
1964年、岐阜県生まれ。作家、仏文学者。現在、早稲田大学文学学術院教授。主な著書として、『郊外へ』『おぱらばん』『熊の敷石』『雪沼とその周辺』『未見坂』『河岸忘日抄』『めぐらし屋』『なずな』『燃焼のための習作』『その姿の消し方』、書評・批評集として、『書かれる手』『本の音』『彼女のいる背表紙』『余り…もっと読む
- 『日本・現代・美術』(新潮社)堀江 敏幸
楕円軌道を認識すること「あらかじめ断っておくが、『日本・現代・美術』と題されているからといって、これは、日本の現代美術史を扱うものではない…
書評 - 『スロー・イズ・ビューティフル』(平凡社)堀江 敏幸
引き算の進歩ゆっくり、という言葉が逃げの文句のように語られていた時代は、とうに終わっている。現在があくまで未来の準備にすぎないような、先へ…
書評 - 『パリジャン』(河出書房新社)堀江 敏幸
愛すべき「新種」への義憤花の都の現在を分析し、その悪弊を摘出していく毒舌の多くは、熱烈なパリ讃歌と表裏をなしている。パリを批判するパリジャ…
書評 - 『テレビジョン』(集英社)堀江 敏幸
平泳ぎの心静かな官能一九九〇年代初頭に小さくはないブームを巻き起こし、思想系の勢いに押されて沈滞気味だった現代フランス小説の紹介に復調のき…
書評 - 『探偵小説あるいはモデルニテ』(法政大学出版局)堀江 敏幸
私立探偵オイディプスの影二十世紀におけるすべての偉大な小説は探偵小説だというあのボルヘスの言葉をまつまでもなく、優れた文学作品と探偵小説に…
書評 - 『木陰の歴史 〔感情の源泉としての樹木〕』(藤原書店)堀江 敏幸
思索や夢想へと誘う「心地よき場所」俗に「感性の歴史家」と称されるアラン・コルバンの仕事を、ひとことで言いあらわすのは難しい。感性という形に…
書評 - 『服部さんの幸福な日』(新潮社)堀江 敏幸
平凡のなかの異常と異常のなかの平凡動きのなさそうなタイトルと、ぼんやり物思いにふけっている少年(青年?)が空に浮かぶ穏やかな表紙。本を開い…
書評 - 『絵画とタイトル――その近くて遠い関係』(みすず書房)堀江 敏幸
観る側の解釈、助けもすれば拘束もする展覧会で絵だけを観る人はほとんどいない。多くの場合、作品の脇の小さな掲示でタイトルや制作年、素材を確認…
書評 - 『永瀬清子詩集』(岩波書店)堀江 敏幸
性別の「らしさ」を結果として生み出す声一九〇六年二月、岡山に生まれた永瀬清子が詩人を志したのは、一九二三年、十七歳のとき『上田敏詩集』を読…
書評 - 『永遠のジブラルタル』(講談社)堀江 敏幸
ゆるやかなスクラム大手出版社の嘱託としてヨーロッパに派遣されていた大日向陽太郎は、パリの旅行代理店に勤める呉竹良房夫妻と知り合う。正確には…
書評 - 『辰野隆 日仏の円形広場』(中央公論新社)堀江 敏幸
フランスの意味を問う明治以来百三十年、日本にとってフランスとはなんだったのか。ワインを筆頭とする食材はもとより、文学、美術、映画、思想にオ…
書評 - 『長い物語のためのいくつかの短いお話』(白水社)堀江 敏幸
語り手が色づけする記憶の断片淡々と文を重ねてできあがった記憶の層を軽く揺さぶって、細い亀裂をつくりだす。強い感情の起伏はない。程度を弱める…
書評 - 『マッサージ台のセイウチ―グリエルモ先生の動物揉みほぐし診療記』(早川書房)堀江 敏幸
「触れあい」が生む信頼感きっかけは、患者のひとりに愛馬の治療を頼まれたことだった。その馬は以前の飼い主からひどい虐待を受けていたため、人間…
書評 - 『フェルナンド・ペソア伝 異名者たちの迷路』(集英社)堀江 敏幸
私であることと私でないことの間に二十世紀ポルトガルを代表する詩人、フェルナンド・ペソアについての、日本語で書かれた初の本格的評伝である。一…
書評 - 『書物について―その形而下学と形而上学』(岩波書店)堀江 敏幸
内容と形態通常、「本についての本」とは、世の読書家たちの興味関心をさらにあおるような書物の批評的紹介か、稀覯(きこう)本を漁る愛書家たちに…
書評 - 『本と貝殻: 書評/読書論』(コトニ社)堀江 敏幸
本の海の響きに耳を傾けたくなる『本と貝殻』。表題作となる詩篇が、さわやかな序として掲げられている。「本と貝は似ている」。ただし大事なのは「…
書評 - 『セザンヌ 画家のメチエ』(青土社)堀江 敏幸
言葉の《tache》、思考の《plan》セザンヌの絵をめぐる言葉に触れるのが億劫になったのは、たぶん洲之内徹の評言のせいだろうと思う。それがどの時…
書評 - 『むしろ幻想が明快なのである ――虫明亜呂無レトロスペクティブ』(筑摩書房)堀江 敏幸
一瞬のプレーに美の意味を問う虫明亜呂無は本名である。一九二三年、東京生まれ。父は萬鉄五郎に師事した画家の虫明柏太で、亜呂無は芳香を意味する…
書評 - 『フランスの遺言書』(水声社)堀江 敏幸
二重言語がもたらす残酷な愛の歴史この十年ほど、フランス小説を活性化してきたのは、旧植民地出身の作家たちである。彼らは統治者の言語と母国語の…
書評 - 『ドン・イシドロ・パロディ 六つの難事件』(岩波書店)堀江 敏幸
独房探偵登場アームチェア・ディテクティヴの古典、クリスティのミス・マープルが持つ穏やかな諧謔と、チェスタトンのブラウン神父でしか出会うこと…
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