1961年長崎生まれ。文芸評論家、フランス文学者。ロック、ラップなどの音楽・文化論、現代日本文学をめぐる批評活動を行う。最新作に『戦争へ、文学へ 「その後」の戦争小説論』(集英社)。その他の著書に『フランス暴動 - 移民法とラップ・フランセ』『じゃがたら』(共に河出書房新社)、『フットボール・エクスプロー…もっと読む
- 『空港時光』(河出書房新社)陣野 俊史
母語と国語の間で悩む人々十の物語が詰まっている。ごく短い小説には、それぞれの主人公がいて、みな一様に空港で過ごし、そこから記憶が立ちあがる…
書評 - 『終りの日々』(みすず書房)陣野 俊史
自分の内部、諦念交えて洞察最初にこう書いてある。「死の日まで、と思って書く。いま七十四歳。でも、四十八歳としよう。パリへすっかり行ってしま…
書評 - 『あの頃 - 単行本未収録エッセイ集』(中央公論新社)陣野 俊史
武田百合子のエッセイを読むのが好きだった。なかでも『犬が星見た――ロシア旅行』は忘れがたい。夫・泰淳と竹内好との3人旅の記録。百合子のエッセイ…
書評 - 『文字の消息』(書肆侃侃房)陣野 俊史
文字が降る幻想的な世界文字が降ってくる町に住んでいる夫婦からの書簡が小説を構成している。え? 文字が降ってくるって? と読者は思われるだろう…
書評 - 『不機嫌な姫とブルックナー団』(講談社)陣野 俊史
垢抜けない天才を面白くゴシック文学研究者として名高い著者によるエンタメ小説。極上と言える面白さが光る。図書館に勤める「ゆたき」はブルックナ…
書評 - 『水の匂いがするようだ: 井伏鱒二のほうへ』(集英社)陣野 俊史
気鋭のフランス文学者による井伏鱒二論、と紹介しようとして少し悩む。この本はたしかに井伏鱒二について書いてあるけれど、「論」というよりももう…
書評 - 『鏡のなかのボードレール』(共和国)陣野 俊史
著名翻訳家の思考の足跡翻訳家として名高い著者によるエッセイ集。こう書くと、仕事上のあれこれを書いているように思われるかもしれないが、まった…
書評 - 『愛すること、理解すること、愛されること』(河出書房新社)陣野 俊史
苦渋の周りを回る言葉著者の李龍徳は、シンプルそうに見える人間関係に、突然、深い亀裂を作り出して、読者を引き込む。デビュー作の『死にたくなっ…
書評 - 『ヨロコビ・ムカエル?』(白水社)陣野 俊史
演劇の「故郷」構成する戯曲小説家・小野正嗣が初めて挑戦した戯曲が、彼の故郷の大分で上演される前に、単行本になって我々の手元に届いた。小野に…
書評 - 『どこでもない場所』(左右社)陣野 俊史
まるで異星人との対話NHK在職中は、番組制作のかたわら、伝説的な広報ツイートを残し、退職後、小説『伴走者』なる佳作を発表した浅生鴨さん。今度…
書評 - 『不意撃ち』(河出書房新社)陣野 俊史
不意撃ち、事件に翻弄される人たち小説の名手による新しい短編集。5編を収めるが、そのどの小説にも「不意撃ち」というタイトルはついていない。5つ…
書評 - 『生還』(文藝春秋)陣野 俊史
滑稽さとすごみある闘病記生きるか死ぬかの1週間を経たあと、小林信彦は長く入院することになる。脳梗塞だった。面識もあった、好きな役者や作家た…
書評 - 『蓮田善明 戦争と文学』(論創社)陣野 俊史
戦地で自決した文人の肖像蓮田善明という国学者をご存じだろうか。三島由紀夫の『花ざかりの森』を世に送り出し(当時、三島は16歳)、日本ロマン派…
書評 - 『窓の外を見てください』(講談社)陣野 俊史
2作目に挑む作家の体験主人公は作家になったばかりの青年・日高。たまたま書いた短編小説を知人の編集者に見せたところ、運よくデビューできたのだ…
書評 - 『戯れの魔王』(文藝春秋)陣野 俊史
クマさんこと篠原勝之の短編を集めた小説集。たとえば最初に置かれた「蓮葬(はすおく)り」。もう何十年も「鉄」を溶かしたり叩いたりして暮らして…
書評 - 『前立腺歌日記』(講談社)陣野 俊史
ユーモアたたえた闘病記ドイツに長年住み続けている詩人・四元康祐さんが、タイトル通り、前立腺のガンに罹り、治療を受け、日常生活に戻ってくるま…
書評 - 『東京凸凹散歩――荷風にならって』(亜紀書房)陣野 俊史
荷風追って坂の魅力味わうタイトルにある「凸凹」は、起伏の意味だ。東京を歩き回るとき、坂と丘と谷を実感する、と著者の大竹さんは言う。起伏を経…
書評 - 『ショパンゾンビ・コンテスタント』(新潮社)陣野 俊史
堂々たる青春小説の王道音大には入ったものの、はっきりとした理由もなく中退し、小説を書き続けている「ぼく」。友達の「源元(げんげん)」は素晴…
書評 - 『狂狗集 Mad Dog Riprap』(左右社)陣野 俊史
犬目線、世界切り取る一行詩比較文学者で詩人の管啓次郎さんが句集を出した。しかし、これは「句」集なのかどうか、通読したいまも自信はない。句、…
書評 - 『はんぷくするもの』(河出書房新社)陣野 俊史
声上げぬ人々の震災経験第55回文芸賞受賞作。わずか十畳ほどのプレハブの仮設店舗。主人公の毅は、今日もそこにいる。訪れる客はまばらだ。いないわ…
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