1953年大阪府箕面生まれ。東京大学で宗教学を、同大学院で比較文学を学ぶ。エッセイスト、批評家、詩人。文学、映画を中心に、多岐にわたる今日の文化現象を論じる。明治学院大学、コロンビア大学、ボローニャ大学、テルアヴィヴ大学、中央大学(ソウル)、清華大学(台湾)などで、映画史と日本文化論の教鞭をとった。著…もっと読む
- 『メイプルソープ』(新潮社)四方田 犬彦
ロバート・メイプルソープは、日本ではきわめて不幸な形で紹介された写真家だった。まず彼は心もとないニューヨーク風俗写真評論家によって、女性ボ…
書評 - 『鏡の中を数える』(タイフーン・ブックス・ジャパン)四方田 犬彦
蓮池にすっぽりと全身を沈め、水面から顔を覗かせて、周囲を恐るおそる見回している男がいる。ここから飛び出していこうか。それともまだしばらく水…
書評 - 『「アジア」の渚で―日韓詩人の対話』(藤原書店)四方田 犬彦
日本と韓国を代表する二人の詩人の対話と、4年越しにわたる往復書簡をまとめた一冊である。吉増剛造は疾走する言語感覚と宇宙論的な想像力で、この40…
書評 - 『ダメな女』(光文社)四方田 犬彦
ある挿話から始めよう。著者の村上龍はたまたま立ち寄った熊本のキャバレーで、古代の爬虫類トリケラトプスそっくりの容貌をしたホステスが、頭の天…
書評 - 『詩は生きている』(五柳書院)四方田 犬彦
福間健二は不服従の人である。彼は長い経歴をもつ詩人であり、イギリス詩の研究家であり、映画とも深く関わっている人物なのだが、それ以上に彼を紹…
書評 - 『ソウルで考えたこと―韓国の現代思想をめぐって』(平凡社)四方田 犬彦
著者が前作『現代韓国の思想』を世に問い、それが韓国語に翻訳された2000年に、わたしはたまたまソウルの大学で教鞭を取っていた。韓国の知識人たち…
書評 - 『ジャスミンを銃口に―重信房子歌集』(幻冬舎)四方田 犬彦
病人は俳句をよくし、囚人は短歌に秀でると、なかば冗談めかして教えられたことがあった。闘病生活を続けていると、健康時にはなかなか気づかなかっ…
書評 - 『引き裂かれた声―もうひとつの20世紀音楽史』(毎日新聞社)四方田 犬彦
世代というものは、単に年齢が近いというだけで形成されるものではない。ある年代が世代として凝固するか・しないかは、もっとも感受性が敏感な時期…
書評 - 『越境の時 一九六〇年代と在日』(集英社)四方田 犬彦
フランス語を学び、フランス文化に親しむというのは、明治以降の少なからぬ知識人にとって、社会変革のための理論を学ぶということであった。中江兆…
書評 - 『時効なし。』(ワイズ出版)四方田 犬彦
小津安二郎の映画について、人はいくらでも饒舌を重ねることができる。だってそれは文化の安全地帯の内側で生じる一事件にすぎないからだ。デリダに…
書評 - 『悲楽観屋サイードの失踪にまつわる奇妙な出来事』(作品社)四方田 犬彦
どの社会の文学にも、その社会に固有でありながらしかも普遍的な広がりをもっている道化というものが存在している。スペインのドン・キホーテ。フラ…
書評 - 『パレスチナ』(いそっぷ社)四方田 犬彦
手塚治虫の『アドルフに告ぐ』は、戦前の神戸にあったドイツ人社会を舞台に、手塚が幼少時から親しんできたコスモポリタニスムを十全に発揮した長編…
書評 - 『ロリータ』(新潮社)四方田 犬彦
※この書評は『ロリータ』単行本版への書評です。翻訳とはもっとも地味な手仕事である。単に語学が人並みはずれてできるというだけでは片付かない、辛…
書評 - 『ロリータ』(新潮社)四方田 犬彦
翻訳とはもっとも地味な手仕事である。単に語学が人並みはずれてできるというだけでは片付かない、辛苦の労働だ。ペルシャ絨毯を毎日コツコツと寡黙…
書評 - 『三島由紀夫・昭和の迷宮』(新潮社)四方田 犬彦
三島由紀夫が市谷の自衛隊駐屯地で割腹自殺を遂げたとき、わたしは17歳だった。当時『新潮』の巻末に、彼が『豊饒の海』という小説を何年にもわたっ…
書評 - 『生のものと火を通したもの (神話論理 1)』(みすず書房)四方田 犬彦
神話とははるか昔に生じた天変地異のおぼろげな記憶でもなければ、ある民族のもつ基本的感情をロマンチックに描いたものでもない。それは身近にある…
書評 - 『食うものは食われる夜』(思潮社)四方田 犬彦
蜂飼耳の最初の詩集『いまにもうるおっていく陣地』をはじめて読んだときのことは、よく憶えている。明るい昼の光の下、見る見るうちに日の前の叢の…
書評 - 『オリエンタリズム』(平凡社)四方田 犬彦
学者には二通りのタイプがある。ひとつのタイプは、あらかじめ成立している学問の細分化されたあり方をそのまま受け入れ、その約束ごとを律儀に踏襲…
書評 - 『昭和ジャズ喫茶伝説』(平凡社)四方田 犬彦
ジャズ喫茶が殷賑をきわめていた時代というものがあった。扉を開くと、煙草の煙の立ちこめる薄暗い空間から、いっせいに大音響が襲いかかってくる。…
書評 - 『蝦蟇の油―自伝のようなもの』(岩波書店)四方田 犬彦
1『蝦蟇の油』は黒澤明が68歳のときにひとたび執筆された。これは彼が『影武者』の企画がなかなか進行せず、結局は映画化されなかったが『死の家の…
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