
1961年生まれ。ライター、ブックレビュアー。「週刊新潮」「中日新聞」「DIME」などで書評を連載。著書は『そんなに読んで、どうするの?』『どれだけ読めば、気がすむの?』(以上アスペクト)、『文学賞メッタ斬り』『百年の誤読』(以上、共著、ちくま文庫)、『勝てる読書』(河出書房新書)、『読まずに小説書けます…もっと読む
- 『奇跡も語る者がいなければ』(新潮社)豊崎 由美
一九九七年のまだ残暑厳しい晩、テレビをつけると世界で一番有名な皇太子妃の荘厳な葬儀の模様が映し出されて、そこにはエルトン・ジョンがいて、そ…
書評 - 『ノリーのおわらない物語』(白水社)豊崎 由美
『綴方教室』(岩波文庫)ってご存じですか?昭和初期の東京下町に暮らすブリキ職人一家の生活を、小学生の豊田正子さんが綴った作文集なんですけど…
書評 - 『突囲表演』(河出書房新社)豊崎 由美
不倫もお国柄や書き手の資質が違えば、まるでその表情を変えてしまうわけで、たとえば一世を風靡した渡辺淳一の『失楽園』と、現代中国文学の巨匠・…
書評 - 『蒲公英草紙 常野物語』(集英社)豊崎 由美
うらやましい。恩田陸『光の帝国』(集英社文庫)をまだ読んでいない人が、うらやましくてならない。遠くの出来事を知る“遠耳”の力、未来を見通す“遠…
書評 - 『カンバセイション・ピース』(河出書房新社)豊崎 由美
自分と家族のみならず、飼っている犬・猫・小鳥まで一枚の絵の中におさめてしまう、一八世紀にイギリス貴族の間ではやったカンバセイション・ピース…
書評 - 『噂の娘』(講談社)豊崎 由美
観たことあるでしょう、映画の冒頭で。「さあ、今、この場所からお話は始まるんですよ」といわんばかりに、町並みを俯瞰で流し撮るシーンを。洋品店…
書評 - 『熱帯』(文藝春秋)豊崎 由美
文化人類学者レヴィ=ストロースによれば、あらゆる神話はそれを構成する基本的主題の変形からなり、神話の物語には一定の普遍的構造が隠されていて…
書評 - 『ヨットクラブ』(晶文社)豊崎 由美
CSのミステリチャンネルという局の番組「ベストブックス」に出演しているのですが(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆時期は2004年)、そこで二〇〇三…
書評 - 『贖罪』(新潮社)豊崎 由美
一人の少女がついたひとつの嘘。それが、ひと組の若いカップルの人生を狂わせていく――。『アムステルダム』でブッカー賞を受賞した、英文学界を代表…
書評 - 『アトランティスのこころ』(新潮社)豊崎 由美
五つの作品が収められたこの大きなひとつの物語の中には、スティーヴン・キング作品のテーマと魅力のすべてがある。少年時代の終焉、それに伴う喪失…
書評 - 『未亡人の一年〈上〉』(新潮社)豊崎 由美
神は細部に宿る。物語作家を自負するジョン・アーヴィングの作品はあまりにも面白すぎるがゆえに、いざストーリーをかいつまんで紹介しようとすると…
書評 - 『ディフェンス』(河出書房新社)豊崎 由美
ゲームの王様って一体なんだろう。日本人なら囲碁とか将棋とか答えそうだけれど、西洋人にとってのそれはチェスに違いない。ロシア生まれにもかかわ…
書評 - 『愛』(国書刊行会)豊崎 由美
昨年夏、『ロマン』(国書刊行会)で日本における鮮烈デビューを果たしたソローキンの短編集(ALL REVIEWS事務局…
書評 - 『オリエント急行戦線異状なし』(DHC)豊崎 由美
フェンス職人トリオが、農場に最新式フェンスを張りに行く→昼はのらくら働き、夜はパブでビールを飲む→何かの拍子で依頼主が死ぬ→「ま、いいか」と埋…
書評 - 『バカカイ―ゴンブローヴィチ短篇集』(河出書房新社)豊崎 由美
チケットを買う行列への割り込みを止められた男が、その後、自分を注意した紳士をストーキングする。逆恨みではなく、憧れゆえに。花束を届けさせた…
書評 - 『宗教が往く〈上〉』(文藝春秋)豊崎 由美
なかなか本編が始まらない。まったく終わる気配がない。松尾スズキが今はなき『鳩よ!』という雑誌で小説連載を始めた五年前から今日に至るまで、数…
書評 - 『蟹の横歩き―ヴィルヘルム・グストロフ号事件』(集英社)豊崎 由美
イラク戦争開戦直前に、ブラジルの作家コエーリョが主要メディアに寄せたメッセージは素晴らしかった。「ありがとう、偉大な指導者ジョージ・W・ブッ…
書評 - 『黄金旅風』(小学館)豊崎 由美
飯嶋和一は幻の直木賞作家なんである。ライト兄弟より一〇〇年以上先駆けて空を飛んでみせた男が主人公の、痛快時代小説『始祖鳥記』で獲っていなけ…
読書日記 - 『アラビアン・ナイトメア』(国書刊行会)豊崎 由美
国書刊行会は偉い。売り上げが期待できないから大手出版社が腰を引くような通好みの傑作を、外国語に不自由な小説ファンのためにコツコツ翻訳出版し…
書評 - 『甘美なる来世へ』(みすず書房)豊崎 由美
小説の読者というのは、たとえて云うなら馬術競技の馬のようなもので、騎手(作家)の指示に従ってコースを回り、障害物を飛び越え、ゴールに向かう…
書評