1964年、岐阜県生まれ。作家、仏文学者。現在、早稲田大学文学学術院教授。主な著書として、『郊外へ』『おぱらばん』『熊の敷石』『雪沼とその周辺』『未見坂』『河岸忘日抄』『めぐらし屋』『なずな』『燃焼のための習作』『その姿の消し方』、書評・批評集として、『書かれる手』『本の音』『彼女のいる背表紙』『余り…もっと読む
- 『フェルナンド・ペソア伝 異名者たちの迷路』(集英社)堀江 敏幸
私であることと私でないことの間に二十世紀ポルトガルを代表する詩人、フェルナンド・ペソアについての、日本語で書かれた初の本格的評伝である。一…
書評 - 『書物について―その形而下学と形而上学』(岩波書店)堀江 敏幸
内容と形態通常、「本についての本」とは、世の読書家たちの興味関心をさらにあおるような書物の批評的紹介か、稀覯(きこう)本を漁る愛書家たちに…
書評 - 『本と貝殻: 書評/読書論』(コトニ社)堀江 敏幸
本の海の響きに耳を傾けたくなる『本と貝殻』。表題作となる詩篇が、さわやかな序として掲げられている。「本と貝は似ている」。ただし大事なのは「…
書評 - 『セザンヌ 画家のメチエ』(青土社)堀江 敏幸
言葉の《tache》、思考の《plan》セザンヌの絵をめぐる言葉に触れるのが億劫になったのは、たぶん洲之内徹の評言のせいだろうと思う。それがどの時…
書評 - 『むしろ幻想が明快なのである ――虫明亜呂無レトロスペクティブ』(筑摩書房)堀江 敏幸
一瞬のプレーに美の意味を問う虫明亜呂無は本名である。一九二三年、東京生まれ。父は萬鉄五郎に師事した画家の虫明柏太で、亜呂無は芳香を意味する…
書評 - 『フランスの遺言書』(水声社)堀江 敏幸
二重言語がもたらす残酷な愛の歴史この十年ほど、フランス小説を活性化してきたのは、旧植民地出身の作家たちである。彼らは統治者の言語と母国語の…
書評 - 『ドン・イシドロ・パロディ 六つの難事件』(岩波書店)堀江 敏幸
独房探偵登場アームチェア・ディテクティヴの古典、クリスティのミス・マープルが持つ穏やかな諧謔と、チェスタトンのブラウン神父でしか出会うこと…
書評 - 『フーコン戦記』(文藝春秋)堀江 敏幸
わからないことの「回りあんどん」古山高麗雄の小説には、罪を認めるとか認めないとかの問題を超えたところから響いてくる声がある。現在の文体と比…
書評 - 『いまどきの老人』(朝日新聞社)堀江 敏幸
老女たちの跳梁ふつうなら衰退の一語で片づけられてしまうボケ現象を、発想の転換によって肯定的な力に高めたのが、赤瀬川原平の『老人力』(筑摩書…
書評 - 『葉書でドナルド・エヴァンズに』(作品社)堀江 敏幸
官製葉書の想像力架空の国々の切手を水彩で描き、主題別、発行年別にシートとして分類しつづけるという奇妙な情熱にとりつかれた画家ドナルド・エヴ…
書評 - 『武満徹 音・ことば・イメージ』(青土社)堀江 敏幸
未知の微動を探る試み武満徹の音楽に指で触れてみること。それも他者のまえで鍵盤をつまびくプロフェッショナルな緻密さからは遠い、ゆるやかな「愛…
書評 - 『文学の皮膚―ホモ・エステティクス』(白水社)堀江 敏幸
表層としての深み谷崎潤一郎、梶井基次郎、川端康成、三島由紀夫、安部公房、キルケゴール、ユイスマンス、オスカー・ワイルド。彼らの作品に表層の…
書評 - 『ビールの最初の一口―とその他のささやかな楽しみ』(早川書房)堀江 敏幸
仮定で語られる人生日本文学には「随筆」という奥深いジャンルの伝統がある。『枕草子』から『方丈記』を経て『徒然草』へ。ときに斬新な視点で読者…
書評 - 『ルーヴルの騎手 ルーヴル美術館を創った男ヴィヴァン・ドゥノンの生涯』(集英社)堀江 敏幸
反=緩やかさの試みヴィヴァン・ドゥノンの名を、あなたは御存じだろうか。一七四七年、ブルゴーニュ地方のシャロンに生まれたドゥノンは、一七六九…
書評 - 『小説修業』(中央公論新社)堀江 敏幸
対話の「小説化」公開を前提とする論争や往復書簡のなかには、対話を必要としていない自説の開陳に走るだけのモノローグの羅列や、相手を過度に気づ…
書評 - 『ピカソ・ジャコメッティ・ベイコン』(人文書院)堀江 敏幸
現在形で息づく対話闘牛のように激しく、熾火(おきび)のように静かなあの自伝的散文、『成熟の年齢』で知られる詩人ミシェル・レリスは、自身の創…
書評 - 『明治日本の詩と戦争―アジアの賢人と詩人』(みすず書房)堀江 敏幸
詩人たちの島の行く末日露戦争がはじまる直前の一九〇三年九月、ひとりの若いフランス人が横浜に到着した。ポール=ルイ・クーシュー、二十四歳。パ…
書評 - 『日光』(朝日新聞社)堀江 敏幸
闇のなかの堂々めぐり十一月中旬、降りしきる雨の一日、文筆を生業としているらしい五十過ぎの男が、三十そこそこの恋人X+C子――エクスタシー子!――…
書評 - 『ラバ通りの人びと―オリヴィエ少年の物語1』(福音館書店)堀江 敏幸
少しだけみなしごでありつづける物語ロベール・サバティエの『舗道のうえのデッサン』をリーヴル・ド・ポッシュ版で読んだのは、もうずいぶんむかし…
書評 - 『蔭の棲みか』(文藝春秋)堀江 敏幸
自然体が生む目線の確かさ芥川賞を受賞した表題作を巻頭に据えて、前候補作と「文學界」の同人雑誌優秀作に選ばれた初期の作品が遡行(そこう)的に…
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