF選集」と謳われている。しかし…
書評
『耳のなかの魚: 翻訳=通訳をめぐる驚くべき冒険』(水声社)
若島 正すべては言語で表現できる本書『耳のなかの魚』は、イギリス生まれでアメリカ在住のフランス文学者であり、またジョルジュ・ペレックの傑作にして翻…
書評
『文体の舵をとれ ル=グウィンの小説教室』(フィルムアート社)
若島 正物語の海を旅する明晰なガイド『文体の舵をとれ』と題する本書は、『闇の左手』や『ゲド戦記』といった代表作で知られるSF・ファンタジー作家のアー…
書評
『ことばの番人』(集英社インターナショナル)
若島 正世界はすべて「校正」でできている俗に、「校正恐るべし」という。いくら目を凝らして文章の校正をしても、必ずどこかに誤植や間違いはひそんでいる…
書評
『ジュリアン・バトラーの真実の生涯』(河出書房新社)
若島 正スキャンダラスな裏文学史『ジュリアン・バトラーの真実の生涯』という題名を見て、ただちに思い出されるのは、ウラジーミル・ナボコフの『セバスチ…
書評
『月曜か火曜』(エトセトラブックス)
若島 正書物という「物」の中で生きている精神『月曜か火曜』は、今からおよそ百年前の一九二一年にヴァージニア・ウルフが夫のレナード・ウルフとともに始…
書評
『アカデミアを離れてみたら――博士、道なき道をゆく』(岩波書店)
若島 正「末は博士か大臣か」という文句が存在したのは遠い昔のこと。いまではどちらも希少価値がなくなっている。大臣はポストだからまだいい。博士のほう…
書評
『この道の先に、いつもの赤毛』(早川書房)
若島 正やわらかな光が包む人間の善良さ「マイカ・モーティマーのような男は、何を考えて生きているのかわからない」。アン・タイラーが八十歳に近づいたと…
書評
『運河の家 人殺し』(幻戯書房)
若島 正緊張感が快感に変わる「硬い小説」ジョルジュ・シムノンといえば、メグレ警視のシリーズが世界的に有名だが、「硬い小説(ロマン・デュール)」と呼…
書評
『「細雪」の詩学: 比較ナラティヴ理論の試み』(田畑書店)
若島 正著者の呼吸の変化まで、つぶさにまだ十代の頃に一九八四年度の文藝賞を受賞してデビューした作家の平中悠一が、谷崎潤一郎の『細雪』をナラティヴ理…
書評
『不死鳥と鏡』(論創社)
若島 正凝りに凝った歴史ファンタジーSF、ファンタジー、さらにミステリも書いたアメリカの大衆小説家アヴラム・デイヴィッドスンは、該博な知識をもとにし…
書評
『40歳から凡人として生きるための文学入門』(幻戯書房)
若島 正開き直って、地に足がついた読み方『40歳から凡人として生きるための文学入門』と題名にある。40歳以上、しかも凡人という二つの条件をクリアしてい…
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