(1928-2015年)東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。フランス文学者、小説家、エッセイスト。元一橋大学教授。小説に『京子変幻』『越境者の祭り』『東京譚』、評論に『辰野隆 日仏の円形広場』『三島由紀夫・昭和の迷宮』『太宰治 変身譚』、エッセイに『私設・東京オペラ』などがある。ジョルジュ・バタイユやシオラ…もっと読む
- 『もののたはむれ』(文藝春秋)出口 裕弘
“俗”に身を寄せたリアリズム 本質的な詩人性を下町人間の“歯切れ”と“啖呵”で隠す私自身、男の夢の中でしか生きられない“女精”を主人公にして、けっ…
書評 - 『ビールの最初の一口―とその他のささやかな楽しみ』(早川書房)出口 裕弘
人生を満載した短編集出来さえよければ、今だって私たちは長編小説を読み通すことができる。軽薄短小こそが現代、という言い方は、半面の真理しか語…
書評 - 『1900年への旅―あるいは、道に迷わば年輪を見よ』(新潮社)出口 裕弘
百年前の日欧の人物像世界をあげての大騒ぎのすえ、何はともあれ西暦二〇〇〇年は到来し、すでにして四分の一を消化した。だが、二十一世紀はまだ来…
書評 - 『ブルゴーニュの黄金の丘で ブレーさんのワイン造り12カ月』(ホーム社)出口 裕弘
ヴォルネー村での一年間の取材からワイン造りの秘密に迫る私はワインが好きだ。日本酒もウィスキーもちかごろはほとんど口にしないが、ワインだけは…
書評 - 『新装版 落日の宴 勘定奉行川路聖謨』(講談社)出口 裕弘
高密度の生を描くアメリカの商船カロライン・フート号が、 カムチャツカから下田港へ帰ってくる。船長の妻や長男長女など、十一人の男女が、宿泊所…
書評 - 『萩原朔太郎詩集』(岩波書店)出口 裕弘
日本語の官能性に酔う十七歳のとき、旧制高校の上級生にすすめられて、萩原朔太郎の詩集をたてつづけに読んだ。「月に吠える」「青猫」「氷島」――戦…
書評 - 『文庫 孤独な帝国 日本の一九二〇年代: ポール・クローデル外交書簡一九二一-二七』(草思社)出口 裕弘
仏大使が鋭く社会診断首相・原敬が暗殺された大正十年から、関東大震災をはさんで金融恐慌の昭和二年まで、ひとりの駐日フランス大使がそのときどき…
書評 - 『パンの歴史』(河出書房新社)出口 裕弘
広く「現代」を考えさせるパンといってもこの本の場合、主としてあの細長いフランスパン、バゲットを指している。うまいパンとは何か。皮がぱりぱり…
書評 - 『猪瀬直樹電子著作集「日本の近代」第4巻 ピカレスク 太宰治伝』(小学館)出口 裕弘
なぜ太宰は恩人・井伏鱒二を遺書で悪人呼ばわりしたか太宰治の生涯なら波瀾万丈だから小説になる。しかし井伏鱒二となるとどうだろう。地味な評伝は…
書評 - 『幻想の地誌学―空想旅行文学渉猟』(筑摩書房)出口 裕弘
恐ろしさ自体を愉楽の種に博学を志したこともないし、コレクター的な資質にもまるで恵まれていない私が、どうした風の吹き回しか、久しく、博学と知…
書評 - 『すべては消えゆく』(白水社)出口 裕弘
エロスと夢うつつのパリ奇譚シュルレアリスムの小説というのは、もともと、言葉の矛盾である。小説は、何はともあれ、理性、知性の監視のもとに構築…
書評 - 『澁澤龍彦の少年世界』(集英社)出口 裕弘
緑なす楽園の時代昭和十五年十一月十日、首都東京は"皇紀二千六百年祭"で沸き立った。ビルの壁には日章旗と軍艦旗がひるがえり、夜の銀座…
書評 - 『神なき死―ミッテラン、最後の日々』(春秋社)出口 裕弘
大統領の「闘病」を追うフランス共和国大統領の任期は七年である。フランソワ・ミッテランは二期、十四年間にわたってその大統領職にあった。日本の…
書評 - 『坂口安吾 百歳の異端児』(新潮社)出口 裕弘
安吾生誕百年 迷妄の霧晴らす「現役作家」坂口安吾は1906年の生まれ、今年で生誕百年になる。戦後すぐこの人のものを読み始めた世代の人間として、…
自著解説 - 『カフカとの対話―― 手記と追想』(みすず書房)出口 裕弘
カフカ的「不条理」を鋭く問うカフカは役人だった。プラハの労働災害保険局に、十四年間つとめた。長身、濃い眉毛、大きな灰色の眼、頑丈な手。声は…
書評 - 『荷風と東京 『断腸亭日常』私註』(岩波書店)出口 裕弘
実像見据え細部に迫る十年前に出たエドワード・サイデンステッカーの好著『東京 下町山の手』は永井荷風の霊にささげられている。荷風こそは導きの…
書評 - 『緩やかさ』(集英社)出口 裕弘
生き死にを急ぐ現代の戯画集ドゥニ・ディドロといえば、フランス十八世紀の、『百科全書』を監修した大啓蒙思想家、となる。しかし、この人、小説も…
書評 - 『現代文訳 正法眼蔵』(河出書房新社)出口 裕弘
石井恭二氏の全訳に寄せてまず、白状しておくと、寺田透氏の「現代訳」だけが私の道元である。去年、他界する数力月前、寺田氏は『道元和尚広録』二…
書評 - 『田舎医者』(みすず書房)出口 裕弘
難解さを"解毒"する達意の訳カフカ神話の果てしない増殖、と訳者が書いているが、まことにカフカは、ランボーとともに、新解釈という名の…
書評 - 『往復書簡 サンド=フロベール』(藤原書店)出口 裕弘
ずいぶん感嘆符の多い文章だな、というのが誰(だれ)しもの抱く印象だろう。作中に作家自身は顔を出すな、主観を引っこめろ、と自分にも弟子にも言…
書評