翻訳家。訳書にエミリー・ブロンテ『嵐が丘』、マーガレット・ミッチェル『風と共に去りぬ1-5巻』(以上新潮文庫)、ヴァージニア・ウルフ『灯台へ』(河出書房新社 世界文学全集2-1)、J.M.クッツェー『恥辱』(ハヤカワepi文庫)、『イエスの幼子時代』『遅い男』、マーガレット・アトウッド『昏き目の暗殺者』『誓願』…もっと読む
- 『「その他の外国文学」の翻訳者』(白水社)鴻巣 友季子
透明性と忠実性の両立の結晶書店の外国文学の区分には、「その他の外国文学」に分類される“マイナー”な言語がある。本書はそんな翻訳者たちへの稀有…
書評 - 『物語のカギ: 「読む」が10倍楽しくなる38のヒント』(笠間書院)鴻巣 友季子
「思い込み」排し、豊かな読み方を手引き文学系YouTubeチャンネル「スケザネ図書館」の開設に始まり彗星の如く現れた(ように私には見えた)書評家…
書評 - 『あくてえ』(河出書房新社)鴻巣 友季子
レジリエンスの、残酷な物語ひとの強さ、弱さとは何かを考えるとき、あるタイ作家の「闘鶏師」という中編をよく思いだす。どんな不利な対戦でも闘い…
書評 - 『新訳 老人と海』(左右社)鴻巣 友季子
「the boy=成人男性」の新解釈ヘミングウェイの代表作『老人と海』の新訳が上梓された。同作家の研究の第一人者今村楯夫による翻訳であり、巻末に…
書評 - 『アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か? これからの経済と女性の話』(河出書房新社)鴻巣 友季子
経済格差の広がりを止められない理由ボーヴォワールの『第二の性』に、「人間とは男のことであり、<中略>つまり女は“他者”なのだ」という有名な一…
書評 - 『旅する練習』(講談社)鴻巣 友季子
情動を鎮め、残像を留める叔父さん叔(伯)父さんは物語のなかで独特の立ち位置にいる。英語のavuncularという形容詞は「親戚のおじさんのように優…
書評 - 『文学のエコロジー』(講談社)鴻巣 友季子
文学を動的環境の中で生け捕りに小説はミメーシス(模倣)の観点からして、文芸作品のなかで最も甚だしい錯覚を要する、最も似ていない物真似である…
書評 - 『テーゲベックのきれいな香り』(河出書房新社)鴻巣 友季子
詩と小説、重なり変位しあう関係性小説は詩に還りたがっているのではないか。ここ数年、そんなことを思うことがある。定型詩の形で物語を書いていた…
書評 - 『遠きにありて、ウルは遅れるだろう』(白水社)鴻巣 友季子
「記憶の消失」題材、異色ぶり際立つ記憶の消失は文学が好む題材であり、とくに近年は「政治的記憶喪失」を描くものが印象に残る。国家や共同体が人…
書評 - 『心に、光を。 不確実な時代を生き抜く』(KADOKAWA)鴻巣 友季子
米国副大統領のハリスも、若き詩人アマンダ・ゴーマンもオマージュを捧げる著者の『心に、光を。』は、不安との付き合い方を語るエンパワメントあふ…
書評 - 『見ること』(河出書房新社)鴻巣 友季子
昏い覚醒が続く魂の冥府サラマーゴの『見ること』は、「見えないこと」をテーマにした前作『白の闇』と対の作品として読むべきだろう。『白の闇』が…
書評 - 『街とその不確かな壁』(新潮社)鴻巣 友季子
情動の「疫禍」巡り、希望と絶望の往還なるほど、村上春樹はパンデミックの経験と視座を得て、あの初期作を感染症文学の文脈で再展開したのか。ひと…
書評 - 『ポー傑作選1 ゴシックホラー編 黒猫』(KADOKAWA)鴻巣 友季子
ポーの諸作を三巻に編んだ新訳選集である。際立っているのは、一つに言語面での驚異的な忠実さだ。訳者の河合氏はシェイクスピア学者として、言葉遊…
書評 - 『J・ M・クッツェー 世界と「私」の偶然性へ』(三修社)鴻巣 友季子
「<英語>文学の現在(いま)へ」というシリーズの第一巻である。「英文学」ではないところに留意したい。第二次大戦前後から世界中で<英語>とい…
書評 - 『世界文学をケアで読み解く』(朝日新聞出版)鴻巣 友季子
縦横無尽に「自己」と「他者」を考え直すここ数年、文学の読み解きに「ケア」という語と概念が使われることが増えた。ケアとは、病人の看護、高齢者…
書評 - 『花に埋もれる』(新潮社)鴻巣 友季子
単行本初収録「花に眩む」を読み、作者はこんなすごい作でデビューしたのかと感嘆した。作中で人びとの体には土地によってそれぞれの花が咲く。やが…
書評 - 『覚醒せよ、セイレーン』(左右社)鴻巣 友季子
男性側に都合のいい理屈を語り直す古代ギリシャ以来、西洋文学には男性中心/優位の時代が何千年と続いた。書くのも男性、書かれるのも多くは男性。…
書評 - 『『ドライブ・マイ・カー』論』(慶應義塾大学出版会)鴻巣 友季子
村上春樹の短篇を原作として濱口竜介が監督した映画「ドライブ・マイ・カー」の論考集である。D・A・ミラーは運転しながらある小説の朗読テープを聴…
書評 - 『M』(集英社)鴻巣 友季子
移民の少年「アンドウマサト」を主人公にした『Masato』『Matt』に続く三部作の完結編だ。マサトは父親の転勤で十二歳のときに日本からオーストラリ…
書評 - 『通訳者と戦争犯罪』(みすず書房)鴻巣 友季子
安全と中立性を守るための提言十二世紀ルネッサンス期には、重篤な誤訳を犯した翻訳者は重刑に処されたという。翻訳者の使命を綴る書物はつとに多い…
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