1964年、岐阜県生まれ。作家、仏文学者。現在、早稲田大学文学学術院教授。主な著書として、『郊外へ』『おぱらばん』『熊の敷石』『雪沼とその周辺』『未見坂』『河岸忘日抄』『めぐらし屋』『なずな』『燃焼のための習作』『その姿の消し方』、書評・批評集として、『書かれる手』『本の音』『彼女のいる背表紙』『余り…もっと読む
- 『百鬼園先生-内田百閒全集月報集成』(中央公論新社)堀江 敏幸
言葉の錬金術を照らす87の証言内田百閒(ひゃっけん)は一九七一年四月、八十一歳で死去した。今年は没後五十年。それを記念して編まれた本書には、…
書評 - 『不在――物語と記憶とクロニクル』(みすず書房)堀江 敏幸
鋭敏で繊細 感情の表と裏ナタリーア・ギンズブルグは、一九一六年、イタリアのパレルモで、ユダヤ系で解剖学者の父とカトリックの母とのあいだに生…
書評 - 『霧の彼方 須賀敦子』(集英社)堀江 敏幸
祈りとしての創作に至った「たましい」没後二十年以上が経つというのに、須賀敦子はいまだにあたらしい作家として発見されつづけている。大部の全集…
書評 - 『一日の光あるいは小石の影』(アーツ・アンド・クラフツ)堀江 敏幸
少し遅れてくる祈りの言葉の重み「三十余年」のあいだに発表された百九十篇ほどの散文がならぶ、伽藍のような大著である。全体は四章からなり、編年…
書評 - 『工場日記』(筑摩書房)堀江 敏幸
言葉だけで成り立つ思考を焼きなましたフライプレス機、絶縁材(カルトン)、固定磁気回路、座金、発条(バネ)、歪(ゆが)み取り、溶鉱炉、焼きな…
書評 - 『メトロの民族学者』(水声社)堀江 敏幸
乗客は皆孤独、自身の内面を対象化パリに地下鉄が敷設されたのは一九〇〇年、パリ万博にあわせてのことだった。最初に開通したのは会場を通るポルト…
書評 - 『アナーキストの銀行家 フェルナンド・ペソア短編集』(彩流社)堀江 敏幸
詩人の領域を超えた筆運びポルトガルの詩人フェルナンド・ペソアが、ほぼ無名のままリスボンで亡くなったのは、一九三五年のことである。享年四七歳…
書評 - 『生きながらえる術』(講談社)堀江 敏幸
社会に「空き地」をつくる大切さ生きるために必要で、必要であるがゆえにあたりまえのこととして日常に組み込まれてきたために、つよく意識されなか…
書評 - 『魂の声をあげる 現代史としてのラップ・フランセ』(アプレミディ)堀江 敏幸
政治と異なる言葉と音楽で意識を覚醒ラップ・フランセ、すなわち英語ではなくフランス語で書かれ、フランス語圏で力を得たラップとはどういうものか…
書評 - 『ドガ ダンス デッサン』(岩波書店)堀江 敏幸
終わりなき問い「絵画の床を重視」セザンヌやルノアールの回想録でも知られる画商アンブロワーズ・ヴォラールは、ドガとも生涯にわたってつきあいが…
書評 - 『孤島』(筑摩書房)堀江 敏幸
大学に入って間もない頃、ジャン・グルニエの『孤島』を買った。いまはなき竹内書店新社から一九七九年に出た改訂版第一刷である。フランス文学に興…
書評 - 『小さくも重要ないくつもの場面』(白水社)堀江 敏幸
わたしは誰?戻すことのできない何かどの頁(ページ)を開いても、なにかがずっと耳もとでささやいている気がする。風が、空が、木々が、星が、鳥や…
書評 - 『私の作家評伝』(中央公論新社)堀江 敏幸
生きているかのように語られる16人明治から昭和にかけての作家の生涯と作品を溶け合わせるかのように語られた全十七篇、一行四十字詰め十七行で組ま…
書評 - 『三十九階段』(東京創元社)堀江 敏幸
日常にこそ潜む「冒険の小さな鍵」ヒッチコックが映画化したことでも知られるジョン・バカンの『三十九階段』は一九一五年に発表されているのだが、…
書評 - 『遊動亭円木』(文藝春秋)堀江 敏幸
耳の傾け方経済の破綻がそのまま心の荒廃につながるのだとしたら、あまりにもわびしい。だからといって新興宗教に助けを求めるのも、あたりまえの暮…
書評 - 『日本・現代・美術』(新潮社)堀江 敏幸
楕円軌道を認識すること「あらかじめ断っておくが、『日本・現代・美術』と題されているからといって、これは、日本の現代美術史を扱うものではない…
書評 - 『スロー・イズ・ビューティフル』(平凡社)堀江 敏幸
引き算の進歩ゆっくり、という言葉が逃げの文句のように語られていた時代は、とうに終わっている。現在があくまで未来の準備にすぎないような、先へ…
書評 - 『パリジャン』(河出書房新社)堀江 敏幸
愛すべき「新種」への義憤花の都の現在を分析し、その悪弊を摘出していく毒舌の多くは、熱烈なパリ讃歌と表裏をなしている。パリを批判するパリジャ…
書評 - 『テレビジョン』(集英社)堀江 敏幸
平泳ぎの心静かな官能一九九〇年代初頭に小さくはないブームを巻き起こし、思想系の勢いに押されて沈滞気味だった現代フランス小説の紹介に復調のき…
書評 - 『探偵小説あるいはモデルニテ』(法政大学出版局)堀江 敏幸
私立探偵オイディプスの影二十世紀におけるすべての偉大な小説は探偵小説だというあのボルヘスの言葉をまつまでもなく、優れた文学作品と探偵小説に…
書評