1961年生まれ。ライター、ブックレビュアー。「週刊新潮」「中日新聞」「DIME」などで書評を連載。著書は『そんなに読んで、どうするの?』『どれだけ読めば、気がすむの?』(以上アスペクト)、『文学賞メッタ斬り』『百年の誤読』(以上、共著、ちくま文庫)、『勝てる読書』(河出書房新書)、『読まずに小説書けます…もっと読む
- 『蟹の横歩き―ヴィルヘルム・グストロフ号事件』(集英社)豊崎 由美
イラク戦争開戦直前に、ブラジルの作家コエーリョが主要メディアに寄せたメッセージは素晴らしかった。「ありがとう、偉大な指導者ジョージ・W・ブッ…
書評 - 『黄金旅風』(小学館)豊崎 由美
飯嶋和一は幻の直木賞作家なんである。ライト兄弟より一〇〇年以上先駆けて空を飛んでみせた男が主人公の、痛快時代小説『始祖鳥記』で獲っていなけ…
読書日記 - 『アラビアン・ナイトメア』(国書刊行会)豊崎 由美
国書刊行会は偉い。売り上げが期待できないから大手出版社が腰を引くような通好みの傑作を、外国語に不自由な小説ファンのためにコツコツ翻訳出版し…
書評 - 『甘美なる来世へ』(みすず書房)豊崎 由美
小説の読者というのは、たとえて云うなら馬術競技の馬のようなもので、騎手(作家)の指示に従ってコースを回り、障害物を飛び越え、ゴールに向かう…
書評 - 『ブロッケン山の妖魔―久野豊彦傑作選』(工作舎)豊崎 由美
霧と光の作用で山頂に現れる大きな人影――ブロッケン山の大入道としてよく知られる現象をモチーフにしたエロティックな幻想譚が、久野豊彦傑作選の表…
書評 - 『魂萌え!〔上〕』(新潮社)豊崎 由美
これまで冒険といえば、世間知&経験値ゼロの少年少女か、お姫様を救出せんと竜の棲む洞窟に挑む若き騎士か、世界の平和を守るために戦うマッチョな…
書評 - 『黄金の羅針盤〈上〉 ライラの冒険』(新潮社)豊崎 由美
飢えている子供を前に文学は有効か――という命題が、かつて論議をかもしたことがあったようだけれど、わたしにはそんな命題が生まれること自体不思議…
書評 - 『綺譚集』(東京創元社)豊崎 由美
小説家は太陽の想像力と月の想像力の持ち主に分けられる。津原泰水。少年少女向けのライトノベルから筆業を興し、その後『蘆屋家の崩壊』などの作品…
書評 - 『ノーライフキング』(河出書房新社)豊崎 由美
ニッポンの文壇村ではほとんど話題にも上がらなかったけれど、一般の小説ファンの間では「読んだ?」「ⅠからⅣまでバージョンがあって、それぞれ結末…
書評 - 『葉書でドナルド・エヴァンズに』(作品社)豊崎 由美
お土産はいいから、ただその土地から絵葉書を送ってほしい――。わたしが海外旅行に出るたびに、そう頼む友人がいる。不思議なもので、普段は筆無精な…
書評 - 『ライカ同盟』(講談社)豊崎 由美
天体望遠鏡、顕微鏡、そしてカメラ。子どもには、こうした精密機器を通して世界に触れたいと熱望する時期がある。今でも忘れない。買ってもらった屈…
書評 - 『河岸忘日抄』(新潮社)豊崎 由美
ふと気づけば、忙しがっていることで必要とされているふりをしている。何でもかんでもわかった気になろうとしている。そういうハイテンションな日々…
書評 - 『カフカの父親』(白水社)豊崎 由美
変身、といえばカフカか仮面ライダーの専売特許ということになっているんだけれど、無念なことに後者から連想できる爆笑思弁小説の傑作『沢蟹まける…
書評 - 『ベルリンの瞬間』(集英社)豊崎 由美
狭いニッポンそんなに急いでどこへ行く、なんて交通標語がありましたけど、これって、今や言論の場でこそ唱えられていい標語かもしれないと思います…
書評 - 『彼女は長い間猫に話しかけた』(マドラ出版)豊崎 由美
どうせまたスルーしちゃうんでしょ、純文学リーグはこういう傑作を。糸井重里が『家族解散』を、いとうせいこうが『ノーライフキング』を、そして最…
書評 - 『若かった日々』(新潮社)豊崎 由美
子どもの頃、よく考えませんでしたか? 「なんで、自分は自分なんだろう」とか、「なんで、わたしは今ここにいるんだろう」とか。ところが大抵の人は…
書評 - 『月の裏側』(幻冬舎)豊崎 由美
堀割が毛細血管のように入り組み流れる九州の小さな水郷都市で、一年に三件の失踪事件が相次ぐ。消えたのはいずれも堀に面した家に住む老人だったの…
書評 - 『手紙』(岩波書店)豊崎 由美
八三年のデビュー作、葛飾北斎の娘を主人公にした『応為坦坦録』の締めの一文にシビれて以来、山本昌代の仕事に注目し続けてきたことは、わたしの小…
書評 - 『古道具 中野商店』(新潮社)豊崎 由美
「市井小説」というジャンルがあって、それは大金持ちでもなく、有名人でもなく、英雄でもない、歴史という大海の中の小さな泡沫にすぎない、わたし…
書評 - 『袋小路の男』(講談社)豊崎 由美
「発掘!あるある大辞典」という人気テレビ番組じゃないけれど(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆時期は2004年)、小説を読んでいて「いるいる」と呟…
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